知らんうちに弟分がおねショタハーレム主人公になってて狂いそう   作:鐘楼

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青き日々(11)

 「違う、それはただの雑草じゃ」

 「どっちも緑じゃん」

 「当たり前じゃろ」

 「……飽きた」

 「討伐の依頼が残っていなかったのだから仕方がないだろう」

 

 ボメナ近郊の森にて、薬草採取を始めて三時間。草を識別するという初めての作業はレヴィンには向いていなかった上に退屈だったらしく、既に限界が来ていた。むしろ三時間よく頑張れたものだ。しかし、これは冒険者であれば誰もが通る道。

 

 「……理屈は理解しているが、研修すらないのはな……」

 

 ギルドは、新人に一々薬草の見分け方や魔物との戦い方など指導しない。そんなリソースがある組織ではないのだ。だから新人冒険者の死亡率が一向に下がらないのだが、それでも回るくらいには次々と若者が入ってくるのが冒険者というものなのだ。故に、賢い新人は金を使って先輩に指導を依頼するなり、それが無理ならば最低限ギルドで貸し出している教本を読むなりして準備をする。

 

 「というか、なんでフェンニバルはサボっている。さっきから口しか動かしていない」

 「儂なら魔法で際限なく収穫できてしまうからな。お前のためにならん」

 「は? それができるならやれ。そもそも草むしりの経験なんてなんの役にも立たない」

 「経験は具体として捉えるものではない。お前は今忍耐という重要な経験をしたのだ」

 「うざい」

 

 殺意を滲ませるレヴィンだったが、こやつにしてはよく頑張ったのも事実。それで喜ぶのかは知らないが、そろそろ意地悪をやめて褒めてやろうとしたその矢先。

 

 「キシャァァァ!!」

 

 魔物。猪の出来損ないのような風体の魔物がこちらに向かって突進してきたのだ。

 

 「シャァァ──ァ?」

 

 しかし、そんなボリュームで鳴きながらの突進など儂にとってもレヴィンにとっても奇襲になどなるはずがなく、レヴィンが無造作に振るった腕……正確には、その腕から一瞬だけ伸ばされた生成刃によって脚と頭を分断され、魔物は動かない自らの身体に戸惑いながら絶命した。

 

 「正確に核を断ったのは流石だが、今のはきちんと考えてから刃を出したのだろうな?」

 「え? あれ魔物相手でも有効なの?」

 

 戦いで自分は何を得るのか、損失を被るのは誰か、何が世界から失われるのか。戦うときはそれを考えてからにしろ、以前にレヴィンとそう約束したのだが。

 

 「俺の邪魔だったし、魔物が死んで損する奴なんかいないだろ」

 「そうだな。だが、後からそれを考えるのではなく戦う前に確認しておくことが肝要なのだ」

 「……別に、ちゃんと考えてたし」

 「ま、信じるが」

 

 それはそれとして、妙だ。魔物の死骸を観察して、その懸念が強まる。まず、方角。今この魔物は森の奥からではなくボメナの街から現れたのだ。二つ目に、この魔物。解析したが、どうも自然発生した存在ではなく人工的に作られたタイプらしい。魔物の兵器運用を実用化させているのは魔族だけのはずで、そこから導き出される答えは。

 

 「……ウェスターシャめ、ついに手綱を握れなくなったか」

 

 視点を切り替え、世界を俯瞰する。そこから見えたのは、つい四時間ほど前には賑わっていたボメナが燃えさかる光景。穏健派の魔王ウェスターシャに不満を持つ魔王軍のタカ派がついに暴走を始めたのだと悟った。

 

 「どうしたの?」

 「ボメナが魔王軍に攻め込まれている」

 「え……」

 

 レヴィンが驚きの表情を浮かべる。ついさっきまで肌で感じていた平和がこうも簡単に崩れるのはさすがのレヴィンも──

 

 「魔王軍って実在するのか!」

 「そこか。そこなのか」

 

 案の定ではあるが、レヴィンは平和の儚さなど考えていなかった。

 

 「大体お前、厄災と戦っていた時にウェスターシャと……魔王と共闘していただろう」

 「……?」

 「……知らないで共闘してたのか……」

 

 レヴィンが特異な書籍に傾倒しだしたのは死後の話。つまり生前の此奴は今以上に周囲に興味がない存在だったのだろう。口にはしないが、可哀想な子だ。

 

 「……まぁとにかく、どうする? 儂はお前に付き合う。今のところ、お前以外の味方をするつもりはないからな」

 「魔王軍見てみたい」

 「……そこは人を助けたいと言って欲しいんじゃがのう……」

 

 分かっていたことだが。あまりにしょうもない理由で、儂とレヴィンは戦地へと赴くのだった。

 

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