転生したらダンジョンがある件について   作:中里悠太朗

3 / 14
お待たせ。
待った?
掲示板とか配信とかないけど許しての、許して……。


第二話 始まった戦火/強者たちの蠢き

「なん、なの! あの……モンスター、なの? イレギュラー、なの……?」

 

 白い巨体に生半可な攻撃は通用しない、文字通り傷一つだってない。

 この体に宿る彼にとってとても僥倖な事象だった。

 

 瓦礫を苦にせず一歩進めば敵は一歩退いていく。

 敵に臆せずにまた進めば敵は臆して退いていく。

 

 人にとっては遥かに大きくな空間だとしても、彼には狭くそして脆い。

 もって徒手空拳での対処を迫られるが彼にとってはいともたやすい事だ。

 

 ────ただしそれを知らせる表示は彼にとって鬱陶しい。

 

 まだ体に慣れていないは明らかだ。

 実際自分の知らない能力があるだろうと彼は思うし、この短時間でできるわけがないとやや割り切った感情もあり。

 

 最中『ヴァンドール』『1m50㎝』『爪の硬化状態』『三種の遠距離スキル』『タイプ:ポーン』と今だけ重要な表示を流し目にして。

 今は己を知る為に協力者の、その敵を倒してしまわねばならない。

 

(……)

 

 さて彼らにとってはその巨体に襲われる前に、いま傷つき倒れる連中を、跡形もなく片せば良い話だったのだろう。

 

「!! うぁ……」

 

 今治療に気取られていて一切動けない男と、この中で実際に満身創痍の男に向け一つの影が殺到する! 

 

「ダメ!!」

 

 瞬間卑怯な真似を試みた敵目掛け、少女の前から掻き消えるように白い影も疾走! 

 

(!!)

 

 はたしてどちらかが疾かったなど明白────決着もまた一瞬そして一撃にて勝敗は決した。

 

「い……?」

 

 彼女は恐れる暇もなくそれを見た、その他もまたその光景を垣間見た。

 土煙など上がらぬ大地の上に起立し、勝鬨めいて大きく上げられたのは。

 

 

 

「……つよ、い」

 

 

 

 黒い胴体に風穴を開けて堅く握られる白い拳だ! 

 

 無造作に投げ捨てる様はまるで決闘を申し込む苛烈な騎士。

 さてこの卑怯な輩と彼は断定したが、その様な知恵を確かに持ち合わせているのは間違いない。

 

 それを証明するかのように、彼らを中心として輪を描くように高速で移動し始めたのだ。

 彼に迂闊に攻撃を覚られないためか、或いは彼だけを幻惑させ周囲の人間を確実に撃滅するだけか、もしかしたらどちらとも言えるのか。

 

「ん、な……」

 

 今まで全くまともに動く気配も見せていなかったはずのその体は、血に濡れた男が呻いたからか足元へと顔が動いたのを誰もが捉えた。

 

「あっ!!」

 

 女の子の叫び声が上がった瞬間に爆炎の花が頭部に咲き誇った。

 一瞬の隙を見つけ出され攻撃をされたのだ、先ほど彼女がまともに受け止めてしまった、赤色怪光線とはまた異なる赤光弾によって。

 

 そのまま蹲っていくように姿勢を変えていくが、果たしてこの攻撃は致命傷になってしまったのか、今無力感に襲われてすらある動けない少女は生唾を呑み。

 

 一瞬止まったように見えるが今度は見向きもしない中、彼は突如手のひらを差し出してエネルギーを象らせて、倒れる彼に向けて優しく放ち始める。

 

「う、あ?」

 

 青くドーム状に男を包んでいくそれは誰がどう見てもバリアーであったのだ。

 これから攻撃の巻き添えや戦闘の余波を食らって間違いなく危ないのはこの男だ、そう彼は判断して自分が攻撃を受けるリスクすら無視してもこの中年を助けたのだ。

 

 ただ自分の中にある抗いがたく卑しい感情に従って。

 

「あり、が……」

 

 再び襲い掛かるは先ほどと同じような光弾攻撃だ、しかし今度は息もつかない波状攻撃! 

 あっという間に彼の体を爆炎に曝し、近くで見ていた男はバリアー越しに己と彼の命を祈り、周囲にいた人らは熱線と爆風に曝され蹲るしかない。

 

「あぁっ!!」

「くっ……」

「うう!」

 

 余りにも苛烈、あまりにも無慈悲。

 ダンジョンは下層へ降りるたびに頑丈さを増すが、一種の懸念が過ってしまうのも無理のない話だ。

 岩の天井に床にと染め上げる粉塵と真っ赤な光は、先程までの地中を照らした白光を掻き消す。

 

 ────さらにそんな攻撃すら全くの牽制であると覚ったのはただ一人立ち上がろうと試みていた女性、白露若菜のみであった。

 

「え……?!」

 

 赤色に染め上げられた景色に垣間見た異常な敵の行動は、なんと特徴的砲身の展開である。

 それは胸部と腹部の合間から飛び出しておりチャージする緑色の光、きっと何物にとっても驚異的になりうると考えるや否や、彼女は周囲にも彼にも叫び促そうと。

 

「ねえ……あ、れ」

 

 体が楽になりその原因となる発光、バリアーを張ってくれた影を仰ぐ他はできなかった。

 彼は自らを余所にしても彼女らを守ろうとしているのだと彼女は独り言ち、見上げた顔はずっと奥底で光る眼の軌跡だけを追い続けて待っての声も上げられはしなかった。

 

 

 

 

 

 それに彼は黙って見ているわけがないのだ────ついに完全なる反撃に打って出たから! 

 

 

 

 

 

 大腿部から取り出した箱は二ついいや二丁、白く小さめのケースは大型拳銃へと変形展開! 

 近未来的丸みを帯びたデザインから放たれる白光弾は、狙いも定めていないのかと疑われるほど瞬時に射撃! 

 

 砲撃による壊滅的な一撃を狙っていた『ヴァンドール』の体に、ガウゥと唸る銃弾が吸い込まれていき。

 暫く白と緑の光が入り混じった後に、一瞬体が収縮したと思えば爆発。

 

 

 

 しかしこの空間にとってはあまりにも巨大すぎる爆発であった! 

 

 

 

 天井を爆発は叩き緑の先公は爆炎に消えて、噴煙はあっという間にこの階層の彼らのいる部分を焼く尽くす! 

 バリアーは確かに彼らの身を守る為だったのだ、しかし敵の攻撃だけでは無く()()()()に対しても守る為にもとは思いもしなかっただろう。

 

「うお、なっ、伏せろぉぉぉぉ!!」

「【アイゼンシールド】……」

「【テクターレイ】!!」

 

 スキルの重ね掛けによる防御の強化による判断は見事、彼らは無事でいられたが、当然あんなエネルギーを丸ごと蓄えていられるなどと。

 慌てふためく彼らを尻目に、白い鎧は炎を背に踊る。

 

(……これで強力ではないと言ったか)

 

 疑問とも、そして敵とも未だ彼は戦いを続けている。

 陣形らしい陣形であったがあっという間に乱れてしまった彼らの戦術、その隙を逃すべからずと各個撃破を狙う二丁拳銃が唸る。

 

 ガゥガゥガゥと放たれる連続射撃はまさに狼の唸り声か、敵を食い破るべく駆け抜ける光に、しかしそれでも容易くやられはしない。

 攻撃のために装甲が展開して中身が露呈していた、装甲の隙間を狙うような一撃で撃破できたばかりに。

 

 ならばその様にすればいいとばかりに、銃口同士を重ね合わせるようにすれば。

 タイミングぴったりの同時射撃が装甲を完全に破壊したのち、亀裂に正確無比な追撃を撃ちこめば、先程のようでは無いもののまたも爆発は上がり。

 

(いけるか!)

 

 感覚を掴めばそう難いことでは無かった、少なくとも彼にとっては。

 証明するよう次々と斃れ伏す敵の影、立っている者は一つ一つと減っていき、あっという間に残す敵の数は二つのみ。

 

 そんな彼らの破れかぶれの賭けだったのか、彼が拳銃を握って遠距離戦を仕掛けてきたから油断していると見たか? 

 ともかく超接近戦に持ち込んで、相手の装甲の隙間や顔面を狙いやはり伸ばしてくるは黒く刃となった爪、後ろと正面で挟まれて十文字を描く軌跡。

 

 彼に避ける気配などない、当然巨体を振り回してでも打って出た。

 

 彼等二人の斬り払いと斬り下ろしよりも素早く上げた両腕には拳銃、しかし彼らが狙うのは拳銃ばかりである、攻撃や反撃に臆さない剣は迫り。

 

 一瞬の交差は決着を呼び、L字の影が遥か宙を舞う。

 前後から迫る黒い剣はついにけれに深い傷を残したのか、影だけを見るなら首を貫いた二条の細い影があるだろう。

 

 彼はついに滅びたのであろうか、いとも簡単に────いいや違う。

 

 

 

 

 

 しかし剣はもう二本伸びていた──すなわち彼の両腕から伸びるカタールめいた剣が、前後の敵の腹を貫いていたのだ、自分に迫る剣よりも素早く。

 

 

 

 

 

 彼は意図せずの残心を修め敵の死体をずるりと引き摺り落せば、間違いなく完全な決着がついたと言えるだろう。

 

 誰もが敵わないと思われた存在が彼らを叩きのめすのにただの数十秒、また同じ時間でそれら全てを撃滅せしめた彼は、一体若菜たちにどう映ったのであろう。

 しかしじっと自らを見つめてくる彼らに気を取られる事は無い、目を向ける事もしない────もっと気取られることが彼の中で起こっていたのだ。

 

 それは誰かが呼んでいる。

 

『き、て……』

 

 彼はふと辺りを見渡して、そして若菜たちを見渡して。

 

『きて……』

 

 しかしその誰でもないだろう、まるで頭の中で問いかけてくる様はテレキネシスなのだろうかと、顔はないがきっとあったのなら皺くちゃにもなろうほどの強い疑問を持ち。

 さらに耳済ませば自分呼び寄せる声であると確信を深めていき。

 

『来て!』

(……誰だ)

 

 

 虚空に問いかけながろ瞬時に加速する体はまるで自分ではないように思えた。

 最早背後の彼らを気に留めるような思いもなく、青い炎の軌跡を残して先も見えない暗闇を過ぎ去っていく。

 

 やがてただ残されたのは若菜たちばかり、見送る他などない満身創痍の中、ただ彼女だけが壁によりかかるように立ち上がった。

 

「……私たちって」

 

 

 

「皆さんご無事ですか!?」

 

 

 

 彼らはボロくずになった体を起こす気力も無く、しかし何とか視線だけを見上げた。

 一方で赤十字のマークを付けたチームはこれほどまでやられたのかと思うとともに、幸運なのではないのかとも思い始めている。

 

 真っ赤に染まったシャツ、打撲を示す青紫の腹部、軽くとも確かな火傷の痕……これらは全て彼が来る前に負った傷だが、簡易的な処置で治らないのは明らか。

 

 だから彼らは感謝をしていた、確かにこの場所で生き残る事が出来たという幸運を目の前にして、ひたすらに感謝を祈りを辞める事はできなかった。

 

 そこにいる『白露若菜(しらつゆわかな)』一人だけは違う。

 

 彼と同じように立てる勇気も度胸もなくて、ただ一人戦いに赴く何者かを見送る事しか出来なかった。

 この者達は彼が()であるという事は解りもしない、しかし性別も敵味方も全く関係ない。

 

 ただひたすらに悔しさに打ちのめされて、ただひたすらに恥ずかしさに耐え忍ばざるを得なかったのだ。

 ただひたすらに……。

 

 

 

 かくして『大隆起時代』における大事件は、ほんの一瞬とも思えるほどに終わりを告げたのだった。

 ただ風雲急を告げるとは誰が言ったのか、本当にそれで終わりなのかという疑念は当然誰の心にも残った。

 

 流石に杞憂で考えるべくもあるまいと楽観的にとらえる者もいた、実際それだけで何が変わるのだろうという冷静で臆病な判断を下した者もいた。

 

 

 

 

 

 しかし懸念を証左するように、次の大事件はそう遠くない時期に再び起こってしまったのだ……。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 僕は怒っていた、とてつもなく怒っていた! 

 リビングをひたすらずんずん歩いていって、今度こそ僕は怒らなきゃいけないことと思った! 

 

「お姉ちゃん!!」

 

 お姉ちゃんなら助けられるだろうと、本当に他の人も呼んでたのにどうしていかなかったんだって、とても聞かなきゃいけない。

 

「いるっ……」

 

 だけどちょうど湯上がりだったお姉ちゃんはいつもみたいにヘラヘラしてたりちゃらんぽらんしてなかったし、むしろ一杯真剣なことを考えてるみたいで、僕はすっかり怒った感情が引っ込んでいっちゃった。

 

 いやいや違う、それでもずっと見過ごしてたじゃんか。

 もしもあのカッコいいロボットが助けに来てくれなかったら、若菜さんたちはきっと大怪我で病院でしばらく寝てなきゃならなかったんだぞ? 

 

「──ああ、カケルか」

「そう! アリスお姉ちゃんは何考えてるの?」

「……色々、難しい事もあるんだ」

 

 アリスお姉ちゃんは『魔皇』と呼ばれてる、あとそれの漢字は最近書けるようになった。

 お姉ちゃんは一年前突然僕のところに来て、僕が欲しいと言ったっきりずっとこの家に住んでいるんだ。

 

 今でも大人たちは何だか臆病になった気持ちばっかりなんだけど、今でもやっぱり駄目なものは駄目だって言ってやらなきゃいけないし、それに僕もお姉ちゃんも大人になってから色々知らないと苦労するって先生は言ってたんだから。

 

「でも助けても良かったじゃん?」

「そうだな」

 

 あれって僕は思った。

 こういう時っていつも何だかよくわからない事を言い出して、結局なんでも煙に巻くんだから、そういう事をまた言われるのかなと思ったのに。

 

 ライブ配信は消えちゃったけど誰かが残した動画の切り抜きを、何度もしかめっ面っぽい顔で見てるの、なんだか調子狂っちゃうな。

 でも物怖じなんてしないよ、僕は思い切って聞いてみた。

 

「あのロボットさ、やっぱりなにか知ってるの?」

「何も無いのだ。そう……だからなんだよカケル……」

 

 そう言って抱きしめてきた、またこういう事をすると難しい事を言い出すんだから……。

 

「なあカケル? 私達は一体どこから来たんだろうな?」

「……ダンジョンからでしょ?」

「ダンジョンはどうして生まれたのだ?」

「それは……知らないよ。アリスお姉ちゃんは知らないの」

 

 するととたんに悲しそうな顔をし始めて、もっと僕を強く抱きしめてくれた。

 

「いつかお前は言ってくれたな、私がどこから来たのであろうとも私は私。この地球に住むたった一つの命なんだと」

「……それ今でも恥ずかしいから止めてよ」

「本気だ、それにそんな言葉をこの動画を見返すたびに思い出すんだ」

 

 そうして見せてくれた動画の中には、昔のトクサツくらいでしか見たことないスゴイ爆発の中で、一生懸命でカッコよく戦ってるロボットの姿。

 

「この者は一体なんの為に戦っているのだろうな?」

「……僕は、きっとこの人は悪い人じゃないと思う。だって困ってる人をただ助けてどこかへ行っちゃったんだ、まるでヒーローみたいじゃないか!」

 

 そういったきり僕はお姉ちゃんの顔を見上げてみれば、ずっと真剣な目を僕だけに向けているんだ。

 僕には強くならないでほしいみたいなことを言ったときみたいに……。

 

「この身確かにイレギュラー以上の者でしかない、元を辿れははっきりとしたモンスターであろうがな。ではそれ以上の人間にふさわしい存在がダンジョンから現れたとしたら、その方らは一体どうしたものであろうか? イレギュラーと称して蓋をするかは、そうは問屋が卸すかどうかは……」

「また難しいこと言って!」

「……いいや奴ならば、そうだなきっと……?」

 

 あーあ、結局こうなるんだから。

 僕は黙って腕から飛び出したあと、おやつのプリンを食べに冷蔵庫まで走っていった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「ではごゆっくりどうぞ!」

 

 で、俺等クソッタレの二人は随分と騒がしいレストランまで送り込まれたもんだ。

 俺は辺鄙な場所だから良いつってんの、もうブルックリンはこりごりだって……。

 

「こんなファミレスまで取っ捕まえて何用だよ」

「貴様は用事も正体も知っているだろうのっぺらぼう」

 

 で、そのさらにクソッタレなやつが目の前にいるわけで。

 こんな口でこんなこと言っちゃ悪いが、コイツに逆立ちしたって勝てない、俺の知ってる奴は俺含めて誰もな。

 何でそんな奴かと知り合いかって決まってるだろ、マジでただの腐れ縁だよ。

 

「……暇つぶしなら他のやつを応れ」

「我は本気だ────まあ座れ」

「……クソが、タバコは」

「全席禁煙だ、何か頼め。今日は我の奢りだぞ?」

「ああチクショウ!! せっかくなら久々に良いもん食ってやる……で、何が条件だ?」

 

 しかもさっきから偉ぶって話しかけてくるのは、英語にしたって他の言語にしたってマジでこんな感じだ、ワオジャパニーズ万々歳。

 クソッたれ、マジで安アパートに帰りたい……。

 

「この飯代のみとはけして言わん、いや前金なら払っている」

吸血鬼のイレギュラー(自称公爵閣下)様、それほどの大仕事ならあなた一人出れば済むお話かと存じ上げますが?」

「舐めた口叩きおって……それが不安だからお前を呼んだのだ傭兵」

 

 コイツが? 

 ええ? 

 

「不安? あのガキンチョにいるおっかないババア相手取って永遠に殴り続けようとしてたイカれたお前がか?」

「勿論私も出る、つまり共同作戦だ。貴様にこのレストランの食材全部食われたところでなんのかゆみもない……分かった訂正しよう、元傭兵?」

 

 こんな事を言ってくれるって言うのは基本的に『テメエの金玉こっちは握ってんだ下手な真似したら潰すぞ』っていう合図以外ない。

 イレギュラーだ何だってカッコよく言ってるけど、コイツはどう見たって怪物だ、人の顔をして人と同じように考えやがる! 

 

「内容は?」

「あの配信は?」

「……まさかあのクソヒーロー気取りを」

「話は早い!」

「無理だ!!」

 

 コイツの目は節穴か? 

 いやその通りだ、誰が好き好んで何の関係もない奴をぶん殴ってこいって言ってんだよ、舐めんな。

 

「我を相手取って殺しかけた貴様が何をそんなに恐れるんだ、まさか我の心臓突き刺すことすら出来ないまま耄碌したとそんな馬鹿げた話は通用しないぞレベル78殿」

「お前、以上に、訳が分からないやつに何を持っていけば良いんだっつってんだ!! ……あー姉ちゃん!」

「その用意も我がする、出来れば生け捕りだ」

「頼むわ……なぁ、アレを狙ってるのが俺達だけだと思ってんのか、飯とイレギュラーの数だけが取り柄の国にどんだけエージェント入ってると思ってんだ!」

 

 元からスパイ天国の国だがもっとヤベエのが地上に這い出してからは、表向きというか一目見りゃ治安は故郷よりもいいなんてもんじゃないが、実態はジャパニーズヤクザよりヤバい連中が群れなして闊歩している有様だ。

 というか目の前にいる貴族気取りもその一人だ、何であんな仕事受けちまったんだろうなって言う悪夢を今でも見る。

 

「そう簡単に済む話の強さではないのはアレの見た通り、手を出すなんておお怖い怖い──すまないお嬢さん!」

「というか、何が目的だヴァンパイア! テメエ程の……指鳴らして呼ぶな」

「頼む! ……いや簡単な話なのだよジェイク? アレにはバッチリ裏がある、しかも君たちにとっても益にも害にもなるようなのがな」

 

 だがいつもふざけ散らかしてるクソお古大好き怪物がこんな感じで真剣な目をすると、大抵もっと酷いことになる。

 それは()()()()()だ。

 

「……晶石以上があると?」

「モンスターの新種あるいはイレギュラーならばそうやけにはならん……お前以上にな、或いは今だけ誰よりも顔を赤くして追っかけてる愉快な光景を見れるかもしれんぞ?」

「とんだB級映画だよ」

 

 このクソよりゴジラを出した方が良いぜ、まだポップコーンもチュロスも投げ飛ばさずに済む。

 何なら綺麗所のイレギュラー出したほうが良いかよ、一人そんなバカなやつがいるのは知ってるからな、ヤンクや妖精狂いのとこじゃなくたってジャパンは意外と広い。

 

「証拠としては、奴ら我々に換地できるようなテレパスを使用していた。問題はその使用者なのだが、見立てではすでにそのものは死んでいる。まあ死んでいるという言い方が、正しいかどうかは知らんが……既にこの世には決して探そうともいない」

「奴のとこに超能力なり鉛玉なりぶち込むたぁとんだ度胸知らず……じゃない?」

「或いは親しいモノだろうな、奴の? だとしたらあれらはどういう存在か、気にならないか!」

「……害ってそういうことかよ!」

 

 コイツの今言った事をマジで信じるとしたらアメコミ擬きのアイツの同類がいて、んでもってそいつをぶっ殺せるくらいヤバイ奴がいるんだろ。

 流石にイレギュラーって言ったって、ハナから全員モンスターなわけだ──つまり一回なりなんなり攻撃の意思を見せたことがあるはずだ。

 

 だけどアイツは一体そんなそぶりを見せたか、いいやアレは()()()()()()()()()で良いのか? 

 問題はそいつがぶん殴っていた正反対にいるみたいな連中とかだ。

 

「スタンピードは起きない、確率ではなく現象として────その概念が覆される様は、我としてはツマミの一つにしかならん、そんなもので料理人を斬ろうなどという馬鹿はせんよ」

「……あんな連中が地上にあがったら」

「死ぬ、漏れなく」

「戦力比較としてどう見る」

「雑兵だろう、あるいはスカウト。間違いなくハグレモノではない。我々のような、な」

 

 軍隊かよクソ! 

 ああ神様何でこういうやつやコイツの言ってるヤベー奴を地球上に生み出してしまったんだ、こういうのは間違ったためしなんかない、マジになって食って掛かるしかねえ……! 

 

「だとしたらこんなとこで食ってる……!!」

「腹が減っては戦はできぬ。さぁ料理が来たぞ、限定のTボーンステーキ! さぁ食べよう、我がイングランドと国王の為に」

「……俺はカレーの出だよ」

「なら神の給いし自由と平等と血に!」

 

 何勝手にワイン掲げてんだ、そいつは軟派野郎のクソ甘いやつだから嫌いなんだよ。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 ハロー! 

 私の名前はジェーン、ジェーン・サリッサ! 

 

 すっごく珍しい苗字でしょ、こう見えても昔アメリカに渡ってきてずっとこのニューヨークはブルックリンにずっと暮らしてるんだ、名家って程じゃないけど結構幸せだし恵まれてるしパパもママも大好き! (まあパパのお腹はちょっとアレだけど……)

 

 髪はブロンドでウェーブがけて白い肌で青い瞳、皆多様性とかいうけどその前に自分を愛さなくちゃいけないよね、自分に優しくできる人が他人にだって優しくできるっていうのがモットー! 

 そこにカーストも運動も関係ないわ、嫌な奴ならクインビーだって噛みついて、良い奴ならナードだってハグ&キスよ? 

 

 そしてなんたって私はアメリカでも有数のダンジョンランカー、レベルは何と70! 

 もうほとんどのアメリカのダンジョンに潜ってモンスターをぶっ飛ばせるくらい強いっていう証明なのよ、まあもうちょっと上にいるウエスタンのお爺ちゃんたちにはかないっこないけどね。

 13とかイカしてないギャング一人でぶん殴ってくるなんて、スーパーマンもビックリよ、一体あのカウボーイたちどんな強さしてるのかしら? 

 

 とにかく私はそんな生まれ育ったアメリカから遥か日本へ向って行ってる最中なわけ。

 別に私がスーパーウーマン一歩手前なんて言われても、パツパツのスーツ着てマント背負って飛べるわけじゃないし、検疫とかめちゃくちゃめんどくさいから当然飛行機なんだけど。

 

 何でかっていうと私の親友が大変な目に遭ったからって、パソコンとダンジョン大好き人間モーン(ニックネームね)が教えてくれたの! 

 その子の名前はワカナ・シラツユ、とってもカッコよくてジョックも蹴とばしちゃいそうな女の子、彼女が何とダンジョンで死んじゃう寸前だったんだって! 

 でもなんと白馬の王子様……じゃなくて、真っ白なトランスフォーマーみたいなのが、ボカスカやっつけちゃったものだから私の開拓者としての血も疼いちゃう! 

 

 そいつは一体誰なのって言うのを知るために、んでもってそいつと戦って友達を傷つけたへんてこりんな連中を、私だってぶん殴ってやるために。

 このホッケースティックと特注シューズと────おまけに可愛くデコってカラフルに染め上げたオキニのスーパー特注なグロック26で単身乗り込んだってワケ! 

 

 

 

 

 

 

「すぐにお通しするわけにはいきません」

「何言ってるの、私はあのワカナちゃんの友達だし許可証だってもってるわ。良い事? あんまり時間を掛け過ぎるとぶん殴ったりはしない代わりに、この張りぼてみたいなゲートをスケートボードで飛び越えてあっちょっと待って入れさせてよどこ触ってんのスケベヘンタイ!! 私は16なのよ!!」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

『目覚めるのです』

 

『彼らもまた目覚め始め』

 

『緑と青と赤とを焼くでしょう』

 

『七つの剣たちよ』

 

『白き剣に続くのです』

 

 

 

 

 

 




他にも色んな奴が動いたり目覚めたりしてるけどとりあえずここまで。
次回も宜しく
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。