知らんうちに弟分がおねショタハーレム主人公になってて狂いそう 作:鐘楼
「れ……レヴィンさんを、そんな一方的に……」
「すげぇ……すげぇ……!」
過去のレヴィンを一方的に下した、というフェンニバルの話はレヴィンの強さを知る面々にとって衝撃的だったらしく、話を聞いていた面々のフェンニバルへの評価はうなぎ登りであった。
「なぁ! アタイとも勝負してくれよ!」
「断る。まったく、話を聞いていたのか? あれは実戦では使い物にならん手段や初見でしか有効でない手段をふんだんに使った結果に過ぎん」
強さに惹かれたフレアルビーを軽くあしらうフェンニバルは淡々と事実を述べる。実際、話の中でフェンニバル自身がレヴィンに言ったように、レヴィンに知識や冷静さがあれば対処ができる手段でフェンニバルは勝利を収めていた。確かにそれは間違っていないが、そこに疑問を投げかける者が一人。
「失礼ですガ、智龍様はもっと楽にお兄さんに勝つ手段を隠しているのでハ?」
「……クレイプレシャス。どういう意味じゃ?」
「当時の智龍様の意図としてハ、お兄さんに『足を掬われる』という体験を与えたかったというものがあるのでしょウ? だから、一撃で完全な勝利を決められるような手段を使わなかっただけのコとでは?」
クレイプレシャスの確信めいた問いかけに、場が静まりかえる。皆がフェンニバルの言葉を待っているのを察してか、彼女は沈黙の中で息をついた。
「……買い被りすぎじゃ。そんなものはないよ、クレイプレシャス」
結局、フェンニバルの言葉は否定だった。他の面々やクレイプレシャス自身もそこで引き下がったが、答えるまでの間に何か意味を感じ取っているのは皆同じだった。
「で、では……今レヴィン卿と智龍様が戦えば……どちらが……」
「なんじゃアンリエッタ。お前そういう話題が気になるタイプだったのか」
次なる疑問……いや、興味を投げかけたのはアンリエッタだった。しかし、この問いはクルスもフレアルビーも気になっていたもので、期待の視線がフェンニバルに注がれる。そんな一同の期待を察知してか、フェンニバルは肩をすくめながら答えを述べる。
「そうじゃのう……ま、試合形式なら儂に勝ち目はないな」
「試合形式では……?」
「殺し合いで負けはせん。レヴィンは未だにまともな索敵能力がない。あやつには本気で逃げを選んだ儂を捉える術はないが、儂には距離を問わない外法がいくつかある」
「あ……」
フェンニバルの分析に、クルスはこの場所に飛ばされた自分を探すのにレヴィンが半年を要したことを思い出し、納得感を覚えた。
「……これも、昔レヴィンに指摘したのだがな。お前は搦め手に対する用意が足りなすぎる、と。確かに
「……?」
誰かを守ることはできない、その言葉を口には出さずにフェンニバルはクルスを見る。だからこそ、フェンニバルはレヴィンが子供の面倒を見ることに反対していたわけだが、今はそう思っていなかった。保護者などと、レヴィンは自分をそう評していたが、そこから間違っていたのだから。玩具。レヴィンにとってクルスの持つ価値がそれだけだと知り、フェンニバルは方針を変えた。少年の方をレヴィンから引き離す。フェンニバルはその為に思い出話をしていた。
「ねぇ先生。そのレヴィン卿の弱点……弱点……って言っていいものなのか分からないけれど、それって百年も昔の話でしょう? もう克服しているんじゃないの?」
「いや、それはない。実のところ、儂が伝えた改善点をレヴィンは本当に最低限しか直していないのだ」
そう、百年前にフェンニバルが指摘したレヴィンの反省点を、レヴィンは直そうとはしなかったのだ。
「それは……なんで、なんでしょう」
「やる気がなかった。あやつは……その時にはもう既に強さを求めていなかったのだ」
フェンニバルが言い切ったその言葉を誰かが詳しく聞く前に、昔話の続きが始まった。