酔っ払い拾ったらロックに出会った。   作:西ローランドゴリラ

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24話

 

 落ち着いた先輩を家に帰した次の日、みっともない姿を見せてごめんという謝罪と、名誉挽回のために宿題終わらせる日についての連絡があった。

 自分が泣いてる時に出る言葉が、俺を泣かせないなんてかっこいい言葉な先輩の姿がみっともないなんてとんでもない。ただ、宿題は残りを終わらせる日もさっつー、喜多さんと決めてある。

 

『先輩はいつだってかっこいいです。宿題は友達と終わらせる約束してます』

 

 と送ると前半が薄っぺらく聞こえると抗議の電話がかかってきたので、俺がどれだけ先輩を尊敬してるかを伝えて納得してもらった。宿題は俺に教えるために復習までしてくれてたらしいので平謝りした。

 とにかくいつもの先輩に戻ったようなので安心して出かける準備をする。今日はリョウの家で楽器を借りて演奏する日だ。

 

 エフェクターから楽器までレア物から高額なものまで揃ってる宝の山だから、前回も大はしゃぎで動画を撮らせてもらったら評判が良かった。俺はギターもベースもそこまで上手くないけどヘニョヘニョの音になる謎エフェクターが楽しくてずっと遊んでた。

 俺が楽しんでると評価してくれるファンのみんな、優しい。

 

 撮影用カメラの予備バッテリーも含めて充電を確認したり準備を終えたあたりでリョウからロインが入る。

 送られてきたのは位置情報で、マップから確認すると知る人ぞ知るって感じの場所にあるジビエが食べられる店だった。

 サバイバルできる方がロックって視聴者に言われて、生き物系オーチューバーの方にいろいろ連れて行って貰ったからこういう珍しい食べ物は好きだ。相変わらずリョウのセンスはいい。

 

 

 

「よっす」

 

「んぐんぐんぐ!」

 

 店に入って挨拶すると既にテーブルに料理を並べてリョウが口に物を入れながら精一杯の返事をしてくれた。

 

「どれが特に好き?」

 

 リョウが指さすやつを食べてみる。

 美味すぎる!噛みごたえのある赤身に、存在感は確かなのに後味がくどくない脂身、そしてそれを引き立てるような塩味と柚子胡椒の絶妙な味付け。

 

「この米とジンジャエールは湊の」

 

 そこへスッとリョウが差し出してくる、今俺が最も求めていた米。当然のようにガッツかせてもらった。

 

「今のが猪、こっちは鹿でこれが雉」

 

 どれも凄く美味しくて、二人で結構食べたのに思ったより会計は控えめですごくよかった。絶対廣井姐さんが喜んでくれるから今度誘ってみよう。

 

「ごち」

 

「ナイス店選び」

 

「私の嗅覚にハズレはない」

 

「前々回くらいのはハズレじゃね?味は普通だけどやたら高かったところ」

 

「あれは……忘れよう、お互いのために」

 

「お互い?お互いか?まあ……いいか」

 

「チョロい」

 

「ナメてんのか」

 

 リョウは元々オーチューブの視聴者らしいけど、悪ノリで無茶振りする側の視聴者らしくてかなり気安い。

 ずっといなかった男の親友ができたみたいな感覚がして、軽口言えるのがめちゃくちゃ楽しい。だが、リョウの家に行くのは少しばかり問題がある。リョウのご両親が最初に俺とリョウの関係を邪推して警戒し、俺がそこそこ名前の売れてる音楽家とわかると勘違いしたまま見る目があると喜んでしまい、誤解を解けずにいるからリョウの家に行くのは若干気まずい。

 最近気づいたけど、俺誤解を解くのが得意じゃない。説明上手くないし。

 

 

 

「着いたか」

 

 リョウの機材で遊ぶのは楽しみだけど、関係を勘違いされてるので少し気が重くなる。

 

「大丈夫、今日は両親には出ていってもらってる」

 

「まじ助かるわ、お邪魔します」

 

 ガチャリとリョウが扉を開けて、俺を中へ案内してくれる。入ったところで扉だけじゃなく、鍵をかける音も聞こえた。

 

「二人っきりだね♡」

 

「え、なに、俺襲われんの」

 

 突然リョウが思いっきり作った可愛い声で妙なことを言ってくる、何言ってんだこいつ。

 

「おかしい、私の知ってる『咲良 湊』なら照れるはず」

 

「いや、リョウ相手にならんだろ、何が望みなんだよ」

 

「今日の動画、私も一緒に演奏したい、声も載せていい、お願い」

 

「前回は俺が話しかけても意地でも黙ってたのに、どうした?」

 

「私は動画に関わらない方がいいと思ったから。湊の視聴者層は女性も多い、コメントを見る限り湊を弟みたいに扱う女性とSIDEROSの大槻ヨヨコやSICK HACKとの絡みを求めるカプ厨、男性はバカな事をさせて楽しむ人たち、そして男女問わず演奏がただただ好きな人たちがいる」

 

「分析すごいな」

 

「そのうち、お姉さんタイプとカプ厨、バカなことをさせて楽しむ人たち、私が入る事でここが嫌な反応をするかもしれない」

 

「まあ、音楽を楽しんでくれる人が残ればいいっちゃいいけどさ」

 

「ちなみにそれは他の属性と同時に持てるから、実際はほとんどが嫌な顔すると思う」

 

「めちゃくちゃデメリット推すじゃん」

 

「でも、私も何か活動してる人間だとわかってもらえば反発は少ないはず。前回友人としか説明してなかったのを、このアカウントの機材を使ってるって公開してほしい」

 

 そこでスッとリョウがトゥイッターアカウントを見せてくる。世界のYAMADAという名前で3000人くらいのフォロワーがいる。

 my new gearを繰り返してるアカウントだけど、確かになんかしてるっぽい。

 

「結束バンドに知名度が必要になった時に使いたい、この前のライブで集客の大変さと意義を感じたから。機材を使うお金は貰ってるから無理にとは言わないけど、お願いします」

 

 リョウがちゃんと頭を下げた。

 バンド活動をする上で宣伝は大事だ。どんなに良い音楽をしていても運が無くて世に知られないなんてことは当然ある。

 その運の部分をリョウは自分の力で掴もうとしている、そしてそれは結束バンドのため。

 今すぐ頼るのではなく、必要な時に力不足で泣かなくて済むように、頭を下げている。まただ、やっぱり音楽に対しては真剣でかっこいいんだ、俺の親友は。

 

「頭上げてくれ、リョウさえ良ければ俺が断る理由はないよ」

 

「でも、視聴者受けは悪いかもしれない」

 

「俺の演奏で魅了する!反発するかもしれない層も演奏を楽しんでくれる人たちなんだろ?」

 

「そっか、ありがとう」

 

「それに結束バンドを応援するって約束したんだ、虹夏さんに」

 

「いいこと聞いた」

 

「さっき見直したのに悪どい顔すんなよ」





お礼しもす
⭐︎9をくださったかんぴょう様、ろっく609様

感想くださったなまこな様、田中読者様

ありがとうございます!

前話のあとがきに書き忘れてたんですが、RADの愛しをちょっと意識して書いてました。完全に合致させてるわけじゃないんですけど、ヨヨコ先輩から見た湊くんへの視点部分的なあれで。

そんな事は置いといて皆さんに幸あれ
具体的には好きなジュースのおっきいやつが冷蔵庫で冷えてるくらいの幸あれ
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