知らんうちに弟分がおねショタハーレム主人公になってて狂いそう 作:鐘楼
「まず初撃。何をしたか分かるか?」
「……腕を落とされた。それくらいしか分からない。
「うむ。ま、分からないと認められるのは良いことじゃ」
儂とレヴィンの模擬戦……というより、レヴィンの力が決して無敵ではないことの証明。そんな戦いのフィードバック。まず話題になるのが最初に儂がレヴィンの腕を落とした技だが、はっきり言ってアレはズルだ。レヴィンが最初から警戒していれば通らないものに過ぎない。
「アレはお前の腕の付け根があった空間を魔法で分断したのじゃ。外から力を加える斬撃や切断ではない。だから物理的な力を吸収する
「……でも、あれ魔法でしょ? 俺魔力も吸えるはずなんだけど」
「かもしれん。が、触れているものだけだろう? 察するに、マナのようにただそこにあるだけの力であれば触れずとも吸収できるが、発動された魔法の動力源となっている魔力のような既に誰かに扱われている力はそうはいかんのだろう……魔法使いにおいても相当の力の差があれば魔力の逆利用という現象は起こりうるが、レアケース。それだけ魔力の主導権の強奪というのは難しい」
「よく分かんない。俺に攻撃できたってことは触れたってことじゃないの?」
「出会ったときにお前に放った魔力砲が良い例だが、確かに触れさえすればお前は相手の魔法を吸収して自分の力にできるのだろう。そこで、儂はお前の腕を囲うようにして面ではなく線で魔法を使った。故に、直接お前に干渉して攻撃を加えたのは儂の魔法ではなく引き起こされた現象」
「……は?」
「例えば、魔法で炎を生み出され、それで攻撃される場合。その炎は魔力ではないが、お前は魔力砲よりも容易に無効化した。どうやって?」
「……炎なら触れなくても吸収できる」
「正確には熱を吸っているように見えた。そして、熱は魔力とは違って誰に支配されているわけでもない現象。少なくともお前の能力はそう判定しているから、魔力のように触れなくとも吸収ができる。漂っているマナと同じようにな」
「……」
レヴィン、この顔は分かっているんだろうか。考える機会がなかっただけで、考えられないタイプではないと思っているんじゃが。
「だが、空間の分断。この現象にお前が吸収できる力は介在しない。だから防げない。
分かったか?」
「まぁ……」
難しい顔で理解したんだかしてないんだか、という顔で返事をするレヴィン。少々……いやかなり話が長くなってしまったが、この話の結論、つまりどうすれば良かったのかという問題の答えは驚くほど単純だ。
「ま、色々言ったが、この話は気にしなくても良い」
「は?」
「あの攻撃は動いてさえいればそれだけでまず当たらん。最初に儂が動くなとお前に言ったから通っただけの話で……対策はバカ正直に立ち止まるな、で終わる話じゃな」
レヴィンの腕を落とした線の魔法。あれは魔力を通した線に動いたレヴィンが触れるだけで吸収されて不発になってしまう。実戦で使えるようなものではない。だからこそ、最初にレヴィンに動くなと言ったのだ。今はとにかく能力への過信を砕くのが目的だから。
「次にお前の指を飛ばした攻撃も同じじゃ。あれは小石をお前の身体がある空間に転移させただけじゃが、空間の座標を指定している。激しく動き回っている相手に当てられるようなものではない」
「……なんかすごいムカつく」
「そうかそうか。それは学びじゃ。刻んでおけ」
と、ここまではレヴィンを騙していたに過ぎないが、この先は明確な弱点だ。
「次。お前は言いつけを破って反撃したが、見事に幻像に騙された」
儂の物言いに、レヴィンが批判の目を向けてくる。無理もないとは思うが、反撃禁止という約束を破ったのはレヴィンだ。そんな目で見られる筋合いはない。
「先ほども言ったとおり、儂はお前の感覚に干渉したのではなく魔法で空間に虚像を映し出した。故に魔力の
腕を落とし、指を飛ばした。それだけされて平静を保てというのは通常無理があるが、魔力生命体ならばいくらでも取り返しがつく。痛みも平気だといったのは自分なのだから、それくらいは冷静に対処してもらわなければ困る。
「次。儂は細工を施した魔力砲をお前に吸収させ、お前の感覚を崩そうとした。が、これに対する対処は見事じゃった。初見ならばベストと言って良いじゃろう」
魔力酔いを引き起こす魔力を仕込んだ魔力砲。その罠にまんまと嵌まったかに見えたレヴィンだったが、あの時レヴィンは吸収した魔力に酔いの原因があると即座に判断して吐き出すように吸収した魔力を放出した。対処としては本当に良い回答だったように思う。
「手際が良かったが、同じ手を使われたことがあるのか?」
「……俺が死んだ時。災厄の力を吸ったせいで死んだ。あれは、吸った力を溜め込まないで吐き出してれば死ななかったんじゃないかってずっと思ってたから。それで思いついた」
「なるほど……」
あの戦いは儂も見ていた。本当はウェスターシャ……魔王に助力を乞われたが、それを蹴って傍観に徹した。どちらに肩入れする気も起きなかったから。ともかく、その戦いで確かにレヴィンは厄災の攻撃の尽くを吸収し、本体の力まで吸収していたが、死因はそれだったか。
「……もう分かっているのなら良いが、魔力に関しては術者の手が加わっている。闇雲に吸収すれば良いわけではない、ということを覚えておけ」
と言っても、レヴィンの力の仕様を相当把握されていないと考えつかない手だろうから、大して警戒しなければならないケースではなかろうが。
「次。目潰しと耳潰し。爆音と光に対処するためにお前は空気の振動と光を吸収するに至ったが、結果としてお前は知覚手段を失い儂に簡単に背後を取られた」
「……」
ここまでで一番、レヴィンが苦い顔を見せる。先の戦いでここが最も無様を晒したという自覚が少しはあるらしい。
「これはひとえにお前が五感に頼りすぎていることが原因だ。対策は……二つか。知覚手段を増やす。あるいは
「使い方?」
「あぁ、あの時は焦って吸い過ぎだ。光を吸収するとしても、一定範囲を一定以下の光度に落とすまで。音を吸収するにしても有害な騒音だけを。みたいに識別や調整を瞬時にできるようになれば問題はなくなる」
「識別と、調整……」
「もう一つ。知覚手段を増やす。そもそもお前は索敵手段がなさ過ぎる。儂が本気で隠れれば、お前は一生見つけられんじゃろう」
例えば、探知の魔法とか、もっとシンプルに魔力を広範囲に放って他人の魔力とぶつかったか検知するレーダーとか。色々あるが……レヴィンに向いているかと言われれば首をかしげざるをえない、か。
「最後。お前は儂に触れられた。言ってしまうが、あの時点で儂はお前の身体をどうとでもできる状態にあった。そして、お前はそれに対抗する手段を持たない。自身の身体……魔力生命体への理解度が薄いからじゃ」
「……!」
「対策は……ま、これもやっぱり焦るな、で終わる話じゃな」
「……どういうこと?」
世界に儂ほど魔力生命体というものを理解している者もそうはいないだろうが、それなりの理解度があれば干渉ができる。同じだけ知識と腕があれば対抗は容易だが、いずれもレヴィンは持っていない。そういう意味ではレヴィンに対抗できる手段はないが、それこそよく考えろ、だ。
「冷静に考えるのじゃ。儂がお前に触れている時、お前も儂に触れている。触れてさえいれば、お前には打てる手段が山ほどあるだろう」
「あ……」
そうだ。接触は、
……とはいえあの状況であれば、レヴィンが
「……以上だ。改めて儂の話、聞く気になったか?」
「……うん」
さて、無事に説得力を手に入れたようなので、これからは前向きな話をするとしようか。