知らんうちに弟分がおねショタハーレム主人公になってて狂いそう   作:鐘楼

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青き日々(9)

 「あそこなに?」

 「あぁ、冒険者ギルドだが……あ」

 

 冒険者ギルド、という言葉を聞いた途端にレヴィンの瞳がみるみると輝きを帯びていく。そういえば、冒険者の身分証を偽造したときにも反応していたし、こうなることは予見できたはずだというのに……いや。儂とて、一度レヴィンに見たいものを見せてやると約束をした身。面倒だからと言ってレヴィンの期待に背いていては筋が通らない。

 

 その点、冒険者というのは悪くない。一度正式に冒険者となってしまえば、必然的にレヴィンも問題を起こしにくくなる。好き勝手に行動すれば冒険者を続けられなくなるからだ。人のルールに慣れさせるという意味では、悪くない選択に思えてきた。

 

 「……なりたいのか? 冒険者」

 「なりたい」

 

 即答か。そんなわけで、儂はレヴィンを連れてもう何度目かになるギルドへの登録窓口へ向かうのだった。

 

―――――――――――――

 

 ……依頼をこなせばランクが上がるとか、ランクにはブロンズからプラチナまで存在するだとか、そんな数百年は変わっていない説明を聞き流してレヴィンの様子を窺う。見たところ熱心に説明を聞いているようだが、どこまで理解しているのやら。

 

 「それでは、用紙に必要事項の記入をお願いします。代筆が必要でしたら気軽に申しつけくださいね」

 

 職員にそう言われ、それぞれ紙を差し出される。必要事項といってもその内容は非常に簡素で、氏名に年齢、後は自由記入で出身地の欄があるくらいだ。この辺りの敷居の低さが冒険者という職業の特色とも言えるが……儂もレヴィンもこれに馬鹿正直に答えるわけにはいかない。儂は正体を明かしたくないし、そもそも大昔に登録したプラチナランクの籍が残っている可能性が高いのだ。レヴィンもレヴィンで、年齢の部分が問題だ。人間としてレヴィンが生まれたのは約四十年前だと思われるが、今の身体は形成されて一年も経っていない。どちらで数えても見た目にそぐわず疑われてしまう。なので、適当にそれっぽい年齢を書いておけと事前に言っておいたが。

 

 「……読めるのは知っていたが、ちゃんと字が書けるのだな」

 「じじいに教えられた」

 「良き出会いだったのだな」

 「……」

 

 確認を忘れていて、一瞬レヴィンは文字を書けないのではと思ったが、杞憂だったようで名前もそれっぽい年齢もしっかりと書けていた。このレヴィンに読みも書きも教えたというのだから今も煉獄にいる大作家ユータローとやらは本当に偉大だ。

 

 「では最後に、こちらの水晶に手をかざしてください」

 

 用紙を提出すると、代わりに水晶型の魔道具を差し出される。準備をしてから指示通りに水晶に十秒ほど触れて、儂の手続きは完了した。レヴィンはというと、なぜだか水晶に触れるのに躊躇している様子だった。

 

 「おい、どうしたのだ」

 「これ、俺が触ったら割れたりとかしない?」

 「……これは冒険者カードと生体情報を紐付けるためのものであって、力量を測るようなものではない。そんなことにはならないから安心しろ」

 

 儂の言葉に、露骨につまらなさそうな顔をするレヴィンも水晶に触れる。これこそが、こんな誰でも手に入れられるような冒険者カードが身分証として機能する理由になっているシステムだ。登録する前はともかく、登録した後の犯罪歴はカードに記録されて検問で引っかかる上、この生体認証によって別人として登録し直すこともできない。儂ほどにこのシステムへの理解と魔法の技量が無ければの話だが。

 

 というわけで、ここに晴れてブロンズランクの新米冒険者が誕生したわけなのだが。

 

 「……テストは? 俺も的ごと建物を破壊するやつやりたい」

 「何を言っとるんじゃお前は。冒険者の評価は実績一本、ランクを上げるには地道に活動するしかないぞ」

 

 レヴィンが言っているのは学院の魔法科で見られる攻撃魔法の技量を測るテストだと思われるが、冒険者にそんなものはない。冒険者のランクは信用度とイコールであり、必ずしも戦闘力を指すわけではないので昇格試験の類いもない。ランクは活動していれば自然と上がっていくものなのだ。

 

 「だいたいお前、魔法はからっきしじゃろ。もしあったとしたらどうやって突破する気なんじゃ」

 「……ただの魔力放出でなんとかする」

 「んなもん減点じゃ減点!」

 

 いくら威力があろうとも、魔法を見せろと言っている場でただの魔力放出を魔法と言い張る奴など儂が試験官なら絶対に落としている。と、そんな話をしていた儂らの行く道に人影。

 「おいおい、新人のくせして女連れとは良い度胸じゃねぇか」

 「羨ましいなァ。どうやったらそんな上玉引っかけられるのか俺らにも教えてくれよ」

 

 いかにも柄の悪そうな二人組が下卑た笑みを浮かべて行く手を阻んできた。全く……いつの時代もこの場所にはこういう輩が多い。それにしても、今の人間の感覚ではこの顔は美人判定なのか……面倒な。

 

 ちらりと、レヴィンを横目に見る。それはもう、目に見えてウキウキしていた。口角は上がっているし、その手はウズウズが抑えられていない挙動をしている。さっさと喧嘩に発展させて力を示したいと考えているに違いない。

 

 ……このままでは過剰防衛待ったなしだ。それでは早々にレヴィンの冒険者としての経歴に傷がついてしまう。ここはなんとしても穏便に食い止めなければならない……!

 

 

 

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