またちょっとRAD入れたマン
「楽しかった〜」
「ご飯の感想が楽しいってどういうことよ」
目の前の成長期真っ盛りの男子高校生がおおよそ私にはわからない感覚で話してる。
実際、私とSICK HACKの三人と彼の両親を合わせた量よりも多く食べてるのだから、彼にしか見えない景色があるのかもしれない。
「たくさん食べた達成感と美味しいのと満腹が合わさって幸せな感じですね!」
目は口ほどに物を言うとはよく言ったもので、湊はいつも笑顔だけど、今日は特に楽しいというのが仕草で伝わってくる。
よく不機嫌だと勘違いされる私とは真逆でみんなに愛されるまっすぐな奴。それなのに嫉妬や嫌悪感を持つことが無いのは私もその明るさが好きなのと、そんな風に彼を嫌うと間違いなくすごく傷つくとわかるくらい、彼から好きという気持ちを向けてくれているのが嬉しいというか、可愛い。
「そう、ならお肉をたくさん焼いてあげた私のおかげね」
「そうですけど、次はもっと優しいペースでお願いします」
当たり前のように次の約束をしてくれる。トゥイッターやイソスタのフォロワーはいても遊ぶ友達がいな……少ない私が寂しいとあまり思わなくなったのは湊と出会ってからだ。
そんな彼がバケツを持って、私が花火の入った袋を持って公園へ向かってる、自分で言うのもなんだけど青春してるって感じで心がざわつく。
「やっぱり夜っていいですよね!まだ人通りはあるけど、特別な時間て感じがするし、ヨヨコ先輩と並んで花火しに歩いてるのもなんか青春!て感じでテンション上がります」
「自分で青春なんて言って恥ずかしくないのかしら?当たり前のように過ごした日々を振り返って青春て言うものだと思うけど」
ばっちり考え方が一致してた、恥ずかしい。それにこんな憎まれ口で照れ隠しするから私は友達がいな……少ないのにまたやってしまった。
「作り物じゃなくて一生懸命な日々を振り返る方が青春……さすがヨヨコ先輩!でも俺、色んなことに首突っ込んで体験してみたいし、やっぱ青春らしい青春もしたいんで、これからも付き合ってください!」
キツい物言いしたのに、当たり前のように受け止めてくれる。私が私の心を守るような発言しかしないのに、それなのに湊は真っ直ぐ好意を向けてくれる。
でもそれを優しさなんて思ってない、自分より好きな人がいる自分が好きなような奴だから。
だから私も湊に対しては少しだけ素直になりたいと思える。
「ま、あんたと一緒にいるのは好きだし、予定が空いてたら付き合うわよ」
「あざまーっす!俺もヨヨコ先輩といると楽しくて好きです!」
こっちが勇気を出して言った好きを当たり前みたいに返してくる。心なしかウキウキしてるというか絶対喜んでる、いつも思うけど大型犬みたい。
そのまま湊が先導してもう少し歩くと大きめの公園についた。
「着きました!ここ広いし水使えるし、手持ち花火ならOKの公園です!」
広い公園の外周は犬の散歩やランニングしてる人が通るけれど、暗いグラウンド部分の中心は貸し切り状態、花火にはうってつけだ。
「俺両手持ちで回転するんで写真撮ってください!」
「両手だけじゃなくてくわえちゃうとかどお〜」
「いいっすね!」
「危ないからやめなさい!」
はしゃいで廣井姐さんと一緒に志麻さんに怒られて。
「イライザさん、一緒に必殺技やりましょう!」
「じゃあ二人でキメポーズできるあれに決まりダネ!」
「人の近くで振り回さない」
またまたはしゃいでイライザさんと一緒に志麻さんに怒られて、忙しないやつ。
「うわっ!ヨヨコ先輩の花火色変わってくやつ!どれですか!?」
「それだけど」
「あざまっす!火も貰いますね!」
横に並んだ湊が私の花火から火をつけると湊が青で私がオレンジで、色が違ってるのが綺麗で、隣の湊につられて笑顔になった。そこにフラッシュの光が浴びせられる。
「おー、いい写真撮れたと思わない?志麻〜?」
「廣井にしてはいい仕事したな、待ち受けにするから送ってくれ」
志麻さんが待ち受けにすると言った写真が一斉送信で私にも送られてくる。
自分がこんな表情をしてるなんて恥ずかしくなるくらいに嬉しさと楽しさが混じった笑顔で、隣の湊を見つめている写真。
湊はいつも通りの笑顔で花火の方を見てるのが悔しいけど、良い写真だと思った。
「私も待ち受けにしようかしら」
「俺はみんなで撮ったやつ使いたいんで、みんなで撮りましょう!」
そこはあんたも使うところでしょ!と思ったけど口にするのは恥ずかしいし、廣井姐さんとの写真も欲しいから大人しく乗っかった。後で蹴るけど。
その後も湊が花火を持ったまま滑り台の上からバク宙して怒られたりもあったけど花火も尽きてきて、線香花火の火を誰が最後まで残せるかの勝負をして、花火を終えた。
予想より時間が遅くなったから私のことは湊が送ってくれてる。さっきまで無邪気な子どもだったのに、夜道を歩くとなれば頼りになるし、線香花火をしてる時の横顔は大人びて見えた。
黙っていればただのイケメンだけど、話せば大型犬。そんな湊が大人なキスをして……思い出したらなぜか泣いたのを思い出してムカムカする。
何に対して?湊が泣いたことだ、そうに決まってる。もうすぐ家に着くから、その前に『先輩』として何か言ってやらないと気が済まない。
だから足を止めて湊の袖を引っ張った。
「ねぇ湊、泣くような事があれば私に連絡しなさい。私なら絶対泣かせないから」
振り返った湊は私を見て驚いた顔をして……私を抱きしめた。
「先輩、よくわかんないですけど、泣きながら言う事じゃないですよそれ」
私だって自分がなんで泣いてるのかなんてわからないし、今急にこんなこと言っても困らせるだけなんてわかってる。
でも、言わずにいられなかった。
「うっさい」
「すみません」
私が泣き止むまで、湊はずっと抱きしめてくれていた。
お礼たーいむ
⭐︎9をくださったみる吉様、秋の葉っぱ様、スーザンの酢酸様、ドムR35様、握り飯8号様
皆様ありがとうございます!
皆さんに幸あれ!
具体的にはカップ麺界で個人的に最強の位置付けの鴨だしそばが安く売られてるくらいの幸あれ!