朝の光が部屋を半分以上満たされた時、私は目を覚ました。
ジリリと鳴り響く目覚まし時計はさっさと止めてしまって欠伸をしながら布団から這い出た。
自分の部屋に備え付けてある鏡でボサボサの自分を見て手で軽く直すのは程々に、その近くに立てかけてある写真を手に取る。
起きた時にその写真を見るのが私のルーティンの様なものだった。
写真には三人いて、1人が橙色の外ハネのあるセミロングの私、渋谷かのんと白髪のお団子が横に二つある私の幼馴染、嵐千砂都。そして、もう1人の幼馴染の黒髪の爽やかそうな髪型とか反対に気だるそうな目をしながら写っている幼馴染の凪。
私達三人は、完璧と言っていい程関係を保ってきていた。
しかし、私達二人が選んだ高校は女子校。彼は男であり、離れることでヒビなく保ってきていた関係に傷が入ると思っていたけれど、廃校対策やらなんならで一緒の学校に通う事が出来ている。
顔を洗い、寝ぐせを直し制服に着替え、薄くメイクをして下に降り、パンをカフェオレで流しこむ様に食べた。
母親から「行ってらっしゃい」と見送られペットのまんまるにも挨拶をして、玄関近くの鏡で念入りに前髪を確認してから家を出る。
「おはよう!かのんちゃん!」
「うん、おはよう」
玄関先で二人が待っていて、3人で学校に行く。これは遺伝子に紐づけられたみたいに小さい頃から同じだった。
私は彼の横顔を盗み見る様にしていると、その視線に気づいたようにこちらに顔を向ける。
「なんかあった?」
「別に?おはようってことだけ」
「ん、おはよ、かのん」
ただ挨拶をした。それだけで私の心臓はドキドキとしていた。落ち着かせるように息を吐く。
ここ最近で気づいたことがある。
私は彼の事が好きだ。
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きっかけは恋愛小説みたいに衝撃的な出会いがあった訳でもないし、体育館倉庫に閉じ込められて何かあった。という訳でもない。
ただゆっくり木が根を張るみたいに、いつの間にか形作られていた。
昼休みにショート動画やいかにも怪しげな本に書いてある脈アリかも!?という動画やコラムをつい気になってしまって見ているのを思うと、私は立派に恋をしているのだと思った。
「かのんちゃん、何見てるの?」
集中して見すぎてしまったらしい。職員室から帰ってきたちーちゃんが近くにいるのに気づかなかった。
私は急いで、スクールアイドル用のアプリに変えた。
「あー、ちょっとランキング下がってるね。もっと頑張らないと」
「あー、うん、ソウダネ……」
脈アリサインとかなくて落ち込んでいた。とは言えなかった。
そもそもとして、目の前の幼馴染はどう思っているのだろうか。勿論悪くは思っていないだろうが、もし、もし、ちーちゃんも好きなら……と。
「かのんちゃん、そういえばさ」
「何どうしたの?」
「今日ちょっと練習早めに抜けるね。ダンス部に顔出さないと行けなくなって」
「あーうん、分かった。皆には伝えておく」
ちーちゃんにはきっと恋愛感情はない。と自分の中で結論づける。
そうでもしないと、私がちーちゃんに勝つなんて無理だろうから。
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「かのん」
「何?」
「どうしてそんなに僕を睨んでいるの。コンタクトでも無くした?」
「別に?」
「僕、何かした?したのなら謝るけれど。」
「何もしてない。ただ睨みつけたい気分だったの」
「ヤンキーだよ、それ」
じっと私は、凪を見つめる。
何で"こいつの事を私が。"とは思う。
でも確かにぃ?顔は悪くないし、皆に優しい。人の心を察するのはちょっと、というか大分鈍い所もあるけれど、こっちが悩んでいるのを見ると、犬の様な嗅覚で察して助けてくれる。
それが私であろうと、なかろうと。
「ヤンキーじゃない」
恋する乙女にヤンキーなんて。確かにガンをつけていたのは悪いとは思うけれど。
「でも目つきはそれくらい悪かった、マジ怖かったもん。チビりそう」
そう言ってケラケラ笑う凪の足を踏んずけた。
"いてぇ!"と叫んでいるけれど、君の方が悪いんだから。
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放課後、私達は学校の屋上でダンス練習に励んでいる。その様子を彼は何も言うことも無くボッーと見ていた。
マネージャーとして勧誘したはいいものの、スクールアイドルやダンス、歌の知識がある訳でもなくただ私が一緒にいたいといのが理由だったりする。
勿論本人にはパシリがいた方が便利だからとは言っているが。
皆とも仲は良好で、私達以外にも四季ちゃん、きな子ちゃん、夏美ちゃん、メイちゃんとも仲良く話している姿を見かけるし一緒に帰っているのも見ている。後は動画のアシスタントなんかもやっているようである。
おせっかいというか器用というか……
「どうだった?」
汗を拭きながら私はそう問いかけた。
「だから僕に聞いても詳しい事は言えないよ、それこそ千砂都とかに聞くといいんじゃないかな」
「でも素人目線からでもいいから聞きたいの。今日ちーちゃんいないし」
「うん、僕から見ては良かったと思う。そのくらいしか言えないけれど」
「ありがと」
疲れていたけれど、少しだけ取れたような気もする。これでまた頑張れそうだ。私はにやけそうな顔を抑えるので必死だった。
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「そろそろ帰ろ」
練習の後片付けに勤しんでいた彼に私はそう声を掛ける。彼は携帯を確認してから、いいよ。と返した。
「ごめんね、いっつも後片付けさせちゃって」
「別に大丈夫だよ、僕にはこんなことしか出来ないから」
「そんな事ないよ!本当に助かってるんだから」
私は必死に否定をする。
私達に取って、彼はとてもつもなく大きなものになっている。私なんて更に。
今ですら、彼と2人きり。というのを再確認すると、そのまま風船みたいに膨らんで弾けてしまいそうだった。心音が聞こえていないだろうか。そればかりが思い浮かんだ。
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彼を好きだと、一度認識をしてしまうと今までは行えていた事が出来なくなってしまう。
前はどんな話をしていた?私はどんな風に接していた?全てが分からなくなって、それらが胸の鼓動に変換されていた。
隣を歩く彼は、いつの間にか歩道側を歩いているし、歩幅だってさり気なく合わせてくれている。"十数年"一緒の幼馴染でも知らない女の子でもきっと彼はやるのだろう。
あぁ、やっぱりそういう優しい所が「好きだなぁ。」
「え?何が?」
声に出してしまっていたようだ。心臓は生きてて一番ドクンドクンとなっていて、私を急かす様に身体に血を流し顔が赤くなる。
「いやっ!あの…その……」
「その……?」
テンパっている私の姿を訝しむ様に私の顔を見る。
何とか誤魔化さないと……!
けれど、私は一つ思った。
これはチャンスなのではないか。
あの歌いたくても人前で歌えなかった時の事を思い出す。あの時よりはまだマシだ。口は動く、目は朧気ながら捉えている。後は勇気だけだ。
「君の事が好き……なの」
鳩が豆鉄砲でも食らったかの様に彼は驚いていた。
そりゃそうだろう。そんな素振りはなかったのだから。(私が無意識にしていなければだが)
「本当に?」
空中に書いている文字を読み取るみたいに彼はじっと見ていた。それは多義的で難解な文章の様だった。
「うん、気づいたのは最近なんだけど。てか早く返事ちょうだい」
「そうだね、確かにそうだ。」
暫く悩む様子を見せていたが、彼はそっと口を開いた。
このシリーズは
どうやら好きな人がいるらしい(済)
幼馴染に彼氏が出来たらしい
先輩に彼女が出来たらしい
の三本でお送りします。(題名、順番、本数変更する場合あり)
三本目の時に誰にするかとかは全く決めてません。
新1年生はアニメまだだからねぇ……