知らんうちに弟分がおねショタハーレム主人公になってて狂いそう 作:鐘楼
「なんで?」
「いいからやれ」
食事を作るから準備を手伝えとレヴィンに命じると、レヴィンは本当にやる意義を理解できていなさそうな顔をした。食事を取る必要がないレヴィンにとっては無理もないことかもしれないが、今回に関してはそうはいかない。
「お前には不要でもケインスには必要なのだ。お前が引き入れたのだから責任を取れ」
そもそも、ケインスを連れていくと決めたのはレヴィンなのだ。大の大人をペット扱いしているようで気が引けるが、拾ったレヴィンにはケインスの面倒を見る責任がある。
「……責任」
「む?」
言って聞かなかったら別のアプローチを試す必要があるかもなと考えていたが、意外にもレヴィンは「責任」という似つかわしくない言葉を復唱し、例の本を仕舞い立ち上がった。
「なんじゃ、責任というものを知っておったのか、むしろ」
「じじいが言ってた。責任は負わないに越したことはないが、やむなく負ったなら果たすべきらしい」
「……面倒は嫌うが、誠実ではあるのか」
不意にだが、じじいこと大作家ユータローの人柄が今までで最もよく分かる話を聞くことができた。ともかく、責任というものをレヴィンに教える偉業を為したその男に感謝するべきだろう。
「なにをすればいい?」
本当に責任を果たす気になったらしいレヴィンが、ケインスに指示を仰ぐ。変に突っ走らずに話を聞こうとする点にも感心するが、役割はもう決まっている。
「お前は儂と共に食材調達だ。狩りを教えてやる」
「お、おい。子供にそんな……あーいや、すまん。そいつは俺よりずっと強いんだったな……」
「そういうことじゃ」
レヴィンを連れて、夜の闇の中の茂みに繰り出す。決して狩猟に適したシチュエーションではないが、儂とレヴィンであればやれる手段はいくらでもあるだろう。
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そして、レヴィンは儂の指示通りにあっさりと食用に適した獲物を仕留め、ケインスのもとに持ち帰った。料理道具はケインスが一式を持っていたので、そこからはケインスの仕事だ。レヴィンは自分の役目は終わったとばかりに読書に戻ってしまったが、ケインスの料理にはなかなか目を見張るものがあった。
やがて、ケインスは手際よくスープと主菜を完成させ、律儀に三人分を振る舞った。
「儂の分まで用意せんでも良かったのじゃが」
「そういうわけにはいかねえよ。俺の気分の問題だ」
完成した食事にもやはり目もくれないレヴィンは置いておいて、一旦出された食事を食べてみる。儂の今のこの身体は虚像のような物だが、人に紛れるための基本的な機能は備わっている。それには味覚も含まれており、食事も嗜むことも可能だ。いざ口にしたケインスの料理は、夜営にしてはなかなかのものだった。
「なかなか美味ではないか」
「だろ? モモと……仲間と旅してるときも、こういうのは俺の担当だったんだ……」
そう言って、どこか遠くを見つめるケインス。此奴がその幼馴染みを失ったのは、まだ今日の話だ。泣きはらさずに、こうして静かに思いを馳せていることが既に立派だろう。だがそんなケインスを前に、儂は敢えて空気を読まない選択をした。
「ま、儂の方が美味くできるがの」
「って、おい。一言余計だろそこは」
「ただの事実じゃ。儂がお前の何千倍生きたと思っておる」
「う……あの智龍様の言葉なら、説得力がすごいな……」
実際、まだ好奇心や使命感が健在だった頃にこの世でできることの大部分は探求した自負がある。少なくとも、ケインスの人生より長い期間料理に凝ったこともあった。その頃のようにやれるかは怪しいかもしれないが、若者には負けぬ。
「にしても……伝承とかそういうのは、意外と当てにならないもんだな」
「どういう意味じゃ?」
「いや……智龍様って言ったら、もっと厳格で威厳のある存在だって教えられてきたもんだからさ」
「そういう話か。なら、儂に関する伝承はほとんど歪曲されたものだと思って良い」
「え……そ、そんなにか?」
ケインスは、おそらくそこまで信心深い方ではない。だがそんな者ですら、常識として儂のことを知っている。客観的に、智龍フェンニバルとはそれくらいの存在なのだが、儂としては正直それがどうにも鬱陶しい。
「皆、儂を都合の良い存在として伝えておるからな。儂は魔族たちにとっても変わらず信仰対象なのだが、知っておったか?」
「は……? そうなのか……!?」
「当然、向こうでは都合良く人間よりも魔族を愛する存在として描かれておるし、お前も当然人に味方する存在だと教えられたろう? どちらも正しくはないのだが……正直、辟易しているよ」
「……」
……儂としたことが、若人に愚痴のようなことをこぼしてしまった。そんなつまらない話を聞かされたケインスは、儂が人の味方でないことに失望するでもなく、何やら考え込んでいた。聡い人間だと、素直に思う。出会い方が異なれば生徒にしていたかもしれない。
「さてと。おい、レヴィン」
「……なに?」
「食え」
ややこしい話を切り上げて、本題のレヴィンだ。おそらくだが、レヴィンはその記憶の限り、食事というのをまともにしたことがない。今の今まで、栄養補給をすべてその規格外の能力で賄ってきたからだ。
「必要ない」
当然、興味のなさそうなレヴィンは想定通りの答えを返すが、考えはある。レヴィンの気を引くのは簡単なのだ。
「……お前が読んでいるその小説にも、食事シーンくらいあるだろう。それとも、お前のように一切飯を食わない登場人物がいたか?」
「…………ッ!」
レヴィンの目が見開かれる。計画通りだ。レヴィンは何か言うでもなく、ただこちらにやってきて、ケインスの用意した食事と向きあった。そして、かなりの間が空いた。
「…………お、おい。食わないのか?」
不審に思ったケインスがそう尋ねると、レヴィンはケインスの方を向き、口を開く。
「どうやって食べればいい?」
「いや……ただのスプーンだろ。お前、本当に使ったことないのか……」
レヴィンは、見かねたケインスによって熱心に食器の扱い方を教えられる。儂はそんな様子を好ましく見ていたが、レヴィンがようやく料理を口にできたのは、すっかりスープが冷めた後だった。だが。
「……良い」
「だろ? 自信あるんだ」
冷めていたとしても、レヴィンにとっては初めてのまともな料理。レヴィンの表情には、僅かばかり感動が滲み出ていた。そんなレヴィンに、ケインスも誇らしげに笑う。
「レヴィンって言ったか? お前、本当に何も知らなかったんだな……なんか、ほっとけねーわ」
幼馴染みを喪ったケインスに対し、配慮の欠けた言葉を投げかけたレヴィン。その言動が、人として培われるべき様々なものを持ち合わせていないからこそのものだったと、ケインスも実感したのだろう。あの時のことを水に流すかのようなケインスの言葉に、レヴィンは恥ずかしがることもなくただ黙々と料理を口に運んでいた。
だがその後、レヴィンは吐いた。
最後に胃腸を使ったのが生前の幼少期の頃だったので、身体が食事というものを忘れていたせいなのだった。
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書き下ろし短編ではブラックデザイアさんのストーk……変質s……様子のおかしいアレなシーンが見れますので宜しくお願いします!