知らんうちに弟分がおねショタハーレム主人公になってて狂いそう   作:鐘楼

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実力を見誤った場合は都度上方修正するものとする。

 「行きますよ……!」

 「いつでもいいぞ」

 

 伝承の剣()を構えて正面から俺を見据えるクルスから、いつもの穏やかな雰囲気は鳴りを潜めている。ここに連れてこられる前のクルスとは明らかに違っていて、それなりに経験を積んできたことが窺える。

 

 「あ、あの……レヴィン、さん……の武器はどうするんですか?」

 

 成り行きで見物している妖精のソフトレイニーが、俺が手ぶらなことに疑問を感じて尋ねてくる。別に素手でも問題ないが、疑問に思うのは当たり前だ。

 

 「今から出すんだよ」

 「え……?」

 

 言って、貯蓄した力を変換した光剣を自分の手に創り出す。昔はマナやら魂やらを吸収して貯めた力を筋力や身体維持、自己治癒なんかにしか使えなかったが、色々あって使い方も多少は増えた。その一つがこの光剣の創造で、身体のどこからでも生やせてとても便利だ。なにが便利かって実剣みたいなかさばる物持ち運ばなくてもいいというところが特に。

 

 「すごい……」

 「別に業物じゃないが、便利だろ?」

 

 改めて、今も集中を高めているクルスに向き合う。俺があの剣をこの島に置いていったのも自前で武器を創れるようになったからで、将来的にクルスもこれができるようになったらあの剣の第二の役目も終わるんだろうか。

 

 「あー、いつでもこい。とりあえず剣技だけ見るから、お互い“吸収”(アブゾーブ)は無しな」

 「はいっ! やぁっ!」

 

 大きく踏み込み一気に距離を詰める初撃。それを軽く受け止めるが、思っていたよりも重い。斬斬を正面から受けるなんて久々すぎて鈍ったか。……いや、ここはクルスが思っていたよりも成長していたと考える方が良いか。

 

 渾身の一撃を受け止められたクルスは膂力勝負に付き合う気はないとばかりに的確に力の方向を変え、俺の剣を受け流し角度を変えて次の攻撃に移ろうとする。初めて剣を請われた時は王国式の型をある程度こなせる、程度の物だったのが進歩したものだ。

 

 「ほいさ」

 「わっ!?」

 

 俺はクルスの二撃目をバックステップで躱すと、剣の腹を蹴飛ばして弾いた。驚きに染まるクルス。俺との手合わせが久々すぎて忘れていたようだが、俺の光剣には重さがない。故に普通の剣士とは重心が違うためバランスを崩したように見えてもそうではない、ということがある。なんて言っても、実戦で俺と戦うなら他にいくらでも対策するべきことがあるんで大して意味はないが。

 

  その後も、クルスはめげずに幾度も剣を叩き込んできたが、どれもが半年前とは別人のように鋭く疾くなっていた。途中何度か危うい場面もあり、“吸収”(アブゾーブ)にかまけて剣をおろそかにしていた自分を思い知らされたくらいである。昔の剣を身体の一部として振るう獣はもういないのである。だって剣振んなくても勝てるから。

 

 「はぁっ……! はぁっ……! どう、でしたか……?」

 「うーん……つっても0か……」

 「えっ!? ぜ、ゼロ……」

 「いや、今基準だと誰でも0だしフェアじゃないな……昔だと……4ってとこか?」

 「それでも4点なんですか!?」

 「あぁ、100点満点で知りたかったのか? なら100点どころか120点だよ。よく頑張ったな」

 

 テスト形式なら、俺の想像の遙か上を行ったということでそれぐらいの点はあげたくなるできだった。と言っても、俺はクルスの才能に期待して育てたというわけでは全くないので、期待のハードルがかなり低めであったことは否めないが。

 

 「あ、ありがとうございます……じゃ、じゃあ0とか4っていうのは……」

 「あぁ、それは俺が本気ならクルスを殺すのに1秒かかんなくて、俺がお前くらいの歳の頃だったら4秒くらいはかかるかなって意味だ」

 「よ、4秒……」

 「く、クルスくん? この人ほんとに大丈夫なんだよね?」

 「じ、実戦志向の人なんですよ!」

 「そういう問題じゃ……」

 

 俺の評価方法を聞いたクルスとソフトレイニーが何やら言っている。そういえば、前に知り合いにこの評価方法を教えたら傲慢だだの舐めんなだの散々言われたんだったか。

 

 「んで……“吸収”(アブゾーブ)の方は……まぁいいだろ」

 「いいんですか!?」

 「見れば“吸魔”(マギア・アブゾーブ)ができてんのは分かる」

 「……レヴィンさんに教えて貰ったこの力がなければ、僕はもう餓死してましたよ」

 

 俺が持ち、クルスに伝授した力を吸収する力、“吸収”(アブゾーブ)。それには段階がある。第一段階が“吸魔”(マギア・アブゾーブ)。マナをはじめとする魔法的なエネルギーを吸収する力。これさえ使えれば水以外口に入れなくとも生きていける。(多分)親に捨てられた俺が生き延びることができたのもこれが発現したおかげだ。

 

 クルスもこれのおかげで生き延びることができたんだろう。

 

 「上の段階も、その剣使ってればいずれできるようになるだろ」

 「伝承の剣を……?」

 「あぁ。俺もそれを……じゃない、なんだ……見る限り、その剣には“吸収”(アブゾーブ)を鍛える力がある……っぽい」

 

 生前に俺が苦戦したのは、2回。その1回目に死にかけた俺にブラックデザイアが渡してきたのが今クルスが持っている剣だ。俺はあれを使ったことで能力の壁を破った……という話をクルスにするわけにはもちろんいかないので、適当に誤魔化す。

 

 「そうなんですか? レヴィンさんがそう言うならこれからもこの剣を使ってがんばります!」

 「おう」

 

 というやりとりを経て、手合わせは幕を閉じた。クルスは剣を納め、俺は再び霊子書籍を開いた。

 

 ……と、そこで開いていた作品のある台詞が目に入る。定番。定番の台詞だ。

 

 だが、皆が皆クルスに懸想しているこの島で、これを言う立場の者がいるだろうか。

 

 ならば、言わなければならないだろう。他でもない俺が。

 

 「んで、クルス。お前どの妖精が本命なの?」

 「真顔で何聞いてるんですか!?」




ソレナンテ=スコー・ピオン
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