知らんうちに弟分がおねショタハーレム主人公になってて狂いそう 作:鐘楼
遠い隣国の地、ボメナ。
魔族の暴走の餌食となるはずだったその街に、騎士レヴィンと智龍フェンニバルは運命的に居合わせていました。
一騎当千の活躍で魔族を撃退した二人は、そこで新たな仲間を迎えることになるのでした。
―――――――――――――
崩壊は、突然だった。その日は朝から日常が続いていて、こんなことが起きるはずじゃなかった。
せいぜい、ギルドで絡まれている新人に助け船を出して、その新人の片割れの素顔がちょっと口にはしづらいものであったくらいで、街はいつも通りの日々が続いていたはずだ。
だから、これは何かの間違いだ。なんの前触れもなく、上空に街を覆うほどの巨大な魔法陣が現れて、あっという間にこの街を焼き尽くしたことも、次々と魔族の兵隊が現れて街をメチャクチャにしていったことも。
「ケイ! 大丈夫!?」
「っ……あぁ、なんとかな……」
最初の大規模攻撃で、腕に覚えのない奴らは死んでしまった。多少なりとも魔物との戦闘経験があるならば抵抗はそう難しくない攻撃だったとはいえ、一般人が命を落とすには十分な威力の戦術攻撃。おかげで、今街だったこの場所は火の海だ。
「私たちも逃げよう! 助けた人たちは逃がせたし、これじゃあもう他の生き残りは……」
この街で、共にゴールド等級にまで成り上がってきた相棒、モモ。彼女は優秀な魔法使いであり、その力で攻撃の時に周囲にいた人のことは助けることができた。しかし、その助けた人々が俺とモモの動きを縛る枷となり、彼らを逃がすための撤退戦を余儀なくされてしまった。幸い、彼らの殿を務めてかなりの時間を稼ぐことができたのだが。
「そう、だな……けど」
もう、逃げてもいい……いや、逃げた方がいい頃合いなのは間違いない。モモの魔力も底が見えてきているし、俺も雑魚相手とはいえ連戦で浅くない傷を負った。
「少し……判断が遅かったみたいだ」
「え……っ!? あれは……!」
魔族の軍勢を割るようにして俺たちの前に現れたのは一目で分かる強者の魔族。明らかに、易々と逃がしてくれるような手合いには見えない。
「……モモ。お前だけ逃げろ」
「えぇっ!? で、できるわけないよ!」
……まぁ、そうだよな。同じことを言われたら、俺だって受け入れられない。だけど、俺は俺よりモモに生き残って欲しい。
「貴様か? 俺の兵を百も屠ったというのは」
「……さぁな。一々数えてねぇよ」
いかにも大将っぽいその魔族は、斬りかかる前に俺に話しかけてきた。舐められている。が、有り難い。逃がした人達は余裕ができるし、俺も少しは体力を回復させられる。
「覚えてやる。名前を言え」
「……ケインス・アールカイト」
名を告げると、その魔族は獰猛な笑みを浮かべ、得物を握った。
これ以上の時間稼ぎは期待できそうにない。
―――――――――――――
「ぐっ……!」
「もう終わりか!? ケインス!」
我ながら、よく持ちこたえていると思う。後ろで逃げずに控えてくれているモモが、なけなしの魔力で俺に適宜回復を施してくれているからこその今なのだが、それはモモの魔力が切れてしまえばそれさえも難しくなることを意味している。そして、その時はすぐそこまで迫っている。
「なぜ……なぜこんなことをした!? なんで人間を……!」
「分かっとらんなぁケインス! これが人魔の正しい姿! 間違っているのは今の世や魔王の方よ!」
「意味、分かんねぇ……!」
「っ! ケイ! もう魔力が……!」
モモの魔力が切れた。もう回復は望めない。計算する。死力を尽くして、後二分。
「逃げろ! モモ、今すぐにだッ!」
「でも……っ!? ……ぁ……」
声にならない声を聞いて、眼前の敵を忘れてモモの方へ振り返る。そこには、有象無象に過ぎない雑魚魔族に胸を刺し貫かれるモモの姿があった。
「モモッ! ……ぐっ」
戦闘中に振り返るなどという隙を見逃されるはずもなく、俺は人間離れした力で蹴り飛ばされる。だが、自分の痛みなどはどうでもいい。
「モモ! しっかりしろ!」
モモに襲いかかった魔族を、片腕の一薙ぎで消し飛ばす。倒れ伏したモモは、動く気配がない。
「ふん。敵の前で魔力が尽きたことを明かす魔法使いなど、こうなって当然よ」
「ふざ、けるな……!」
今まで精一杯生きてきて、今日これからも生きるはずだった人達を。歴史と人々を育んで、多くの人々の故郷になってきたこの街を。……モモを。なんの権利があって奪うのか。
許して、なるものか。
「ぬ?」
魔族。忌むべき憎むべき滅ぼすべき、抹殺する対象。そう定義づけた途端、どこからか力が湧いてくる。精神的なものじゃない。この現実を正す為の、確かな力を……!
「報告です。突然現れた二人組に兵が次々と……!」
「後にせい。今面白いものが……」
「し、しかし! 我々では足止めもままならず……!」
魔族の言葉なんて、聞く必要はない。事実、あの仇敵と部下が何を話しているのかなんて全く頭に入っていなかったし、むしろすぐにでも斬りかかろうとしていたのだが。それでも、突然の爆風に俺を取り囲んでいた魔族が粗方吹っ飛ばされたともあれば、意識をそちらに向けざるをえない。
「……あの時の、新人?」