知らんうちに弟分がおねショタハーレム主人公になってて狂いそう 作:鐘楼
「ではまず、お前の
「違うの?」
「全く違う」
案の定、自分の持っている可能性に気づいていなかったレヴィンに、ここまで観察してきた成果とも呼べる持論を述べる。
「吸収する力は表面的なものに過ぎん。儂の見立てでは、お前の能力は三つに分解することができる」
「三つ……?」
「吸収、保持、変換だ」
吸収・保持・変換。エネルギーを吸い取り、自分の内に溜め込み、光剣や身体の補修材料に変換する。レヴィンはこの一連の作業を当たり前のようにやっているが、ただ力を吸収するだけではこんなことはできない。
「まず吸収。これはお前も分かっているだろうが、マナ、熱、生命力、運動エネルギー、条件次第で魔力……これらを自分のものとして取り込む力。正確には吸い取る力の種類ごとに適宜切り替えているようだが、違うか?」
「多分そう。厄災と戦ったときも魔力と同じように吸収しようとして失敗したけど、あれの力を解析して吸えるようになった」
「ふむ……となると、一口に
レヴィンの能力一つ目。目玉とも言えるエネルギーの吸収だが、これがあまりに象徴的すぎて他の部分に目を向けられていないように感じる。伸びしろという面では他の部分に大きな可能性がある、というのが儂の考えだ。
「二つ目。保持。何のことか分かるか?」
「分かんない」
「エネルギーとは発散するもの。何もしなければ常に減っていく。それを押しとどめるのにも力を使うのだから、そのままの量をずっと保存しておくことなどできん。だというのにお前は今までに吸収した力を減らすこともなく身体のうちに溜め込んでいる。こんなことは異常じゃ。それが現実にできているということは、無理を押し通す特殊な能力が働いていることになる」
「……それくらい普通でしょ? よく知らないけど、魔法使いも魔力貯めてるじゃん」
「違う。魔法使いも魔力を保つために無意識に魔力を消費している。それでも減っていないように見えるのは減る魔力よりも回復する魔力の方が多いからだ。生前はともかく、今のお前に自力で魔力を生み出す力はないのだから、吸収した力が減らないのはおかしい」
当然の話だが、エネルギーが高まるほど発散する力は強くなり、押しとどめるのにより多くの力を使う。レヴィンのように莫大なエネルギーを身体に保とうとすれば、常人は身体が破裂する……というのは大げさかもしれないが、間違いなくただでは済まない。
「……そういえば、レヴィンよ。お前が今貯めている力は復活してからのものか? こまめにマナを吸っているのは見えているが」
「うん。この身体になったときにリセットされてた」
「そうか……まぁいい。エネルギーの保持も、応用は難しい。本題はこの次じゃ」
「三つ目。変換。お前は貯めた力をそのまま放出する以外にも、あの光剣や身体の再生に使っている。そもそも、お前はどんな力を吸収したとしても同じものとしてその身にプールしている。これも非常に特異な能力と言える」
「はぁ……」
「分からないか? お前、さっき人間の身体であった時から食事をしていないと言ったな?」
「それは言った」
「普通、人間の身体はそれだけでは保たん。察するに、かつてのお前は活動に必要な物質を無意識に吸ったエネルギーから変換して補っていたはずだ」
「……そうなの?」
「そして、あの光剣。どこで覚えた?」
「地獄。あそこ武器なかったから、仕方なく作った」
……改めて、あの世を管理する死神どもには同情を禁じ得ないが。
「それはつまり、必要がありさえすればお前は貯め込んだ力を如何様にも変換させられるということだ。これはもはや何でもできると言っても過言ではない」
レヴィンの能力の驚異的な部分はここだ。にも拘わらず、レヴィンは限定的にしかそれを活かせていない。それではあまりに勿体ないと感じてしまうのが儂の性分で、だからこそ鍛えることを奨めているのだが。
「この変換を鍛錬すれば、すぐにでも儂を超えることが……」
「いや、やめとく。興味ない」
レヴィンの返答はあまりに素っ気ないものだった。
「……なぜじゃ? 儂に好き放題やられて、悔しくはないのか?」
「そういう気持ちもあるし、前の俺ならいつかアンタを殺す気概で修行したかもしれない、けど……」
「けど?」
自分の手を見つめながらたぐり寄せるように言葉を紡ぐレヴィンは、自分の気持ちに戸惑っているようにも見える。
「今はそれよりじじいの本で読んだことをこの目で見てみたい。強さより……そっちの方が大事」
「そう、か。……悪かったよ。押しつけるような真似をした。そして……内容はともかく、自分の芯を見つけられたのは良いことじゃ。偉いぞ、レヴィン」
恥ずべきは儂の方。レヴィンが持つ可能性に年甲斐もなく浮き足立ってしまった。強いのだから、と戦いを押しつけるなど、儂が軽蔑する者たちのすること。そう自分に気づかせてくれたレヴィンを讃えるように頭を撫でる。それにレヴィンは恥ずかしがるでも嫌がるでもなく、意味が分からないという目で儂を眺め、思い当たったかのように口を開いた。
「ポ」
「は?」
「だから、撫でポ」
「は? ……いやいい。説明はするな。頭痛の種が増えそうじゃ」
わけの分からないことを分からないままにする、というのは本来儂の主義に反するのだが、あまりに突飛なものを立て続けに浴びせられるのは精神衛生上良くない。
「あと、別に死んでもいいし」
「……ふむ。何故じゃ?」
「死んだらまたじじいに会える」
その言葉に、儂は静止した。いる。生に執着しない者は珍しくない。何も持たぬから、それ以上に重んじるものがあるから。そこに貴賤はない。けれど、その理由が幻であるならば。
「……レヴィン」
正してやらねばならない。
「良く聞け。魔力生命体は魔力核が破壊されればその魂は消滅し、もう向こう側へ行くことはない。お前はもう、煉獄には行けぬし……その男にも会えない」
「え……」
森の風が草原に吹き抜ける音が、虚しいように感じられる沈黙が儂とレヴィンにのし掛かった。