知らんうちに弟分がおねショタハーレム主人公になってて狂いそう   作:鐘楼

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青き日々(10)

 「おい、なんとか言えよ小僧」

 「ビビって声も出せねーのかぁ?」

 

 ビビるどころか邪悪な笑みが漏れ出ているのだが、こやつらは目がついているのだろうか。っと、差し迫っているこの男たちの命の危機を回避するためにレヴィンよりも先に動かねばなるまい。

 

 「……あぁ。むしろ待ちに待ったこの展開を引き寄せた俺の運にビビって──」

 「待つのだレヴィン。いいか? しばらく大人しくしていろ。ここは儂がなんとかするから動くなよ」

 

 そうレヴィンに耳打ちすると、それはもう不満たらたらといった顔をする。表情豊かで結構だが、今は我慢してくれ。

 

 「……たしかに、こんな子供より経験豊富な者と一緒にいた方が楽かもしれんな」

 

 少なくとも、レヴィンより御しやすいのは間違いないだろう。

 

 「お? 嬢ちゃんの方は随分物分かりが良いみたいだな」

 「嬢て……」

 

 仕方がないし慣れるべきなのだろうが、小娘扱いされるのは毎度毎度むず痒く思う。ならば姿も相応に老いたものにすれば良いのかもしれないが、それでは身体の性能が落ちる上にそれはそれで今度は無用な気遣いをされるのだ。

 

 「おっと、こりゃ見かけによらずとんだ尻軽だなぁ! 小僧、捨てられちまったぞ。お?」

 

 愚か者の片割れが儂を罵倒しながらレヴィンの顔を覗き込んで挑発する。が、レヴィンは大した反応を見せずに完全無視。……思うに、レヴィンはあくまで絡んできたチンピラを力で圧倒するというシチュエーションに固執しているだけであって、愚か者の言動そのものに怒りや苛立ちを覚えているわけではないのだろう。多分だが鳴き声くらいにしか思っていない。まぁ、それは儂も同じようなものだが。

 

 「良いだろう、そいつのことは。それよりも連れて行くならどこへでも連れて行け」

 

 ここで今すぐに洗脳して強制的に善人にしてしまっても良いのだが、ここは冒険者ギルド。そんなことをすればここにいる勘の良い何人かは必ず不審に思うだろう。なら、場所を移した方が良い。そういう考えで男たちと共にギルドを出ようとしたのだが、それに待ったをかける声があった。

 

 「おいお前ら! さっきから見てれば新人に向かってみっともねーぞ!」

 「そうです! そんなことをしている暇があるなら、少しでも依頼をこなして実績を積んだらどうですか?」

 

 声の主は年若い男女。一目見て、只者ではないと分かる程度には腕利きのように見える。レヴィンもそれを感じ取ったのか、他の有象無象に向けるものとは明らかに違う視線を彼らに向けていた。

 

 「ちっ……ゴールドかよ……」

 「関係ないだろ! 引っ込んでろ!」

 

 ゴールド。つまり、冒険者として上から二番目の等級。儂がレヴィンに言ったように、等級とは信用。ゴールドとは実力に秀でているだけで得られる名誉ではない。あの若さでそこまで至るとは、とんでもない有望株なのだろう。事実、愚か者たちも口では言い返しているが明らかに先ほどまでの勢いがなくなっていた。

 

 「ある。お前らみたいなのがいるせいで冒険者みんなが悪く言われるんだよ!」

 「ぐっ……正義面しやがって……!」

 

 さすがの愚か者も実力も実績も上の相手は分が悪いのか、もはや逃げ帰る寸前だった。良識ある実力者のおかげで一件落着、と言いたいところだが、ここはやはり儂自らの手でけりを付けさせてもらおう。これでは今は良くても、変に逆恨みされるリスクが否めない。

 

 「……助け船は有り難いが、儂……私はこの御二人に興味がある。余計な気遣いは無用だ」

 「え……」

 「お、脅されているんですか……?」

 「いや。ほら、行くぞ」

 「あ、あぁ……」

 「おいおい、マジかよ……!」

 

 呆気に取られた心優しき二人組と、その二人組を意味ありげな視線を向け続けるレヴィンを置いて、儂は男たちとギルドの外へ出た。分かっていたことだが、レヴィンはそんな儂を心配する素振りなど一切見せなかった。

 

―――――――――――――

 

 「おいおい、こんな人のいねぇ場所に連れてきて何をしてくれるっていうんだ?」

 「それはだな……」

 

 人のいない路地まで愚か者を誘導した儂は、別に此奴らに危害を加えるつもりはない。ただ、振り返るだけだ。

 

 「ひぇっ……!?」

 

 この貌を、目や口を無造作に増やし、獣のような牙を覗かせ、裂けた皮から肉が零れる、そんな恐ろしく悍ましいものに変えて。

 

 「ばっ化け物ーっ!」

 

 ……そうして、愚か者はあっさりと退散していった。これでもう儂に興味を持つことはないだろう。儂のことを怪物だと通報するにしても、あれらは大した信用もないだろうから相手にされないと見える。そう、信用のある人間に見られない限り……。

 

 「あ、アンタ……」

 「あ」

 

 目が合った。ギルドで助け船を出したあの男が、こちらを覗いていたのだ。お節介で心配して密かに着いてきたのだろうが、今の今まで儂に勘づかせないとはやはり大物……ではなく。マズい。ゴールドの冒険者となれば通報の信憑性も上がってしまう。

 

 「えーっと……俺は何も見なかったから……」

 「お、おい待て!」

 

 鵜呑みにするには危険な言葉を残して、その男は去っていってしまった。どうする……? 追いかけて記憶を消す……にしても、あのレベルが相手では間違いなく抵抗される。戦闘で遅れを取るようなことはないだろうが、戦闘になる時点で論外だ。く、あれだけレヴィンに偉そうなことを言っておきながら、儂の方が火種を作ってしまうとは……!

 

 「おい、フェンニバ……ル?」

 

 と、色々悩んでいれば、今度はレヴィンがやってきた。そして、まだ元に戻していなかった顔をじろじろと見てくる。そんなにじっくりと見て何を言うのかと思えば。

 

 「その顔、覚えやすくていいな」

 「覚えやすいってお前な……」

 

 呆れて、顔を元に戻す。こうも極端に平均から外れた顔立ちでなければ同族の顔も覚えられないというのなら、レヴィンの為にも元の顔でいるべきだろう。

 

 「あ、なぜ戻す」

 「あの顔は一般的に人間に対して恐怖や不安、嫌悪感を与えてまともなコミュニケーションが不可能になるからだ……というか、お前は何も感じなかったのか? 美的感覚はないのか」

 「多分ない」

 

 こいつ……そもそもお前の愛読書には見目麗しい娘が沢山登場して……いやしかし、レヴィンの本に挿絵の類いは一切無かった。まさか、美しいという言葉では知っていてもそれが感覚と結びついていないのか……?

 

 「……前途多難じゃな……」

 「なにが」

 

 異様に疲れた儂は色々と諦めて、レヴィンと共に依頼を受けにギルドに戻ることにした。

 

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