知らんうちに弟分がおねショタハーレム主人公になってて狂いそう   作:鐘楼

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青き日々(12)

 一度向かうと決めれば、到着は一瞬だ。レヴィンと儂が本気の速さで来た道を戻れば、ボメナへの帰還などすぐに済む。だがしかし、それだけ急いだとしても既にボメナは壊滅状態だった。儂らの目的が人助けなら手遅れだったと嘆く時なのだろうが、実際は見物目的のレヴィンとその付き添いである。当然、レヴィンはショックを受けたような素振りは一切なく燃えさかるボメナに向かって歩いて行く。

 

 「にしても、この件は人間にとって痛手じゃろうな……」

 「どういうこと?」

 

 攻略されたに等しいボメナを見て抱いた感想を呟くと、意外なことにレヴィンが食いついてきた。例の創作が直接絡まない事柄にも拘わらずレヴィンが儂の話に興味を抱くというのは嬉しい傾向だ。

 

 「これは魔族の仕業だろうが、そもそも帝国と魔族の領域は隣接しておらん。これの意味するところは……」

 

 人間と、それに近しい種族。二つの心臓を持つ者たち、魔族。世界はこの二つが二分しているが、その境界線に接しているのは帝国ではなく王国だ。

 

 「空路、もしくは転移で攻め込んできたということ。見たところそれなりの軍勢で攻めてきたようだが、となれば十中八九大規模転移で軍勢を運んできたと考えて良いじゃろう」

 「それだと何が痛手なの?」

 「どこにも安全な場所がないということになる。どこにでもこんな攻勢を仕掛けられるのならば、全ての街が最前線になったということに等しい」

 

 尤も、この大規模転移も事前に現地の工作員の仕込みなどの制約があるのだろうが、それでも人間たちが今日から侵攻の恐怖に怯えるようになるのは変わらない。

 

 「やっぱり……」

 「ん?」

 「やっぱり、人間と魔族は憎しみあっている……!」

 「何を嬉しそうにしとるんじゃお前は」

 

 戦争を見て喜ぶのはさすがに……いや、レヴィンは自分のイメージと現実が珍しく合致したことを喜んでいるのは分かるが……やめだ。積極的に止めようとしない儂が言えたものではない。

 

 「ちなみになんで憎みあってる?」

 「……最近はかなり改善傾向にあったんだがの」

 「そうなのか?」

 「お前が仕留めた厄災という存在の前で、一度人と魔は共闘したのじゃ。あの戦いで両者の憎しみは和らいだ上、どちらも戦力のほとんどを失った」

 

 レヴィンがいなければ世界は滅んでいたのだから当然だが、本来ならば負けていたのは人魔共同戦線の方。唯一生き残ったのは魔王だけで、どこの陣営の戦力も壊滅状態。これでは争いなどできはしない。

 

 「生き残った魔王も甘い……穏健派での。反戦を掲げて疲弊した人類を攻め立てるようなことはしなかった。当然、兵も残っていない人間側も魔族と争うことはなく、厄災出現から今までの三十年は平和じゃった」

 「へー」

 「お前が掴んだ平和でもあるんじゃがの……」

 

 レヴィンはこの奇跡的な情勢の凄さが分かっていないようで、つまらなそうに平坦な相槌を打つ。平和をなんだと……とも思うが、レヴィンがその尊さを理解するのは難しいだろう。これは儂にも言えることだが、たとえ世が戦乱に陥ろうとも儂らに大した影響はないのだ。むしろ強者の立場からすれば、平和など枷でしかない。儂とて、味わったこともない弱者の立場を想像しているにすぎない。

 

 「……だが、あの子がどれだけ戦を望まなかったとしても、魔族側だけが魔王という最大戦力を失わなかったことは大きな歪みだった。加えて、魔族の寿命は長い。人間と違って三十年程度で恨みを忘れられる者ばかりではない。魔王の力を以て人間を滅ぼすべきという声は次第に大きくなっていき……ついに抑えられなくなった結果が今だろう」

 

 とはいえ、このボメナ近くにウェスターシャの気配はない。この侵攻は彼女の意思ではないんだろうが……なんにせよあやつは甘い。それは同族に対しても同じで、開戦派を抑えはするものの処断することはできないだろう。つまるところ、魔王の立場は事実上の黙認。

 

 「あ、今朝の奴」

 「おい、お前途中から話を……む」

 

 レヴィンが指さしたのは、儂が顔で脅かした愚か者二人……が、壮絶な顔で絶命したことが窺える死体だった。片方は比較的楽に死ねたようだが、もう一人には拷問……というより、遊ばれた形跡がある。仮にも冒険者がこれとは、思っていたよりも練度の差は絶望的だ。

 

 「こうなるなら俺がやっても良かったじゃん」

 「……たしかに、これではどちらがマシか分からぬな」

 

 悪縁も縁だと、気まぐれに愚か者共の遺体を聖炎で焼く。そんな時。

 

 「おいおい、こんなところに生き残りがいるぜ!」

 「どけ! ありゃ俺様の獲物だぁ!」

 「あ、待てや!」

 

 そんな無駄に大きな叫び声と共に、魔族の兵士が突っ込んできたのだ。だが、その程度のことに意識を向ける必要はない。儂とレヴィン相手に無警戒で挑みかかる時点で既に底が知れている。

 

 「ぐぇ」

 「がっ」

 

 案の定、一人は儂が展開していた棘状の障壁に気づかず自ら串刺しになり、もう一人はレヴィンの光剣に刺し貫かれて死んだ。

 

 「お前の見たかった魔王軍じゃが、感想はあるか?」

 「こんなモブはどうでもいい」

 「そうか」

 

 となれば、道は一つ。レヴィンと儂は揃って、未だ抗戦が続いていると思われる区域へ足を運んだ。

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