知らんうちに弟分がおねショタハーレム主人公になってて狂いそう   作:鐘楼

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青き日々(7)

 もう、恩師である大作家に会えない。そう告げられたレヴィンは喚くでも取り乱すでもなく、ただ静かに目を見開いた。はっきりとした感情表現はそれだけだった。

 

 「……悲しいか? だが……」

 「別に。会いたかったわけじゃない」

 「……そうか……」

 

 その言葉が、自分を騙すための嘘なのか、レヴィン自身でも自分の本心を掴みかねているが故に出た言葉なのか、儂には分からない。けれど、その心を暴くために言葉を掘り返すことなどする気にはなれなかった。

 

 そこから先は、お互い無言で目的地に向かって歩を進めた。レヴィンはそれ以上何も話さなかったし、儂もレヴィンには整理の時間が必要だと感じて何も言わなかった。

 

 この険しく厳しい深き森も、儂とレヴィンの二人であれば危険などないも同然で、普通ならありえないスピードで踏破していく。飲まず食わずで進み続け、やがて儂らは森を抜けた。森を抜ければ、そこは帝国領。目指すは、帝国の地方都市ボメナだ。

 

―――――――――――――

 

 「さて、ボメナが見えてきたが……身分証が必要じゃな」

 「身分証?」

 

 儂とレヴィンにしてみれば小走り程度の認識で少しだけ急いだ結果、馬車で数日という距離を数時間で移動して儂らはボメナへと到着していた。

 

 無論、辿り着いたからと言ってこのままでは()()()中へ入ることはできない。色んなものを見て回るのがレヴィンの望みならば、自由に動くために無闇に騒ぎにしない工夫が必要だ。

 

 その手始めに、まず自分の頭に生えた主張の強い角を消す。

 

 「……それ、消せるんだ」

 「ん? まぁの。そもそもこの姿は儂が自分で設定しているものに過ぎん。自由自在じゃ」

 

 儂が今取っている人間態とも言うべき姿は一般的な人化とは少し仕組みが違う。簡単に言えば、本体を異空間に隠してそこから人型の魔力生命体を生成および操作をしているのだ。この手法の優れている点は好きに姿を変えられる点もあるが、一番はレヴィンのように核に魂を格納しているのとは違い、ただ遠隔操作をしているに過ぎないゆえにこの身体が破壊されても儂の本体にはさしたる影響はないということだ。保険をかけすぎていて臆病な自分が嫌になるが、そんな儂だからこそ今もこの世に存在しているのもまた事実。

 

 「消さないとなんかダメなの?」

 「魔族に間違われる……違うことを証明することは簡単じゃが、それはそれで国賓扱いされそうだからな……面倒を避けるために人のフリをしておいた方が良い」

 「魔族に間違われるとマズいんだ」

 「……」

 

 こいつ……人間と魔族の関係についてもおかしな認識を持っているな? いや、そもそもこの世界の魔族というものについて誤解している可能性が高い。頭が痛くなってくるが、具体的にどう間違えているかが分からなければ訂正もできないのでここは流すほかない。

 

 「さて、提示する身分証だが、もちろん偽造するぞ」

 「偽造……」

 

 街に入るに当たって、検問では身分証を要求される。一般的には冒険者ギルドや商業ギルドで発行されるものが一般的だが、持っていなくともある程度の金銭を納めて審査を受ければ入ることができる。ただこの審査が面倒であり、レヴィンがやらかす可能性が非常に高い。これもまた面倒を避けるために偽造はやむを得ないのだ。

 

 もちろん、どんな種類の身分証でも簡単には偽造できないようになっているが、儂にとってはそのセキュリティの突破くらいは造作もない。

 

 「身分証……そんなものが必要なのか」

 「お前……これまでどうやって街へ入っていたんだ」

 「昔は止められたら斬ってたけど」

 「……おい、指名手配とかされていないだろうな」

 

 もし顔が割れていたらより面倒なことになるんだが……話しぶりからして生前、三十年ほど前のこと。今でも警戒されている可能性は薄い……か。

 

 「種別は……まぁ冒険者でよいか」

 「冒険者……!」

 「なぜそこで目を輝かせる……あぁいや、確かに出てきたなあの本に……」

 

 大作家ユータローの小説でも、確かに冒険者というものが出てきてはいた。その描写は結構な脚色が為されていて、実際には夢のない職業だ。半分は当てのない者が日銭を稼ぐための場所で、もう半分は腕に覚えのある者が騎士になるための実績作りの場、くらいの存在で……レヴィンが落胆しないといいが。

 

 「よし、こんなものか……」

 

 無詠唱で偽造の冒険者カードを作成し、片方をレヴィンに渡す。これでスムーズにボメナへ侵入できるだろう。

 

 「これステータスとか見れる?」

 「そんなものはない」

 

 このように、いざ街を前にしたレヴィンは調子を取り戻し、一見吹っ切れたように見えたのだった。

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