酔っ払い拾ったらロックに出会った。   作:西ローランドゴリラ

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16話

 

 結束バンドのライブの日、台風で生憎の大雨だった。前日にてるてるぼーずを作ったというのに虚しい話だ。

 みんなのテンションも少し下がっている、そんな空気を変えるように扉が開く。期待を込めて思い振り返るとそこには廣井姐さんがいた。

 

「ぼっちちゃんきたよぉお〜〜〜」

 

 こんな日まで酔ってるのはどうかと思う、てか店長さんとは知り合いだったんだ。

 

 続いてこの前の路上ライブで後藤さんのファンになってくれた二人。

 ライブの時間が近づいてくる、それでも客入りは少ないままだ。

 

「一番目の結束バンドって知ってる?」

 

「知らない、興味なーい」

 

「観とくのたるいね」

 

 何気ない他のバンドのファンの言葉、しかし裏から覗いてる四人には相当ダメージがあったようで空元気の虹夏さんと喜多さんも見てて痛々しい。

 

「初めまして!結束バンドです。今日はお足元の悪い中お越し頂き誠にありがとうございます〜!」

 

「あはは、喜多ちゃんロックバンドなのに礼儀正しすぎ〜!」

 

 MCも滑り、一曲目がおわる。正直、あまりいい演奏ではなかった。いつもの彼女たちならこんなものじゃない。

 

「やっぱ全然パッとしないわ」

 

「早く来るんじゃなかったね」

 

 さっきの二人の言葉は、きっとステージの上に届いてる。四人揃っての初ライブがこのままで終わってほしくない。

 

 俺の祈りに応えるように、ようやく俺の待ってた奴らが店内に入ってきた。

 

「よう咲良、当日券もらえるか?」

 

「俺は来る時かなちゃんから買い取ってきたわー」

 

「台風の日に外に出るのってやっぱTMレボリューションみたいでテンション上がるな!」

 

 我がクラスの男どもの到着だ。

 台風で来れなくなった子のチケット買い取ればカッコよくね?喜多さんのバンド可愛い女の子しかいないぜ。

 台風で客入り少ないから今日いけば喜ぶし印象良くなるんじゃね?

 

 そんな言葉に釣られてきてくれたノリが良くて優しい奴ら。

 

 喜多さんが誘ったのは女子ばかりだったから台風の日には危なくて外に出られなくても、野郎共なら違う。

 下心に塗れた最高のバカ(クラスの男子)どもが来てくれた。

 

 最初に顔を上げたのは、後藤さんだった。

 

 自身で掴み取ったファンの二人を見て、そして新たに入った客を見て、空気が変わる。

 本来の彼女の実力を垣間見せるギターソロ、アドリブのそれにPAさんが演出を完全に合わせる。

 

 誰もが痺れる、誰もが魅せられる。

 

 その音にクラスの男子共も視線を後藤さんの方へ向けさせられる。

 自身の演奏で手一杯だったメンバーも後藤さんに視線を吸い寄せられてから前を向く。

 

 喜多さんもそこでクラスメイトが来たことに気づく。

 

 音が変わった、心底楽しそうに演奏する彼女たちの演奏は間違いなく心を動かすものだった。

 曲が終われば歓声が上がる。さっきボヤいてた二人でさえ、その視線はステージに釘付けだった。

 

 三曲目も大いに盛り上がり、新生結束バンドの初ライブは上々の結果となった。

 

 

 全てのライブが終わったあとには下心で釣った男子たちもバンドのかっこよさに夢中で、各々気に入ったバンドのグッズを買ってる姿も見られた。

 

「みんな!来てくれてありがとう!」

 

 クラスメイトに向けて喜多さんがキラッキラの笑顔を向ける。どこからともなく聞こえるキターン!の音も普段より多く聞こえております。

 

「喜多ちゃんかっこよかったよ!」

 

「他の皆さんも!咲良からみんな可愛いし音はかっけぇって聞いてた通りでした!来てよかったです!」

 

「後藤さんのギター!めちゃくちゃかっこよかった!」

 

 みんなが思い思いに結束バンドを褒める。気になるからちゃんと聞くと、彼らの声から景色が見える。

 お近づきになりたい気持ちは半分もないんじゃないか?ってくらいに純粋に演奏を楽しんでくれたのみたいだ。

 

「咲良くんがみんな呼んでくれたの?」

 

 喜多さんの問いかけに「はい」と答えるのは俺の中では違ってる。呼んだのは間違いないけど、俺が声をかけたから来たんじゃなくて、こいつらがいい奴らだから来たんだ。

 

「そんな大袈裟じゃないよ、みんな喜多さんが好きで、結束バンドに興味持ってくれたから来てくれたんだよ。あとはまあ、チケット無駄にしちゃう女子にかっこつけたい奴とか」

 

「ありがとう!咲良くん!」

 

 照れ臭くて最後には皮肉混じりの言い方もしたのに、目に涙を貯めた喜多さんが飛びついてきた。飛びつかれるのはイライザさんで慣れてるから抱き止めると、普段イライザさんにするようにしっかり抱きしめて気づいた。

 あ、やべぇ。

 

「咲良、どういう了見だ?」

「お前、今日来たらアピールになるんじゃないかとか言ってたよな」

「俺たちを焚き付けたお前が何一人でいい思いしてんだ?おん?」

「抱き合うとかお前、喜多さんと……!」

 

 クラスの男子から圧倒的な殺意を感じる。まあ喜多さんモテるし、みんなを使って俺が好感度稼いだみたいになってるもんな。

 

「ちちちち、違う違う、これはそういうんじゃなくて、な!喜多さん!」

 

 慌てて言い訳をする俺に合わせて、喜多さんもすぐに離れてくれる。さすがはマイフレンド。

 

「そそそ、そうよ!ライブが上手くいって嬉しくてつい……その、咲良くんは悪くないので許してあげてください!PAさん!」

 

 おう?彼女は一体何を言ってるんだろう。クラスメイトたちに俺と付き合ってるとかは絶対にないって宣言してるけど、PAさんになぜ謝ったのかがわからない。

 悩んでいる俺の腕にするりと腕が巻きつけられ、柔らかい感触と共に抱きしめられた。

 

「大丈夫ですよ喜多さん、私は湊くんの気持ちを疑ってないですから」

 

 俺の腕を抱きしめながら、イタズラっぽい顔でPAさんが俺を眺めている。

 

「羨ましい、八つ裂きにしたい」

「あんな美人と!咲良のやつ!やべーオタクのくせに!」

「クソ!どうして推しのVtuberと同じシャンプーをわざわざ買うようなやつがモテるのに!俺は!」

 

 男子たちの嫉妬と殺意のこもった視線を受けてやばいと悟る。

 PAさんと付き合えてるならその視線を受けても優越感に浸れるだろう、しかしそうじゃない、俺は付き合えてないんだ。

 

「聞いてくれ!」

 

「誰が聞くかこの野郎!」

「お前は俺たちを裏切った!」

「一人だけ女子に囲まれやがって!」

「お前なんて音楽ができて素直ないい奴なだけのくせに!」

「あと地味に運動ができて筋肉質!」

「知ってんだぞ!お前が体力作りで真面目に筋トレしてるの!」

「勉強がダメなのはいいぞ!もっとダメになれ!振られろ!」

 

 ダメだ、聞く耳を持ってくれない、てか一部褒めてんだろ。

 

 結局店長さんが場を納めてみんなを帰してくれて一件落着となった。

 夏休み明け、覚えておけよって言われたけど一件落着だ!ありがとう店長さん!大好きだ!





今回もお礼申し上げます。

⭐︎10をくださったアオノクロ様

⭐︎9をくださった
yukimune7様トリトリ伯爵様bookman17様ハタ星人様

感想でアドバイスくださった白灰熊様

皆様ありがとうございます!

皆さんに幸あれ
具体的には友達とご飯食べに行くくらいの幸あれ
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