はぁ〜…今日もいい天気☆
と、冗談はさておき。いや、天気がいいのは本当だ、草原に寝っ転がって日向ぼっこしながら昼寝をしたくなるくらいにいい天気だ。
サンドウィッチを用意して、食後にコーヒーを飲んで、横になりながらお喋りしてお昼寝する。うん、素晴らしい1日だね。
まぁそんな相手いないんですけど、わはは。
「……ねぇスズちゃん。ちょっと言いにくいんだけどさ」
「どうかしましたかミカ様」
「ちょっとは一緒にやろうとか、手伝ってあげようって気持ちとか、ないの?」
「そこに無ければ無いですねぇ…」
僕は今、草むしりに勤しむミカ様を眺めながら僕がベンチでくつろいでいた。労働に励む可愛い女の子を眺めながら飲むアイスコーヒーは最高だねぇ。甘いお菓子があればもっと最高だった。
ジャージ姿でも髪型を変えるなどして最大限オシャレをするミカ様は大変可愛らしいと思う。顔もいいし。
僕なんて最近は髪を結ぶのすら面倒で、今日も軽くブラシで梳かしただけだ。
なんでこんなことになったのか。
まぁ僕が暴れて、とっ捕まったのが原因なのだが問題はその後。
ミカ様のボランティア活動に付き添うように命じられたのだ。
……なんでさ?
確かにゲヘナ自治区付近で必要以上に不良を痛めつけたし、道路爆発させたし、血でお化粧して散歩と洒落込んだけど、それだけだ。他校の生徒もボコった気がするけどそれはあっちが先に撃ってきたから。
撃たれたら怖くなってやり返しちゃうでしょうが普通。
それになんなら僕より普段のツルギ先輩のがよっぽど暴れてる。
なんだ?政治的なアレがソレしてとばっちり喰らった?それともミカ様1人じゃ不安だし、罰としてお守りしろって?はたまたナギサ様が僕とミカ様仲直りさせようとしてる?あるいはミカ様のメンタルケアしろって?
かぁ〜っ、たまんないねぇ。
周りへのケジメとして何かしらの罰、僕が反省してるってポーズが必要なのはわかるけどさぁ。優しくしてあげてもす〜ぐコレだよ。
ティーパーティーの部屋の目の前でコーヒーパーティーでもしてやろうかしら。
はぁ……チッ、反省してま〜す。…これでいい?ダメ?はいはいわかってるよ。
まったく。そこまでするんなら、まず正実から僕を叩き出してバカな一般生徒が暴れたって体にすればいいのに。
というか……あれ?
「…………あれ?僕、なんで正実クビになってないんだ…?」
「えっ、そこから?何も聞いてないの?」
「ウェーブキャットさんが聞いてくれてたけど、猫だからよくわからなかったって」
「スズちゃんって本当はお馬鹿さんだったんだ…」
「勉強もダジャレもできる天才さんなんですけど?」
「じゃあ、なんか言ってみてよ」
「……ミカ様特製ハンバーグ…豆腐で
「わーお。成立はしてるけど面白みは全くないじゃんね」
「ハスミ先輩のダイエットみたいだって?」
「なんのこと?」
なんのことだろうね?
そしてなんとお嬢様は豆腐ハンバーグを知らないみたいだし、どうやら僕のダジャレはティーパーティーとは相性が悪いらしい。いや、ミカ様とナギサ様は幼馴染だから、そのあたりの感性が似ているだけかもしれない。もしくはティーパーティーの感性が冷え切ってる。
「ティーパーティーに2連敗、か……セイア様なら愛想笑いくらいしてくれるかな」
仮にセイア様が笑ってくれても1勝2敗で負けじゃん。やってらんな。
「ナギちゃんにもダジャレ披露したの?」
「ちょっとキャットなって、不良をボコボコにしちゃったニャン」
今はウェーブキャットさんがいないので猫の手をつくってポーズを取りながら激ウマギャグを披露した。
ミカ様はポカンとした顔を浮かべている、幼馴染揃って同じような顔しやがってからに。
「……スズちゃんも、そんな可愛い感じのことするんだね。ちょっとビックリかも」
面白さへの言及がない…?嘘だろ、この激ウマギャグを前に?
「……ミカ様の言葉を借りると、ミカ様が僕のそういう側面しか知らないだけ、ってやつですよ」
ちょっとだけ意地悪した。
ダジャレをガンスルーした仕返しだ。前に意地悪なこと言ってきた分も、ほんの少し含めてるけど。
「そう言われると耳が痛いなぁ……ねぇ、スズちゃん」
「ダジャレはあと一回までですよ。紅茶に氷入れすぎちゃった、つめ──」
「そうじゃなくって、さ。前は……酷いこと言ってごめんね。スズちゃんを、突き放すようなこと言った。巻き込みたくなかったって言っても言い訳にしかならないけど、ごめんなさい」
「………………ティ〜……いいですよ別に。ミカ様のことも、ナギサ様のことも、僕が勝手に知った気になって、暴走しただけですから。僕が勝手に、2人と友達だと思ってただけ」
「……ほんとに、ごめん。そこまでスズちゃんを追い詰めるなんて、思ってなかった…私は、まだ!スズちゃんと友達でいたい……また、お友達になりたい…」
「………お喋りしてる暇があったら、さっさと終わらせた方がいいんじゃないですかね」
また意地悪なことを言った。
今更何か言われても、もう何を信じるべきなのかわからない。だからエデン条約を巡って起きたことを話したくなくて無理矢理話題を切った。
「…一応スズちゃんもやらなきゃいけないんだよ?」
「えぇ……なら、いっそ僕の剣でここらへん全部燃やし、て……」
「…スズちゃん?」
「──んや、なんでもありませんでした。わはは」
改めて剣が折れたことを思い出す。
僕の目覚めた時、剣はすぐそばに置かれていた。
慌てて鞘から抜いて見たけど、まぁ見事に折れていた。根本からポッキリ。折れた刀身は残ってないのか聞いたら、バッキバキのパリッパリのパラッパラになった鉄屑が入った袋を申し訳なさそうに渡された。
こうはならんやろ、ってくらいベッキベキのベキだった。
長年連れ添った相棒だからちゃんと供養してあげようと思ったがその矢先に牢屋にぶち込まれたので、そのままだ。
流石にゴミと間違われて捨てられていないことを祈りたい。
「はぁ……」
ため息を吐いて、ベンチの背もたれに体を預け天を仰ぐ。
あの日から全身に薄皮一枚張ったみたいにどうも体も頭もぼんやりする。霧の中にいるような、分厚い雲の下で寝転んでるような。
頭が思うように働かなくてイライラする感じが、ずっと。
「……ふ〜…疲れたし、そろそろ私も休憩しよっかな!何飲んでるの?ちょっと欲しいな〜☆なんて〜…」
……それくらいならいいか。なんて思いながら、ストロー付きのタンブラーをミカ様に手渡す。ミカ様は「ありがとっ」と顔を綻ばせストローに口をつけた。
…相変わらず、腹が立つくらいにいい天気だ。
「うえ、苦ぁっ!これコーヒーじゃん…」
「は?ん??」
「だってぇ…普通アイスティーかと思うじゃん。氷入れすぎて冷ティ〜、とか言ってたし…」
この人わかってスルーしてやがった。
それが人から飲み物もらった態度か…?そうかそうか、つまり君はそう言うやつだったんだな。
「は?つまんな。急に何言い出してるんです?」
「スズちゃんが言ったんじゃん!!」
「ブラックコーヒーも飲めないお子ちゃまが…」
「紅茶の良し悪しのわからないスズちゃんに言われたくないじゃんね?」
「もう我慢ならん。湖で紅茶作って蛇口からシャワーまで全部紅茶にしてやる!!!」
「ち、ちょっと楽しそうだけど、させないからね!?」
この前港で作ろうとした時に買った大量の茶葉が正実の給湯室にまだあるんだからな!!?
「僕はやるぞ!やるぞ僕は!!」
正実の教室に向かおうとする僕、それを割と本気で止めるミカ様。*1
このあと2人ともナギサ様にめちゃくちゃ怒られた。
ハイハイ、反省してま〜す。
黒騎士の暴走を魔女が止めた…?他から見たらクッソややこしいことしてるよこの人たち。
ミカもミカでかなり不安定な時期ですからね。
打算で隣にいて欲しいと思ったのか、それとも本心からまた友達になりたいと思ったのか、依存先が欲しいだけなのか。
スズランは…まぁ、日向ぼっこできて気持ちよかったんじゃないかな。