ひとまず更新したのでしばらくは影の地に旅立ってきます。
待ってろミケラァ
気づけば、もう雨が上がっていた。
もう一雨降りそうな空模様だが、ずっとここにいたら決心が鈍ってしまいそうだから、そろそろ行かないといけない。
そう思い腰を上げようとするが、ふとある考えが頭をよぎる。
このまま何もせず出ていっていいのか、と。
急に押しかけて場所を分けてくれたに止まらず、勝手に話して勝手に泣いて寝るというめちゃくちゃ迷惑なことをしてしまった僕に手を差し伸べてくれたのだ。礼の一つも無いのは人間としてダメなのではないか?
自分がどうしようもないヤツなのはわかってるが、最低限人間でいたい。
そう思い立った僕は、スクワッドの皆さんにもうしばらくここに留まるか確認した後にコンビニへと足を運んだ。
ひとまず食料だろうと思い、おにぎりやパンをざっと見て回るが自分に食欲が無いのでどれを選べばいいかよくわからない。ちゃんと好みを聞いておけばよかった。
とりあえず後輩達がよく食べていた気がする物をいくつか選び、他に保存の効く栄養食品を多めにカゴに突っ込んだ。
あとは水と…雑誌を燃やしちゃったって言ってたし、適当な雑誌をひとつ。ファッション誌とかでいいのかな。
「あとアイスコーヒーのSを一つ」
「かしこまりました。お会計は──」
会計を済ませ、商品といつもの癖で注文してしまったコーヒーのカップを受け取る。
他に荷物があるとコーヒーと荷物で両手が塞がってしまうので、正直あまり好ましい状態ではないが買ってしまったものは仕方ない。
蓋を剥がし、マシンにセットしてボタンを押す。
コーヒーが出来上がるまでの香りを楽しんでいると、入り口の自動ドアが開く音がした。なんとなくそちらをチラッと見てみると、そこには黒と赤を基調としたとても見慣れた制服の見慣れた後輩がいた。
「あっ」
「え、あっ」
沈黙。一瞬だったか、数秒続いたかの沈黙の後、両者動き出す。
「い、いたーーー!!!?」
「あー……コーヒーできるまで待って?ついでに人違いです」
僕の弁明も虚しく、後輩ちゃんは無線機で通信を始めてしまう。
「緊急連絡!目標発見!繰り返す!目標発見!場所は×区○○通り、交差点付近のコンビニ!至急応援を!!」
「あー…いやあの、あれ、ほら、アレよ。ただのコーヒー好きなお姉さんだから、人違いです。とりあえずコーヒーできるまで待ってって」
「コーヒー好きのお姉様ならスズラン先輩です!!確保ーっ!」
コーヒーマシンの前で待っている僕を捕まえようと両手を広げて迫ってくるが、片手で頬をムギュッと掴みその場で静止させる。
「今、コーヒー待ちだから、待って。言うの3回目」
「ふぁ、ふぁい…」
「ん、良い子。お菓子買ってあげるから、好きなの選んでおいで」
頬を離して頭をポンポンと撫でてあげる。
「え、いいんですか?ありがとうございます!」
ピーッ、とコーヒーの抽出が完了をマシンが教えてくれる。出来上がったコーヒーを手に取り、蓋をしてストローを刺す。後輩ちゃんがちゃんとお菓子を買えるように財布から500円ほど取り出してマシンのそばに置いた。
「……よし」
三十六計逃げるに如かず。ごめんね後輩ちゃん。
少しの申し訳なさを感じつつもコンビニから出ようと入り口に進んでギョッとした。既に多くの正義実現委員会が集まって入り口を包囲していたのだ。
「……動物園の動物ってこんな気持ちかぁ」
園内ナンバーワンの座は頂いてしまったな、なんて現実逃避もそこそこに。とりあえず落ち着こうとストローでカップの氷をかき混ぜながらイートインコーナーの椅子に座る。逆に外にいる正実の面々をアイスコーヒー片手に観察してやろう。
……飲んでる場合か?
こうして呑気にコーヒー飲んでる間にも続々と応援が集まってる感じがする。今のところ
この無駄に大きい翼で飛べればよかったのだけど、コレではせいぜい滑空が限度。とはいえ地上で無理矢理突破したら怪我をさせてしまうかもしれない。
……うん、まずは高いところだ。
最悪滑空して距離を稼げるし、位置はバレやすいかもしれないけど障害物が少ない。流石に撃ってこないだろうから狙撃を心配する必要もないし、仮に狙撃手がいても正実で僕を狙撃できるのはハスミ先輩くらいだし。
コーヒーを飲み干し、カップをゴミ箱に捨てて軽く伸びをする。
体を動かすのは久々だけど、ちゃんと動いてくれるかな。
「先輩!私がお菓子を選んでる間に逃げようなんて、騙されませんからね!!」
「やべ。また今度買ってあげるから、今は勘弁ね」
後輩ちゃんが戻ってきてしまったので、急いでコンビニを出て大きく身を屈める。外のみんなが僕に群がるより先に大きく跳び上がり、コンビニの看板の縁を掴んだ勢いのまま身を翻し、看板の上に着地する。
「待ってください先輩!」
「先輩帰ってきてー!」
「なでなでしろー!」
「謝らせてください!待って先輩!」
「みんな待ってますから、お願いです!」
……みんな
こんなの、なおさら
「……ごめんね」
小声でそう言い残し、ビルの壁を蹴りながら屋上へと逃げた。
僕はもう戦いたくないんだ。正解がわからない、間違えたくない。
僕がいても何の役にも立たないんだから、放っておいてほしい。
そのまま遠くへ、ビルからビルへ跳び移りながらスクワッドの皆さんがいた方面へと向かう。
その道中、正実とティーパーティが大通りから小道まで自治区の外へ続く道に検問を敷いているのも見えた。平日だというのに、街中に生徒がたくさんいる。
コレ全部僕を捕まえる為ってマジ?本気でネズミ1匹通さないレベルの布陣じゃん。
なんでここまでして僕を捕まえたいんだ。
人の声が聞こえなくなって来た頃、周囲に人がいないか確認してからひっそりと地上に降り立つ。
そのまま路地裏に入り、廃ビルへと向かう。
そして、角を曲がった先にそれはいた。
建物の影に覆われたこの場でも一際黒く、異質な存在だった。
仕立ての良い黒のスーツを着た、長身の男。
異様なのはその頭部。
右目があると思われる位置は不気味に白く輝き、それを中心に全身に走る亀裂が釣り上がった笑みを浮かべているようで気味が悪い。
そして何より、本能的な恐怖を感じた。
大人、それも先生とは真反対の。そしてそこら辺の小悪党でもない。
上がる息を抑え込み、荷物を捨て剣の柄に手をかける。
体の震えが強くなるが、無理やり強く柄を握り込む。
「ご無理をなさらず。争うつもりは毛頭ありません」
敵意を向けても、向こうはどこ吹く風。
本当に争う気はないのかもしれないが、それで警戒を解く理由にはならない。
「自己紹介が遅れました。私のことは黒服と、そうお呼びください。溝口スズランさん」
恭しく両手を広げ黒服と名乗った男は、好奇心に満ちた視線をこちらを向けていた。
みんなBAD好きね…
どうします?バッドエンドじゃなくて
B 僕が
A あの人に
D ドえら(ろ)い事される話
の略かもしれませんよ。
冗談はさておき、参考にさせていただきます。