知らんうちに弟分がおねショタハーレム主人公になってて狂いそう   作:鐘楼

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青き日々(14)

 「おぉ、まさにネームド」

 「……確かに上位の魔族は特異な特徴を持つ場合が多いが……」

 

 周囲の有象無象とは一線を画す実力を持つであろう眼前の魔族を、レヴィンはネームドと呼称する。ネームドだのモブだの、詳しい意味は分からないが……レヴィンが魔族や人間を生きた対等な相手として見ていないのは分かる。尤も、あれだけ隔絶した力を持っていれば他人を対等に思うのは難しいだろうし……儂だって、永い時の中で対等だと思った相手など数えるほどしかいない。そんな身でレヴィンのことをとやかく言う気にはなれなかった。

 

 そんなレヴィンは、その魔族相手に歩を進め、無警戒にずけずけと近づいていく。レヴィンからしてみれば警戒するまでもない相手なのだからこれは当然の態度なのだが、魔族にはさぞ舐めた態度に見えただろう。

 

 「何者かは知らぬが……早死にが望みなのは伝わったぞ!」

 

 苛立ちを見せた魔族は、レヴィンに向かって飛びかかり、とても人間では扱えないであろおう巨大な得物をレヴィンに向かって振り下ろす。対するレヴィンは何もしない。まるで迫り来る死に気づいてすらいないかのように無防備だったが、何のことはない。無防備に見えるだけで、レヴィンの守りは鉄壁だ。

 

 「……なに!?」

 

 凄まじい威力を伴って振り下ろされた攻撃は、レヴィンに直撃したと同時に音もなくその勢いを失った。あの魔族からしてみれば、手応えがあるのに反発がないという奇妙な感覚に戸惑っていることだろう。“吸力”(キネティック・アブゾーブ)。物理的な動きを伴う攻撃は、すべてレヴィンの糧として吸収されるのみ。

 

 「今のは……一体なんだ? 何をした……!?」

 「そんなことより、俺あんたに色々聞きたいんだけど」

 「は……はぁ?」

 

 魔族の戦慄や得体の知れない恐怖など気にも留めず、レヴィンは自分の聞きたい話を始める。

 

 「まずさ、魔王軍ってどんな組織?」

 「は、はぁ……?」

 

 レヴィンの言葉に、魔族もそこに転がっている冒険者の男も呆けた顔をする。儂としてはもう勝手にやってくれという心境だった。

 

 「そ、それを知ってどうするというのだ……!」

 「いや別に。はやく答えろ」

 「ど、どんなと聞かれても……基本的には魔王に従う軍勢を指すが……」

 「ふーん。基本的にはって?」

 「それは……我らだ! 我らは魔王軍に籍を置いてはいるが、日和った魔王の方針にまで従った覚えはない! 故に! こうして独自の判断で人間を攻めにきたのだ!」

 

 言っているうちに気が乗ったのか、思いのほか詳しく事情を話す魔族。やはりというかなんというか、この戦いはウェスターシャの意図するものではなかったらしい。とはいえ、目の前の男がウェスターシャの目を欺けるほどの力や知略があるとも思えない。つまるところ、魔王の立場は事実上の黙認といったところなのだろう。

 

 ……レヴィンがそこまでのことを読み取れたのか分からないが。

 

 「へー。それよりさ、一人くらい魔王軍に人間の幹部とかいないの?」

 「いや……いるわけがないであろう」

 「あぁそう……」

 

 レヴィンは不満げな顔をした。

 

 「じゃあ待遇とかどうなの? 労働環境に不満は?」

 「は? ……いや、職務は警邏と訓練くらいで物足りないくらいだが……我らはそこが不満なのだ!」

 「はぁ……うん?」

 

 魔族の言葉の意味がよく分からなかったのか、首をかしげるレヴィン。コイツ……物語の『魔王軍』と現実を照らし合わせて一喜一憂しているな? いや、レヴィンが何かに積極的なときはだいたい物語関連なのだが。

 

 「と、というか……さっきからなんなのだ貴様は! そもそも何者だ!?」

 「それこそ知ってどうすんの」

 「決まっておる! 貴様を殺した後に記憶に刻み込むためよ!」

 

 半端に武人気質らしいその魔族が勇ましいことを言うが、渾身の一撃を無傷で凌がれたことを忘れているのだろうか。同じことを思ったのか、レヴィンは魔族を鼻で笑った。

 

 「いや……それは無理でしょ」

 「ぬっ……バカにするなぁぁ!」

 

 そんなレヴィンの態度はやはり魔族の逆鱗に触れ、巨剣がレヴィンに襲いかかる。案の定、それらはなんのダメージにもならないが、先ほどとは明確に違う点があった。完全にその態度のせいなのだが、話を勝手に終わらせられたレヴィンは苛立ち、反撃に移ったのだ。

 

 「ガッ……は……?」

 

 一閃。無から現れた光剣で、魔族の足と胴は一瞬で分かたれた。

 

 「……あ」

 

 本当についカッとなって斬ってしまったらしく、レヴィンは斬った後でやってしまった……みたいな顔をする。本当は大人しくさせようとしただけで、殺すつもりはなかったんだろう。

 

 「……フェンニバル」

 「いや、治さんぞ。言いつけを守らず感情で剣を振るうからこうなる」

 

 助けを求めるような目でこちらを見るレヴィン。おそらく魔族を話ができるよう治療して欲しいんだろうが、そうはいかない。考えてから剣を振れ散々と言った後にこれなのだ。反省しろ。

 

 「やられた……頭がやられたぞ……!」

 「撤退!撤退だぁ!」

 

 大将があっけなく散ったのを見ていた魔族たちは恐慌状態に陥り、我先にと撤退していく。どうやら退路も万全なようで、この街のどこかに本拠地直通の転移魔方陣のようなものがあるらしい。

 

 「おい。魔族に話を聞きたいなら、そこらへんのを適当に捕まえるでも良いだろう」

 「モブは事情を聞かされずに利用されてそうだしやだ」

 「偏見……」

 

 レヴィンはなぜか雑魚を情報源にするのはお気に召さないらしく、どんどんと見逃されて撤退していく魔族たち。で、これからどうしようかと思案していると、すっかり忘れていた人物から声がかかる。

 

 「あんたら……一体なんなんだ……?」

 

 片割れを失ったゴールド等級冒険者の男が、儂とレヴィンを見上げていた。

 

 

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