知らんうちに弟分がおねショタハーレム主人公になってて狂いそう   作:鐘楼

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配慮を無碍に扱うと誰も得しないらしいよ(n敗)

 「いや、だからあんなに妖精に囲まれててメインヒロインは誰なのかなって一応」

 「めいん……? って、一応でそんなこと聞かないでくださいよ!」

 「わ、わたしもそれ気になる……!」

 「ソフトレイニーさんまで……!」

 

 真っ赤になって慌てるクルス。正直無理して聞き出すほど気になっているわけでもないが、この質問は様式美というやつだ。なぞらなくてはなるまい。

 

 「うぅ……じゃあ、その……レヴィンさんには言っても良いですけど……ソフトレイニーさんに聞かれるのは……ちょっと……」

 「えぇ!?」

 「あー、残念だったな」

 

 本当に聞きたい奴が聞けないというのは皮肉な話だなーなんて思いながら、とぼとぼ離れていくソフトレイニーの背を見送る。

 

 「その、実は……本命といいますか……恋愛的に見ている方は……いないんですけど……」

 「いねーの? なら別にソフトレイニーを追い払わなくても……」

 「それが……実はまだちょっと……怖いんです」

 

 クルスがそう言ったところで、びくん、と俺の感覚が微かな動きを捉えた。ソフトレイニーだ。どうやら離れるふりをして盗み聞きしているらしい。思っていたより素直じゃないのかもしれない。

 

 「怖い?」

 「今でこそ、皆さん親切にしてくれていますけど……やっぱりこの島に来たばかりの頃に命を狙われたのが頭をよぎって……妖精の方達にも事情があったことは、分かっているんですけど……」

 「なるほどー」

 

 クルスにとってこの島での洗礼は、思っていたよりトラウマだったらしい。こりゃ、本人的には話に聞く過剰なスキンシップや毎夜の夜這いも相当なストレスだったのかもしれない。まぁ、助けないけど。何しろスケベシーンで別の男が乱入なんて展開はじじいの著作で見たことがない。つまり助けたら台無しなのだ。

 

 そして、この話を聞いたソフトレイニーは落ち込んでいるようだった。実は怖がられていると知ってショックなのだろう。クルスはこれを見越して彼女を追い払ったのだろうか。

 

 「じゃあさ、さっきのソフトレイニーとかも怖いの?」

 「ソフトレイニーさんですか?」

 

 より一層、物陰に隠れた妖精の肩が跳ねた。これが助け船になるか追い打ちになるか分からないが、良い反応をしてくれる。

 

 「ソフトレイニーさんは……僕が剣を抜いた後に知り合ったので、怖くはないです」

 

 クルスの言葉を聞き、ソフトレイニーの緊張が一気に弛緩する。……見られていないからって分かりやすい奴だな。

 

 「でも……ソフトレイニーさんのことは正直、よく知らないんですよね……その、どうしても押しの強い方の印象が強くて……控えめでありがたいんですけど……印象が……」

 「……あ、ノックアウトした」

 「は、はい?」

 「いや、こっちの話だ」

 

 どうやらクルスの本音は刺激が強すぎたらしく、ソフトレイニーは動かなくなってしまった。引かれてる連中よりマシな気もするが、不満だったようだ。

 

 「じゃあ他の……一緒にいた三人はどうなんだ?」

 「サニーウインドさんたちですか? そうですね……」

 

 サニーウインド、フレアルビー、クレイプレシャス。あの三人組とは行動を共にすることが多いようだし、特別な思い入れなんかがあるのだろうか……と、少し考え込むクルスを見て思う。クルスはやがて顔を上げて、思ったよりも真面目な声色で語り始めた。

 

 「サニーウインドさんは……僕が剣を抜いた時からずっとあの調子なんです。僕が伝承の人にそっくりだからって……」

 「いや似てねぇ似てねぇ」

 「え?」

 「なんでもない」

 「は、はい……? えっと、それで……サニーウインドさんはもし僕が剣を扱えなくなったり、年を取って少年じゃなくなったら変わってしまうんじゃないかって……」

 「要するに、あいつがお前を慕ってるのは伝承ありきなんじゃないかって?」

 「そういうことになります……」

 

 まぁ、サニーウインドはあのデタラメ伝承に相当思い入れがあるっぽいのは見て取れる。後、姉がどうとかも言っていたっけか……どうねじ曲がってるのか知らないが、俺とブラックデザイアにそんな関係性は無かったはずなんだが。

 

 「あいつの伝承好きがどのくらい重病なのか知らないが、大なり小なりそういうことはあるだろ、多分」

 「……レヴィンさんも、ですか?」

 

 言われて、チラリと不安げな上目遣いをするクルスを見る。じじいの九代後の子孫……だが、顔から面影を見いだすことはできない。それなりに血が混じればこんなものか。

 

 「……お前だって、会った頃は王国のやたら誇張された“騎士レヴィン”像を俺に見てただろ」

 「それは……そうかもしれません……けど」

 「けど?」

 「僕は、生のレヴィンさんの方を尊敬していますから」

 「お前ほんと変だよなー」

 

 本当に、クルスの俺への感情は不可解だ。こいつの憧れを切り捨てた後も、態度は大して変わらない。最初は俺に見捨てられたら死ぬしかないから言うことを聞いているのかと思っていたが、そうではないらしい。

 

 「……で、残りの二人は?」

 「あ、この話まだ続けるんですね……」

 「そりゃな」

 「うーん……フレアルビーさんは腕っぷしにこだわりがあるみたいで、ことあるごとに僕に稽古をつけようとしてくださるんですけど……正直、わかりにくいと言いますか……レヴィンさんの指導に比べると……」

 「別に俺教えんの上手くないんだが……どんだけ酷いんだアイツ」

 

 クルスは“吸収”(アブゾーブ)だけでなく剣の方も俺に教えを請う。他人に教えるのなんか初めてだったから、『超一流になったはずの弟子が、なぜか師匠離れしてくれない件』を参考にしたのだけで、教えになっていたのかも怪しいんだが……。

 

 「だから、これからはお断りしてレヴィンさんに教えて貰おうと思ってます」

 「まー面倒だしたまにな。じゃ、クレイプレシャスは?」

 「あの方は……僕には優しくしてくれるんですけど……その、一度クレイプレシャスさんの部屋を見てしまって……」

 「なんか刺激が強いことやってそうだったな」

 「それで……あの方の二面性みたいな部分が、怖い……という気持ちもあります」

 

 ……アイツ、上手いことクルスにバレずに済んでるのかと思っていたが、捕まえた人間使って実験してる証拠普通に見られてるのか。あれで意外と杜撰なのか……?

 

 「でもま、利益につながるからやってるんだろ。有意義なんだから……俺……じゃなくて、いたぶって殺すタイプの妖精よりマシだと思うけどな」

 「分かってます。分かってはいるんですけど……」

 

 なんか全体的に、クルスの好感度がプラスじゃないな……やっぱり、物語とは違うか……?

 

 「……でも、言い寄られて悪い気はしないんだよな?」

 「そ、それは……その、少し……」

 

 いや、時間の問題かもしれない。

 

―――――――――――――

 

むくり、と。一人の妖精が立ち上がる。

 

 「す……すごいこと聞いちゃった……!」

 

 二人が去った後、ソフトレイニーがそう呟いた。




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