知らんうちに弟分がおねショタハーレム主人公になってて狂いそう   作:鐘楼

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青き日々(13)

 戦いの気配のする場所へ、レヴィンと並んで壊滅した街を進む。もちろん、それをこの場蔓延る魔族が黙って見過ごすはずもなく、次々とこちらへ襲いかかってくる。だが、儂を狙って突撃してきた者は尽く展開していた透明な棘状の物理障壁に串刺しにされる。

 

 この障壁は相対位置で儂の周囲に展開していて、害意を持って勢いよくこちらに突っ込んできた者のみを滅する魔法だ。争いに介入したくない、自らすすんで殺生をするのは避けたい、できれば返り血も浴びたくないという儂のエゴを体現するかのような受け身の魔法。殺さずに切り抜ける手段は他にいくらでもあるというのに、死の理由を相手に押しつけられるこの魔法を使う自分が嫌になる。

 

 無論、魔族も阿呆ばかりではない。串刺しにされる同士を見て、接近戦を控え遠距離から攻撃し始めるが、矢でこの障壁を貫けるわけもなく、またこの程度の相手が使う魔法も全て難なく打ち消せる。

 

 対して、標的にレヴィンを選んだ者はといえば。

 

 「な、なん……俺の身体、一体……ぃ」

 

 動きを見切られ、レヴィンに手首を掴まれた魔族の肉体がしわがれ、瞬く間に骨へと変じていく。

 

 「……生命力を吸ったのか」

 「そう」

 

 敵に触れ、その生命力を吸い尽くす“吸生”(ライフ・アブゾーブ)。可能だとは思っていたが、ここまでえげつないとはな……何が恐ろしいのかと言えば、その速度だ。人間よりはかなり長い寿命を持つ魔族の生命力をあの短時間で吸い尽くすなど、人間相手なら触れただけで即死するに違いない。

 

 そして、仲間の壮絶な死を目の当たりにした魔族たちもまた二の足を踏み、近づこうとはしない。やがて、儂らの歩みを止めようとする者はいなくなり、遠巻きに周囲を囲まれて様子見をされるという奇妙な構図になってしまった。まぁ、儂らは気にせず進むだけだが。

 

 「ところで、言いつけ通りにちゃんと考えてから戦っているのだろうな?」

 「またそれ? 仕掛けてきたの向こうじゃん」

 「売られた喧嘩にも買った責任は発生するのだ」

 「……別に、こいつら斬ったって魔族に恨まれるくらいじゃないの。人間からはむしろ感謝されるでしょ」

 「それが分かっているならいいのだ」

 

 実際のところ、レヴィンは誰に恨まれようが感謝されようが気にも留めないのだろうが。それは今のレヴィンの話だ。もしもこれから先、レヴィンが大事なものを見つけたときに、今のような生き方をしていればどこかでそれを取りこぼす。この教えは、そうならないよう慎重さを身につけさせる訓練でもあった。

 

 「……ねぇ、それなに?」

 「ん? 障壁のことか?」

 

 レヴィンが虚空を指さして訪ねる。一瞬何を聞いているのか分からなかったが、透明なまま展開している障壁について聞いているようだった。

 

 「見ての通り、棘状に展開した障壁だが……って、見えないのか」

 「敵がそこにぶつかったら何かが刺さって死ぬってことしか分からない」

 「ふむ。多少魔法に理解があれば視認するのは容易いが……」

 「魔法……」

 「お、興味があるか?」

 

 その身に莫大なエネルギーを蓄え、それらを魔力へと変換可能なレヴィンが魔法を覚えればどうなるかと考えれば、埃被った好奇心が疼くような気分になる。

 

 「魔法ってイメージすればできるんでしょ?」

 「何を言うとるんじゃ」

 

 また物語の知識か? 残念ながら、魔法はイメージより理論が必要な技能である。全ての魔法は理屈の上で成り立っているし、だからこそ奥が深く人を選ぶ。想像しただけで魔法が使えれば苦労はない。

 

 「魔法は勉学じゃ。理解、記憶、実践の反復こそが王道にして正道。望むなら儂が手ほどきをしてやろう。儂の生徒は皆揃って大成する。こんな貴重な機会は……おい、面倒そうな顔をするな」

 「じゃあいいや」

 「おい」

 

 魔法が自分の思っているような代物ではないと分かると、レヴィンはあっという間に冷めてしまったらしい。どうにも、やり場のない悔しさが滲む。

 

 「……とはいえ、本当に勿体ないのだぞ。吸収した力を身体の維持や回復、そしてあの剣の生成にしか使わないというのは。もっと他の手段があっても良いだろう」

 

 レヴィンの能力のうち、エネルギーを吸い取るという部分、つまり相手から奪い取る力だけで十分に強力なせいで見落とされがちだが、吸い取ったエネルギーの使い道という部分の方はかなり持て余している、という話を以前にもしたわけだが。やはりレヴィンにその気がないのなら仕方ない。

 

 「やろうと思えば他にも手札はある」

 「そうなのか?」

 

 てっきり、レヴィンの手札は吸収、回復力、伸縮自在の光剣だけだと思っていたのだが、実は他にもまだ儂の知らない攻撃手段があるとレヴィンは言う。そして、レヴィンは今から見せてやるとばかりに掌を前方へかざした。

 

 轟音。

 

 儂ですら思わず目を瞑ってしまうような爆風と、耳を塞ぎたくなるような轟音。その効果は凄まじく、運悪く儂らの正面にいた魔族はまるで体重などないかのように勢いよく吹き飛ばされ、建物へ叩きつけられた者は絶命した。効果範囲は前方遠くまで及び、ボメナの端まで視界を切り開くかのように一帯を更地にした。

 

 「ほら」

 

 そして、当のレヴィンは滅多に見せないドヤ顔で儂を見る。

 

 「……いや、今のは単に溜め込んだエネルギーを雑に発散させただけじゃろう……最低限指向性があるだけは良いが……」

 「攻撃にはなってるじゃん」

 「燃費はどうなんじゃ燃費は。お前今ので貯めたエネルギーどれだけ使った?」

 「ほとんど使った」

 「勿体ないじゃろうが!」

 

 レヴィンの能力ならば、その気になれば大気中のマナ、太陽光、重力などからエネルギーを補給できる。故に、どれだけ使っても身体を維持できなくなることはないだろうが……あれくらいの攻撃規模でも、魔法であれば魔力換算四分の一以下のエネルギーで事足りる。あまりにも無駄が多く、つい文句を言いたくなるような攻撃だった。

 

 「禁止じゃそれ。もうやるな」

 「えー」

 「だいたい、無駄に範囲の大きい技を使うでない。生き残りがいたらどうするつもりじゃ」

 

 などと、戦場にいることも忘れて言い合っていると。

 

 「……何者だ。貴様ら?」

 「あの時の、新人……?」

 

 見るからに大将格の魔族と、今朝に儂の変顔を見た冒険者が更地の真ん中にいた。

 

 

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