正義…?そこに無ければ無いですね   作:うにうにうにう。

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聖堂爆破後、言われた通りにトリニティに戻って正実の指揮を取ってた世界。
トリニティ内での内乱やら混乱は原作より早く収まったけど、人の悪意や醜さにより触れてしまっている。


悪魔はだれだ。

スマホをポケットから取り出し、時間を確認する。

そろそろ時間だ。改めて身嗜みをチェックし、学園の正門前で姿勢を整えて待つ。

指定された時間より10分前に、その姿が見えた。

 

「お待ちしておりました。先生」

 

"あれ、スズラン?"

 

「はい、僕です。件の事件で学園内が少々騒がしくなっていますので、先生が万が一にでも迷われないよう(巻き込まれないよう)案内(護衛)を、とティーパーティーから仰せつかっています」

 

"ありがとう、じゃあエスコートしてもらおうかな?"

 

「えぇ、お任せを。ではご案内しますので、ご一緒にお越しください」

 

軽く雑談をしながら、ティーパーティーの区画の一室へ先生を案内する。護衛といってもここの区画で問題を起こすノータリンはいない。おそらくミカ様がいる牢に行く際の護衛だろう。今はあそこが一番騒がしい。

 

「中にはナギサ様、シスターフッドのサクラコ様、救護騎士団のミネ団長がいらしています。ナギサ様はご存知の通りですね。サクラコ様とミネ団長は……少々個性的ですが、まぁ先生ならば問題ないでしょう。では、僕は入り口でお待ちしております」

 

"あれ、スズランは中まで来てくれないの?"

 

「僕はただの一生徒ですので、恐れ多くてとても…申し訳ありません」

 

"そっか…じゃあ、また後でね"

 

「えぇ、いってらっしゃいませ。先生」

 

笑顔で先生を見送り、扉を背に姿勢を正して静かに待つ。

この区画は息が詰まる。一挙手一投足を観られているようで落ち着かない。昔は…僕がまだ一年生の頃はよかった。ナギサ様もミカ様もセイア様も、今ほど厳格な立場ではなかったから、楽しくお茶会をすることができた。今ならわかるが、ティーパーティーでもないのにホストと親しくしているのが気に食わない連中は多い。

ナギサ様たちの誘いに乗ってティーパーティーに所属していたら、常にこんな空気だったのかと思うと……まぁ、断って正解だったかもしれない。

政治だのなんだのもあまり好きじゃない。仮面の笑みを貼り付けて、本音を腹の底に隠し続けるのは…必要なことだとわかっているけど、気分のいいものではないから。

そしてシスターフッドも救護騎士団も、ティーパーティーが大きな失態を演じてから急に政に参加し始めた。3人いるはずのホストが実質1人、しかも信用は地に落ちてる。そんな状態で急に100%善意で助けに来たなんて、腹の底で何を考えてるか信用できない。

サクラコ様は、よくわからない。よくわからないが言動が胡散臭くて苦手だ。

そして、ミネ団長のことも正直苦手だ。

ミネが壊して騎士団が治す、なんて言われてるくらいで、救護のためなら救護対象を行動不能にするのも厭わない。本末転倒だが、早急に鎮圧した方が最終的な被害は少ないのでそれに関しては理解できなくもない。

ただ、そうと決めたら人の話を聞かない人間というのは厄介極まりない。信念が決して曲がらないのは素晴らしい美点だけど、いろいろと理解できない。

 

「……ふぅ」

 

ため息を吐くために吸った息を、そのまま吐き出す。

めんどくさい…早く帰りたい。

ナギサ様もナギサ様だ。ティーパーティーからの指名だったが絶対ナギサ様個人からの指名だ。護衛が僕である必要なんて無い、むしろ遠距離から攻撃されたら守りながら反撃のしようがない僕は護衛には不向きだ。

それに……僕からナギサ様に話すことは何も無い。補習授業部のみんながもう許したのだから、部外者の僕が口を挟む問題じゃない。口を挟めたとしても論理的なことは言えない、ただただ嫌で悲しかっただけだから。そんな幼稚な感情論など振りかざすものじゃない。

それに僕に実害があったわけじゃない。ナギサ様の冷酷な面を僕が知らなかっただけで、未だ心の整理が付かないのも僕だけの問題だ。

 

 

しばらくすると、部屋の中からサクラコ様とミネ団長が出てきた。

頭を下げ、背を見送る。

それから少しして、先生が扉から顔を出した。

 

"スズラン"

 

「ん、お疲れさまです先生。では次に…」

 

"ナギサが少し話したいから、中に来てくれないかって"

 

「……承知しました。失礼します」

 

"私は、外で待ってるからね"

 

面倒だなと思いつつ、顔に浮かべることなく一礼してから部屋の中へと足を踏み入れる。

中にはティーカップに口をつけるナギサ様がいた。表情はあまり優れていないし、前より痩せたようにも見える。

 

「お越しくださりありがとうございます、スズランさん。先生の案内も、お疲れさまです」

 

「恐れ入ります。して、僕に話とは」

 

「スズランさん…あなたにも、きちんと謝らせてください」

 

「……なんの事でしょうか」

 

「スズランさんが、コハルさんやヒフミさんを大切に思っていたのは知っていました。私の傲慢でなければ、私を慕っていてくれたことも…。わかっていたのに…私は、あなたからの信頼を踏み躙りました」

 

「…顔をお上げください、謝罪は不要です。全てはトリニティを守るため必要な事だったと理解しています」

 

「いいえ…人を信じることができなかった、私の不徳の致すところです。許してくださいとは、言えません。ですが─」

 

「ナギサ様、僕はこれっぽっちも気になどしていませんよ。まだ業務の途中ですので、お茶会にはお付き合いできませんが…何かあれば、またお呼び立てください」

 

意図的に笑顔を貼り付けてる自分に吐き気がした。

業務に戻ると告げて、引き止めるナギサ様を無視して部屋を後にする。案の定、次はミカ様のところへ行くと先生が言うが…まぁ、乗り気はしないが、仕事だから仕方がない。

 

 

 

 

 

牢屋のある建物に近づくに連れて、罵倒の声が聞こえてくる。

よく懲りもせず毎日毎日…

 

 

「セイア様を害そうとした裏切り者を引きずり出せ!」

「アリウスと手を組んでエデン条約を台無しにした罪人がティーパーティだなんて、許せません!」

「罪人には罰を!断罪を!」

 

「裏切り者には罰を!!私たちを騙した代償を!」

 

 

本当にウザったい。耳が腐りそうだ。

 

「チッ……あはは…暇そうで羨ましい限りですね。申し訳ありませんが、先に向かっていただけますか?アレを鎮めなければなりませんので」

 

"大丈夫?"

 

「えぇ、ご心配なく。仕事ですから」

 

先生が一言謝り離れたのを確認してから、剣を鞘ごとベルトから外し、杖をつくように勢いよく地面に叩きつける。地響きと共に地面にヒビが入り、注目がこちらに向いた。

 

「汝らの中、罪なき者、まず石をなげうて。トリニティの生徒で知らぬ方は……いらっしゃいませんね?」

 

そう言って人好きのする顔を浮かべれば、アレらは悔しそうに口をつぐむ。

お前たちは何の理由を以ってして、罪を裁こうとしてるんだ。

正義の徒でも気取っているのか。

 

 

「どうか、怒りを収めてください。学園にはシャーレの先生もいらしています。トリニティの品位を落とさぬよう、学園の名に恥じぬ行動を何卒」

 

 

そう宣い、恭しく頭を下げる。

醜い、穢らわしい、吐き気を催す。

あんな醜悪な物の為に僕は戦ってたのか?

何故あんな奴らのために頭を下げなければならない。

 

チラリと顔を上げると、アレらは忌々し気にこちらを睨み舌打ちを吐き捨ててからその場を去って行った。

 

「あ、ありがとうございます、先輩。私たちだけでは抑えきれず…」

 

「…うん、気にすることないよ。辛かったらいつでも頼ってね」

 

その場で対応にあたっていた正実メンバーの子の頭を撫でて励ます。

その後もミカ様と話を終えた先生の案内を続けたが、道中の会話を楽しむ気にもなれなかった。だけど、先生に心配をかけるのも嫌だった。

普段の僕と変わらないように話しかける。

普段の僕ならそうするはずだから。

 

「……先程は、お見苦しいモノをお見せしてしまいましたね。品位あるべきトリニティの生徒だというのに…僕たちも対応に追われて業務が増えてしまいますし、困ったものです」

 

"スズランも、お疲れ様。さっきはカッコよかったよ"

 

「あ、あはは…見られてましたか、お恥ずかしい。ツルギ先輩なら穏便に片付けそうなものですが…何分至らぬ身です故、修理の申請や費用の捻出など仕事を増やしてしまい不甲斐ないばかりです」

 

"あんまり、無理しすぎないでね。どんな相手でも好きにならなくちゃダメ、なんてことないんだよ。スズランが好きな子のことを、大切にしてあげて"

 

「…大丈夫ですよ、先生。でも、肝に銘じておきます」

 

ダメだよ先生。あのカス共は嫌いだ。でも、それは蓋をして抑えておかなきゃダメだ。僕は正義実現委員会なんだから、何かあったときに私情で特定の個人を助けないなんてことは、あってはならない。先輩にも注意されたばっかりだ。私情を挟まず、規則に則り行動する、組織に属するというのはそういうことだ。

 

 

 

先生と別れ、業務を終えた後もずっと頭の中でグルグルと考えが巡って止まらない。

弱いことは罪ではない。

弱いからこそ、人は痛みを知ることができる。

弱いからこそ、他人を慈しみ、手を取り合い、助け合うことができる。

弱さの無い人間など人間ではない。

ならアレはなんだ?

僕が剣を振れば、一振りで吹き飛ぶような弱者。守るべき存在のはずだ。

ならば何故アレは人を傷つける。何故、他人の痛みがわからない。何故、罪を償おうとしている人間に罰を与える。

罪を裁けるのは、法と神だけだ。決してアレに罰を与える権利などない。

あの時もそうだった。

古聖堂が襲撃されてナギサ様が倒れた後、僕が戻った時には学園の政治機能は完全に停止していて目も当てられなかった。

派閥間の対立、私利私欲に塗れた足の引っ張り合い、更なるクーデターの画策……意味がわからなかった。

助け合うべき時になぜ蹴落とし成り上がろうとするのか。

 

弱さを持つからこそ人は尊いのか?

弱さを持つからこそ、人は醜くなるのか?

考えるな、今まで通りにやれば済む話だ。誰も彼もが善人なわけじゃないのは知ってるだろ。

あんなモノは忘れろ。ごく少数の、一部のカス共が騒いでるだけだ。

自分の役割を忘れるな。

僕は、溝口スズラン(正義の味方)だろ。

 

なにが溝口スズラン(正義)だ、吐き気がする。

 

 

 

「────魔女はお前らだろ…悪魔め」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜、緊急で召集が掛かった。

脱獄してアリウス自治区へ向かったミカ様と、何故かアリウス自治区にいる先生の保護を第一目的としたアリウス修復作戦。

修復などと宣っているが…それが本当かどうかは、後でわかるはずだ。

 

 

アリウスを狩った。

表向きはミカ様と先生を保護するために。

少しでも攻撃する素振りを見せたアリウスを蹴り飛ばした。

抵抗するアリウスは剣で叩き伏せた。

恐れをなして逃げ出すアリウスを背中から斬りつけた。

戦意を失くし武器を捨てるアリウスを拳で黙らせた。

過去に迫害を受けた被害者であろうと、コイツらは平気な顔で他人を殺そうとする悪魔だ。正々堂々だとか、体裁だとか、関係ない。

死なない程度に殺してやればいい。二度と反抗しようなんて思えないように、徹底的に。

悪人を倒せば、溜飲が下がると思ったから。

痛めつけても心が痛まないなら、きっとソイツらは同じ人間じゃない。悪魔を痛めつけようが心は痛まないはずだ。

同じ人間じゃないなら、守るべき対象じゃない。

あのトリニティのカス共も、人間じゃないなら守らなくていい。痛めつけても構わない。

こんなヤツら…あんなヤツらなんて、いない方が世のためだ。

大丈夫、これは正しい事だ。僕は間違ってない。

苦しくなんてない、辛くなんてない。そんな間違った感情は存在しない。

 

(アリウス)彼女達は被害者だろ

 

違う。過去の因縁だ。それを現在にまで持ち込んで戦争を仕掛けてきたのは奴らだ。

違う。最初に迫害して追い詰めたのは(トリニティ)僕たち側だ。

その過ちの結果がこの街並みだ。こんな荒廃した場所での、食事すらままならない生活に追い込んだ。

違う。コイツらの自業自得だ。手を出してきたのはコイツらだ。

違う。恨まれて当然だ、復讐してやりたいと思うだろう。

 

「……あー…」

 

僕にはトリニティを守る責務がある。

どれだけ虐げられてきたのであっても、その恨みに正当性があっても、復讐する権利があっても、トリニティに害を為すなら倒さなければならない。

それが正しいことだから。

 

「なんで…」

 

銃声が止んだ、顔を上げたそこは地獄としか言いようがなかった。

通ってきた道は血で赤く汚れ、所々から呻き声が聞こえてくる。

そこかしこに転がる生徒は手や足が変な方向に曲がっていたり、瓦礫に埋もれていたり、全員が白いジャケットを赤く染めていた。

意識を保っている生徒は、満足に動かないであろう体を引きずって這いながらも逃げようとしている。

 

「なんで、こんなことしてるんだっけ…?」

 

血で赤く染め上げることが、正しさなんだっけ?

正しさってなんだっけ?

なんでこんな苦しいんだっけ?

わからないな。

あぁでも、まだ作戦は終わってないんだから、先に進まなきゃ。

あれ、作戦ってなんだっけ。

こんなにボコボコにしちゃマズイんだっけ?

でもあっちから襲ってきたんだし、僕は悪くない。

作戦行動中なんだから、余計なこと考えないようにしなきゃ。

余計なことは考えずに、悪い人を倒せばいい。

 

「そうだ…正しいことを、するために…」

 

うん、そうだ。それがいい。それがきっと正しい。

 

「悪いヤツ全員、ブチのめせばいいんだ!」

 

体が軽くなった気がする。うん、これでよさそうだ。

だんだん気分が良くなってきて、作戦中なのについスキップなんかして悪いヤツを探しに行ってしまう。

あ、まだ居た。良い子にしてあげなくちゃ。

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから数週間。校内パトロール中に半泣きでウロウロしてるミカ様がいた。正直ミカ様もブチのめし対象であると思うけど、良い子になろうと頑張ってるみたいだから保留だ。

 

「ミ〜カ〜様っ、泣きベソかいてどうしました?悪さしようとしてる?」

 

「あっ…スズちゃん……ううん、探し物してて…」

 

「探し物?」

 

「うん…ごめんね、早く見つけないとだから…!」

 

そう言い残して足早に去ってしまった。

僕を頼ろうとする素振りすらなかったから相当焦ってる。

もう大体のことは把握してしまった。

普通、探し物でゴミ箱は漁らない。まーたアホ共が嫌がらせしてるに違いない。これで何回目だ?

呆れて溜め息が漏れてしまう。

そして勘を頼りに探していると、ヤツらを見つけた。

ん〜……あ!牢屋でミカ様のこと罵ってた奴らだ。うーん、やっぱり悪いヤツには言っても伝わらないのかな。

こちらに気づかずコソコソ笑ってる3人組を、背後からまとめて鞘に入れたままの剣で足を薙ぎ払う。まずは逃げられないように。

その場に転んだ3人は、急な痛みに何が起こったのかわからず狼狽している。

 

「君たちさぁ、ひどいよ…なんであんな悪いことしちゃうの?」

 

「なっ、正実…!?急になんなのよ!?」

 

「せ、正実だからって何してもいい訳じゃないでしょう!通報するわよ!」

 

困った、全く話を聞いてくれない。どうすればいいんだろう。

とりあえず剣を向けたら小さい悲鳴と一緒に黙ってくれた。うん、便利。

 

「…前に言ったよね、学園に恥じない行動しようねってさ。なのに、なんでこんな真似するの?これで何回目?」

 

「は?一体何を……まさか聖園ミカのこと?」

 

「あんなの当然でしょう。アリウスと手を組んでトリニティを滅茶苦茶にしようとした魔女に当然の報いです!」

 

「うーん、そっか、言ってもわかんないか。悲しいなぁ……同じトリニティの生徒なのに、殺さなきゃいけないなんて」

 

剣を抜いて、鞘をその場に放る。手入れは欠かしていないから、よく斬れる。

 

「えっ……?う、嘘でしょう…?」

 

「ま、待って、待って!たかが水着ひとつじゃない!なんで私たちがこんな目に…!!」

 

四つん這いになって情けなく逃げる3人に、歩を進める

 

「安心してよ!ちゃんと3人一緒に良い子にしてあげるから」

 

 

「く、来るな…!来るな!!この悪魔!!」

 

 




思考放棄。ポジティブなバッドエンド。





大変遅れて申し訳ナス。
ネタ思いついて書き溜めたりはしてるけど時系列的に後日談になるから本筋を終わらせないと投稿できないんだ。
ブルアカのストーリー進めてる最中なのでもうちょい待ってください。
一番後に回してたパヴァーヌ終わってネルパイに惚れたところです。
最終章終わらせるまでしばしお待ちください。





あ、時系列ガン無視だけどR18始めました。
よければどうぞ。
https://syosetu.org/novel/353382
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