正義…?そこに無ければ無いですね   作:うにうにうにう。

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予想より長くなったので分割したりしてました。


えっ、そこに無ければ無いんじゃないですかね…わかんないけど「前」

心が足踏みを続けてて、ずっと休まらない。

私たちがスズラン先輩を撃ってしまった日から、ずっとそうだった。

笑顔が素敵で、優しくて、強くて、みんなの憧れの先輩。

優しく頭を撫でてくれるのが好きだった、暖かくハグしてくれるのが好きだった。みんな先輩が大好きだった。

 

そんな優しい先輩しか知らなかったから、倒れて動かない不良の中心に立っている、猫背で血塗れの人を見たときには、作戦行動時のツルギ先輩かと錯覚した。そしてソレに明確な敵意を向けられ、恐怖に駆られて引き金を引いた。

部隊の誰が最初に、なんて誰も覚えてない。みんな同罪だ。

ツルギ先輩の静止の声で我に帰ったとき目にしたのは、涙を流すスズラン先輩の姿だった。

その後すぐにツルギ先輩の命令で退却。

大爆発の余波で吹き飛ばされたが誰も怪我はなかった。だけどその日以来先輩と会えていない。

勾留期間中の面会は一部の生徒にしか許されなかったからだ。

 

涙を流す先輩の顔が頭から離れない。

謝りたい。会いたい。また頭を撫でて欲しい。また笑顔を見せて欲しい。

日が経つに連れてその思いは大きくなるばかりだった。

 

 

 

 

今日もいつも通り正義実現委員会の訓練が終わった。

いつもと違うのは、先輩からのスキンシップと労いの言葉が無いことだけ。

各隊それぞれ明日の業務を確認の後に解散、というのがいつもの流れだけど今日は訓練終了後、全員に待機命令が出ていた。

何があったんだろうと教室内が少しざわついているが、ツルギ先輩とハスミ先輩が前に立つとすぐに静かになった。

数秒の静寂の後、ハスミ先輩が口を開く。

 

「明日、スズランの勾留が終わり帰ってきます」

 

俯けていた顔をバッと上げ、同じ部隊の子と顔を見合わせた。

スズラン先輩が帰ってくる。

やっと、やっと会える。

 

「ただ、今のスズランは頑張りすぎて…いえ、私たちが頑張らせすぎたせいで、ひどく疲れてしまっています。前のように、一緒に戦えないかもしれません」

 

それを聞いて胸が締め付けられた。

今までの疲れの蓄積もあったかもしれない。でも、それを壊してしまったのは…私たちだ。

会わない方が良いのかもしれない、お前たちのせいだと罵られるかもしれない。でも、絶対に会いたい。会って謝りたい。

 

「責任は全て、ちゃんとスズランを見ていなかった私たち3年生にあります。彼女が前と少し変わっていても、どうか優しく迎え入れてあげてください。お願いします」

 

そう言って、先輩たちが頭を下げる。

その言葉に反対する部員は1人たりともいなかった。

それだけ慕われているのだ。

気づけば先輩が帰ってくる嬉しさと、拒絶されるかもしれない恐怖とで体が震えていた。それは私だけではなかったようで、同じ部隊の子とお互いに抱きしめあった。スズラン先輩が優しくそうしてくれたように。

 

 

 

 

 

 

翌日、朝から正実の教室に多くの部員が集まっていた。

なんて話しかけよう、どう謝ろう、何時ごろ帰ってくるんだろう、一緒に買い物に行きたい、また先輩のコーヒーが飲みたい、不安を紛らわせるように色んなことを話し込んだ。

だけど、待てど暮らせどスズラン先輩は帰ってこなかった。

昼に差し掛かった頃、先輩たちがティーパーティーに連絡をして確認を取るも、部屋にはもういないと返答が帰ってきた。

ツルギ先輩とハスミ先輩が無言で目を合わせ、間も無くスズラン先輩の捜索が始まった。

 

正義実現委員会総員による、異例の捜索活動。

ものの数時間で学園内全域の捜索を終えたが見つからず、全員に焦りが見え始める。引き続き学園内を捜索する部隊と、学園外の自治区を捜索する部隊に別れ再び捜索が始まる。

もはやみんなで帰りを待つなんて雰囲気は霧散し、全員で無事を祈りながら必死に足を動かし、目撃情報を聞き込んで回っていた。

 

スズランの容姿は、とても目立つ。

整った顔立ちに凛とした立ち姿。黒い制服が際立たせる綺麗な黄金色の髪に白く大きな翼。極め付けは腰に佩いた剣。ここキヴォトスで剣を好んで持つ人間など探してもそう居ない。

それにもかかわらず、ここまで探して目撃情報は一つや二つ。それも開店時間のすぐ後にショッピングセンターで買い物をしたことくらいしかわかっていない。

不自然なほど痕跡が少なすぎる。

 

 

雲がだんだんと厚みを増していき、日が暮れ始めたころに一つの郵便物が正義実現委員会まで届いた。

宛先は正義実現委員会の寮、そして宛名も送り主も、溝口スズラン。

誰がこれを?イタズラにしてはタイミングが悪すぎるし、悪質だ。

もしスズランが帰って来た時の為にと正実の教室に残っていたメンバーが、恐る恐る届けられた薄い箱を開ける。

 

「……嘘…」

 

か細い声で、誰かがそう言った。

入っていたのは、黒と赤を基調とした制服だった。

嘘だと願いながら制服を取り出し、その内側を確認した。

そこにはアルファベットで綴られた、スズランの名前の刺繍があった。

 

一番最初に冷静さを取り戻した者がツルギとハスミの2人へ連絡を繋げた。いきなり全体にこのことを伝えれば要らぬ憶測を呼びかねない。

 

「こ、こちら正実本部。ツルギさん、応答願います…」

 

『…こちらツルギ。何か進展があったか?』

 

「はい。いや、進展というか…先ほど正実にスズランさん宛の荷物が届きました。その…中にスズランさんの制服が……丁寧に畳まれていたことも考えると、おそらく自分で……」

 

そう告げた瞬間、本部の遠方から破壊音が聞こえた。

ツルギに代わりハスミが返答をする。

 

「……了解。他の者にはまだ伝えないように。制服は…他の者に見つからないよう隠しておいてください。以上」

 

『了解…通信終了します』

 

本部との通信を切断したハスミは、繋がったままのツルギとの映像通信越しに様子を見る。

通信を終えたツルギは、力なく地面を見つめていた。

好戦的で暴力的、後のことは壊してから考えるトリニティの戦略兵器。その姿は今はどこにも無かった。

 

『私は…どうすればいい。アレが、スズランの答えなのなら……』

 

「…………直接聞かないことには、わかりません。……直に、雨が降ります。そうなれば、どこかで雨宿りするはずです。スズランは雨が好きではありませんから」

「検問を敷いて、部隊を再編成した後に、私たちも一度休憩を取りましょう」

 

『……すまない。頼んだ』

 

通信が切られた。

あそこまで弱っているツルギは、ハスミでもほとんど見たことがなかった。ハスミとて気が落ちていないわけではない。何もわかってやれなかったダメな先輩でもスズランが可愛い後輩であることに変わりはない。そんな後輩が失踪し、安否もわからないのだから。

しかし組織の指揮を取る立場である以上、止まっていられないのも事実だ。

全体へ指示を出し、検問の設置の指揮は後輩のイチカに引き継ぎ。その間に自分はティーパーティへ報告を済まさなければならなかった。

事の成り行きを把握したティーパーティーが明日から捜索に加わってくれることは僥倖だったが、精神的な疲労が酷い。

ようやく一息つき仮眠を終えた頃には、朝日が登り始めていた。




ティーパーティー→スズラン大爆発血塗れ散歩で各所からスズランが突っつかれないように色々やってた。立場の弱くなったティーパーティーの管轄にいつまでも置くわけにもいかず、正実に返したら失踪してた。紅茶が止まらない。

スズランの部隊の隊員→スズラン強火担の1〜2年。
優秀だけど訓練以外は甘やかされてる(特に1年)、あの日ツルギに着いていたのは1年生。

ス隊1年→顔が良くて距離感クソ近い先輩に脳を焼かれた。お姉様って呼びたいけど引かれるかな、みたいなことを全員考えてる。ストレスで何人か吐いててもおかしくない。

本部にいたモブ→3年生で構成された班。制服送った理由知ったら流石にキレていい。
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