酔っ払い拾ったらロックに出会った。   作:西ローランドゴリラ

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13話

 

 FOLTでヨヨコ先輩と練習していると喜多さんからロインが来た。

 オーディションは無事に通ったようで、ライブの日はバイトに入ってほしいとのこと。

 OKと返しておくと、ヨヨコ先輩が俺を怪訝そうな表情で見ていた。

 

「私といるのにロイン見て、それにずいぶんと機嫌が良さそうじゃない」

 

「わかります?クラスの子が最近ギターを始めたんですけど、どんどん上達しててオーディション通ったからライブもできるんです」

 

「それは……よかったわね」

 

 ヨヨコ先輩の表情がフッと柔らかくなる。

 

「はい!これからが楽しみです」

 

「その子じゃなくて、今度はあんたが学校でうまくやれてるのが」

 

 フイっと少し顔を背けながら言う先輩に胸が熱くなる。最初は廣井姐さんに拾われた俺に対抗心を燃やしてたけど、俺の事情を聞いてめちゃくちゃ親身になってくれたのだ、この人は。

 廣井姐さんのことを慕う者として先輩、だからヨヨコ先輩。

 大人や先輩もだいたいさん付けで呼ぶ俺にとって、ヨヨコ先輩(・・)と先輩を真似して呼ぶようになった廣井姐さん(・・・)には少し特別な思い入れがある。

 そんな先輩からの祝福に感極まって抱きついてしまった。

 

「せんぱぁい!!ありがとうございます!」

 

「ちょ!急に泣き出してどうしたのよ!?」

 

「先輩が優しいからっすよ!」

 

「ちょっと!もし誰か入ってきたら見られるでしょ……落ち着きなさい!」

 

 そう言いながらなんだかんだ先輩は抱きしめて頭を撫でてくれる。

 

「俺も先輩が学校で友達できるの祈ってますから!」

 

「それは余計なお世話よ」

 

 どうやら要らないことを言ってしまったようで、さっきまで優しかった先輩の膝が俺の腹に突き刺さった。

 腕を使わないのは俺の腹筋を殴って手を痛めるのが嫌だからと前に言っていたけど、さすがにダメージえぐい。

 飲み物を買いに行くと出て行った先輩に謝りながら追いかけると、志麻さんがいた。

 

「湊、またヨヨコを怒らせたのか?」

 

「こいつが学校でうまくやってるのを褒めたら、私にも友達ができるのを祈ってるなんて言ったんです。私は好きで一人でいるのに」

 

「先輩に褒められたのが嬉しくて、また考えなしに要らないこと言いました……」

 

 俺とヨヨコ先輩の話を聞いて志麻さんがため息を吐く。

 

「君らは本当の姉弟みたいに仲良いから心配してないけど、ヨヨコもほどほどで許してあげなよ。なんでか湊が一番甘えてるのってヨヨコ相手だし」

 

「まあ、そうですね。大人気無かったかもしれないです」

 

 わかる、ヨヨコ先輩は姉っぽいというか、頼れるというか、そういう雰囲気がある。

 

「湊、お前はいつも言うけど、テンションが上がると結構考えがそのまま行動に出るから気をつけなさい」

 

「はい……」

 

「落ち込みすぎないの、あんた感情が表に出るようになって演奏はどんどん良くなってるんだから」

 

 志麻さんのおかげで落ち着いたヨヨコ先輩が励ましてくれる。

 

「せんぱぁい!」

 

「ちょ!人前でまで抱きつかないの!今注意されたでしょ!」

 

「はぁ……ま、仲直りしたならいいか……」

 

「二人が姉弟なら志麻はお母さんね」

 

「この二人の世話ならまだ可愛げがあっていいですね」

 

 銀ちゃんにお母さん扱いされて否定するどころか志麻さんは遠い目をしている。きっと世話をしたくない相手として思い浮かべてるのは廣井姐さんだ。

 

「思い出したらイライラしてきた、叩くか」

 

 志麻さんが一人でドラムを叩きに来るってことは、廣井姐さんまた何かやらかしたんだな……

 

「ちょっと湊!落ち着いたんなら離しなさいよ!」

 

「あ、すみません落ち着きました」

 

 軽くボヤきながらヨヨコ先輩が服を整える。

 

「そう言えば湊ちゃん、イライザから聞いたんだけどライブハウスでバイト始めたのね?良い経験になるといいわね」

 

「聞いてないわよ!最近ちょっとこっちに来る頻度が減ってるの、動画で忙しいのかと思ってたけどそんなことしてたの!?」

 

 さっきまで丁寧に服を直していた淑やかさを感じる姿はどこへやら、ヨヨコ先輩は俺の肩を前後に揺らして詰め寄ってきた。

 

「先輩に呼ばれたらほぼ必ず来てるじゃないですか!むしろたくさん来てもSIDEROSの他のメンバーに迷惑だし」

 

「最近他の子たちがサボり気味で大槻ちゃん一人で練習しては湊ちゃんのこと探してたわよ」

 

 さすが銀ちゃん、店長だけあってよく見てる。

 

「呼んでくださいよ!」

 

「遅れてるだけかもしれないし、あんた忙しそうだし……」

 

「ヨヨコ先輩に呼ばれたら忙しくなければバイト抜けてでも来ます」

 

 今度は先輩が目に涙を滲ませ、それを隠すように抱きついてくる。

 

「そこまではしなくていいけど、もっと会いに来なさい」

 

「ちなみに湊ちゃん、週に1,2回はイライザのところに泊まってるみたいよ」

 

「本当にもっと会いに来なさい!」

 

 不機嫌になった先輩にギリギリと締め付けられる。

 

「もっと呼んでください、いつ来たらいいかとかわからないんで」

 

「じゃあ毎日電話するわ」

 

「それは流石にきついっす」

 

 先輩の締め付けがさらにキツくなった。





今回もお礼申し上げます。

⭐︎10をつけてくださったぁぁぁあああぁぁ様、黒雅様、爽真様

⭐︎9をつけてくださった白厨様、世界史様、ひも様、servent様、キノコムシ様

遅ればせながら感想をくださっていた神社エール様、最初期から応援くださっていて感想をくださった田中読者様

皆様ありがとうございます。

皆さんに幸あれ、美味しい焼き鳥屋が見つかるくらいの幸あれ
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