知らんうちに弟分がおねショタハーレム主人公になってて狂いそう   作:鐘楼

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青き日々(8)

 「……さて、無事にボメナへ入れたわけだが」

 

 ちらり、とまるで田舎者のように辺りを新鮮そうに見渡すレヴィンを見る。検問では余計なことをするなという忠告が功を奏し、辛うじて余計な疑いを被ることはなかったものの、すぐにでも面倒に巻き込まれそうな予感がするのは気のせいだろうか。そして、その面倒こそが体験したいものだとレヴィンが言い始めたらどうしようか……と、そんなことを考えながら、レヴィンに尋ねる。

 

 「何か、見たいものはあるか?」

 「……あれって」

 

 呟いたレヴィンの視線を追うと、そこには純白の建物。創世の女神の紋章を象ったステンドグラスが目立つ、荘厳な建造物があった。

 

 「帝国教会か」

 「教会……悪い奴らってこと?」

 「どんな偏見じゃ」

 

 この世界では、基本的にどんな種族でも同じ創世の女神を信仰している。だからこそ拝淵教団なんかは異端中の異端なのだが、それは置いておいて。なぜどこでも同じものを信仰しているのかと言えば、かつての儂が分け隔てなく教えを授け、その中の母……女神についての話を皆が聖典として扱った名残である。要するに、信仰の元となっている儂の話が同一のものだから世界中で同じ女神が崇められている、という話だ。もちろん、場所によって自種族や自国を優遇するような解釈が加わってまるっきり同じ信仰というわけではないが、宗教はそういうものだろう。

 

 「……たしかに、深掘りすれば負の側面が見つかるだろうが……基本的には人々の心の支えとしてなくてはならん存在じゃ。末端まで腐った組織ではない」

 「でも、救いの対価に金を取ったり子供を保護して僧兵に仕立て上げたりするんでしょ?」

 「悪事の解像度が高いのう……」

 

 なんだその偏った知識は……いや、レヴィンの知識の出所など一つしかないが。そして、それくらいのことは教会もまぁやっているという事実がなぜだか少し悔しい。否定ができないから。

 

 「ま、そうじゃな……多少の悪事をしているからといって、潰せば更なる混乱や争い、共倒れを呼び込む。教会も国も、人間の巨大な組織とはそういうものじゃ」

 「ふーん」

 

 儂がそう言うと、レヴィンは納得したのかしていないのか……分からないが、少なくともその興味から教会は外れたようだった。分かってはいたが、本に登場した教会と現実とで差異があるのかどうかを気にしていただけで、善悪そのものはどうでもいいらしい。もちろん、『悪事をしてるなら潰していいんだよね?』とか言われる方がマズいから良いのだが。

 

 「……ま……滑稽だとは思うがな」

 「?」

 

 呟き、教会を、そこで女神の像に祈る人々を眺める。意味の無い祈りだ。母はもう我らをみていないというのに。

 

 「すまぬ、なんでもない」

 

 とはいえ、そんなことを指摘して混乱を招く必要もない。どう考えても、これは知られない方が良い真実だ。

 

 「まぁ、教会は面白くないと思うぞ。お前は信心なぞないだろうし……儂もできれば行きたくない。万一正体がバレれば面倒なのじゃ」

 

 帝国教会……というか、この世界の信仰において智龍フェンニバルは聖人扱い。来訪が判明すれば儂は女神不在の事実を隠しながら信者の前で話をさせられる羽目になるだろう。

 

 「……あ、レヴィンよ。そっちの道もやめておけ」

 

 興味の赴くまま、狭い路地へ進もうとしたレヴィンを引き留める。

 

 「なんで」

 「治安が悪い」

 「悪いとなんでダメなの」

 「絡まれるだろう、チンピラに……あ」

 

 言って、自分の失言に気がついた。チンピラという言葉にレヴィンは目を輝かせ始める。これもか。そんなことにも憧れているのかこやつは。

 

 マズい。もちろん儂やレヴィンが傷つけられる心配なぞしていないが、儂らを世間知らずの少年と女だと思って仕掛けてくる輩の命とレヴィンにつく前科が気がかりである。もし本当にチンピラに金銭だのなんだのを要求されればレヴィンは命でもって償わせて無事犯罪者になりかねないし、スリを仕掛けられれば手癖で賊の手を刎ねかねない。

 

 「俺チンピラに絡まれてみたい」

 「頼むから止めてくれ」

 「俺も先に殴らせてから正当防衛と称して瞬殺する奴やってみたい」

 「レヴィンよ。過剰防衛という概念が……あぁ、分かった! だが今度だ。儂がお前に後遺症が残らない半殺しの仕方を教えてやるから、チンピラはその後にしてくれ!」

 

 儂の必死の説得に、レヴィンは渋々引き下がった。

 

 

 

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