知らんうちに弟分がおねショタハーレム主人公になってて狂いそう   作:鐘楼

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あれは王国が勝手に言ってるだけ

 「吸収、保持、変換ですか……」 

 「少年もあいつと同じ能力を使えるんだよな? 参考になるんじゃないのか?」

 

 フェンニバルの昔話の中で語られた、“吸収”(アブゾーブ)についての考察についてクルスは興味深そうに考え込む。明かされた知識はどれも彼に“吸収”(アブゾーブ)を教えてその力を目覚めさせたレヴィンが教えなかったものだったからだ。

 

 「はい……智龍様の仰る通り、工夫すれば応用次第でもっと凄いことができるかもしれません」

 「……レヴィンと同じ力、か」

 

 自らの能力に対して明るい展望を見出すクルスとは対照的に、そんな彼を見るフェンニバルは何か思うところがありそうな表情を浮かべていた。

 

 「そういえば、なんでクルスくんはあの人と同じ力が使えるの?」

 「え……教えられた通りにやったらできたんですけど……」

 「本当か!? な、ならアタイも……」

 「無理じゃな」

 

 フレアルビーが口にしたレヴィンの果てしない強さへの憧れを、フェンニバルがバッサリと切り捨てる。

 

 「無理、って……それはフレアルビーさんが妖精だからですか?」

 「で、では私なら……」

 「違う。あんな馬鹿げた能力を人間全員が習得できるなんてことあるわけないじゃろ」

 

 同じくアンリエッタも淡い希望を口にするが、フェンニバルの妙に納得感のある言葉に一同が押し黙る。たしかに人類全員がレヴィンと同じ能力を有する可能性があるとなれば世界は既に大きく変わっているだろう。しかし、そうなればまた別の疑問が浮かび上がってくる。

 「では……なぜ殿下だけがレヴィン卿の能力を習得できたんでしょうか」

 「……」

 

 アンリエッタの一同を代表するような問いに、今度はフェンニバルが押し黙る番だった。しかし、その様子は考え込む風なものではなく、言うべきか否かを迷っているという風に見えた。実際、フェンニバルはクルス王子がレヴィンの能力を覚醒させた理由に見当がついていた。

 

 「それは……そやつが特別だったから、で良いじゃろ」

 「その特別、というのは……」

 「概ね予想はできているが、言わぬ。話が逸れるからな」

 

 人間だったレヴィンの骸を盗み、今も利用している拝淵教団。その現リーダーにして王妃として王国を腐らせた毒婦、(アマネ)。彼女もまた教団幹部の例に漏れずレヴィンの身体を取り込んでいて、そんな彼女の血を引くクルスもまたレヴィンの因子を……なんて話を今すれば王子の動揺を収めるのにも説明をするのも時間がかかるし、何より自分の口から伝えることではない。そう判断したフェンニバルは、何も語らず話を前に進めることを選んだ。

 

 「……話は変わるのだけれど、レヴィン卿が先生と出会って最初に訪れたのって帝国なの? もしそれから彼が偉業を為すなら帝国の英雄として扱われる方が自然だと思うわ」

 

 帝国の人間であるミストリアが、フェンニバルの話に感じていた違和感を口にする。

 

 「あの時の儂も知らなかったことじゃが、この時点でレヴィンは王国の騎士団に籍を置かれていてな。当時の王国の外交官がレヴィンの功績を全て王国の功績にしてみせたのじゃ」

 「それは……大胆ね」

 「レヴィンをカードにして魔族と条約を結んだのもその外交官だ。ありもしないカードでああも上手く立ち回ったことは賞賛せざるを得んな」

 

 もちろん、レヴィンは王国に命令された通りに行動するような存在ではない。にも関わらず、まるでレヴィンという戦力を意のままに操れるかのようなブラフをかまして世界を手玉に取ったその外交官の、手腕と何よりそんな危ない橋を渡りきったをフェンニバルは高く評価し、ミストリアは引いていた。

 

 「ちょっと待てよ。それって関係ない人間があいつの功績を奪ったってことか?」

 

 フレアルビーが外交官を評価する二人の論調に異を唱える。彼女にとって、レヴィンをいいように使った王国は好ましくないようだった。

 

 「そうとも言えるし、そうではないとも言えるな。名声という意味では、現にレヴィンは王国の力の象徴のような扱いを受けておる」

 「あ……」

 「そもそも、だ」

 

 フェンニバルはそこで言葉を切ると、身も蓋もないことを口にした。

 

 「あの阿呆は功績だとか象徴だとか一切気にしておらん。本人が文句を言わない以上、放っておけば良いじゃろう」

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