「虹夏さんてポテト好きなんだ」
「寿司屋でポテトを頼むのが意外って顔してるね」
虹夏さんがちっちっちと指を振る。
「ポテトを売ってるってことはここはポテトステーションなんだよ」
「なるほど、コンビニがチキンステーションなのと同じか」
「そういうこと」
「いや、さすがに寿司屋は寿司屋でしょ」
もっもっもっとお寿司を口に頬張ってたリョウからツッコミが来る。リョウにツッコミ入れられるなんて虹夏さんも結構お茶目だな。
「ちなみにコンビニは100ロのハッシュドポテトが至高」
「わかる気がする」
「ナイスポテトだね、あれも」
ご機嫌なのか虹夏さんのアホ毛がぴょこぴょこと動く。え、アホ毛って神経と筋肉通ってるもんなの?
アホ毛の見た目フライドポテトだからポテト好きの虹夏さんなら動かせるってことなのか?
「湊、ドリトスの方が近い」
「ゴフッ、あぶねーな、吐くところだったじゃん。思考を読むな」
「フッ、読んだのは視線」
「もしかして頭の話してる?これアホ毛じゃなくてセンサーだからね、むしろ天才毛だよ」
「天才毛の方がアホっぽい名前」
「プッフフ……ゲゲゲかよ」
「お、湊くんもツッコミしてくれた、大成功!」
パァっと周りが明るくなるような笑顔で虹夏さんがピースする。
「リョウばっかり仲良くなっててずるいと思ってたんだよね、私にももっと砕けた話し方してほしいな〜」
「虹夏が湊の凄さ、世代最強に引っ張られすぎてるせいでしょ」
「逆にリョウは湊くんのおもしろキッズの方に引っ張られすぎだよ」
「おもしろキッズってなんだよ」
「「ノリで生きてて純粋なとこ」」
息ぴったりだね、さすが幼馴染。
演奏中のアイコンタクトもバッチリだし、この二人がリズム隊なのはバンドとして強みだよな。
今も会話のテンポしっかり取られてるから反論できないや。
「ふぅ、そろそろ追加注文しようかな」
「あ、逃げた」
「私たちの勝ちみたいだね、虹夏も奢ってもらえるかも」
「てい!そういうのじゃないでしょ」
虹夏さんが叱りながらリョウにチョップをする。掛け声可愛いけど威力強めじゃね?ドラマーパワー怖。
「リョウ、湊くんに奢ってもらってばっかり悪いでしょ!ダメだよ!」
「痛い……」
頭を抑えてリョウがプルプルしてるリョウがこっちを縋るように見てくる。まるで志麻さんに叱られてる時の廣井姐さんみたいでほっとけない。
「虹夏さん、リョウは今日も動画の撮影手伝ってくれてるし許してあげてよ」
「そう、今回の動画は伸びたら私の美しい見た目とベースのおかげと言ってもいいはずだから許してほしい」
「大きく出過ぎだろ、見た目はひょっとこだったくせに」
「リョウ動画出たの!?すごーい!いいなー!」
「フッ、虹夏もこの高みに登って来るといい、なんなら知り合いの動画投稿者を紹介しようか?」
勢いを取り戻したリョウが業界人気取りで調子に乗り始める。
「その投稿者俺じゃん、紹介されるまでもなく虹夏さんとは仲良しだわ」
「湊くん!今度ウチで撮影の時は教えてね!私もお手伝いするから!」
店長さんからも許可もらってるし近々STARRYで撮影しよう。俺サックスとピアノがメインなのに防音しっかりしてるところか、民家の少ない屋外じゃないとサックスの撮影あんまりできないし、ピアノはストリートピアノがあるところか学校へ行ってみたとかになるから、人に囲まれずに撮影したい時の場所が確保できるのがありがたすぎる。
「動画に出るなら虹夏にもお面貸してあげる」
「お面必須じゃねーよ、俺のチャンネルをどうするつもりだよ」
「じわじわとお面をつけた結束バンドで侵食して、最後にはお面を外して乗っ取りを……」
「めちゃくちゃ色モノバンドに見られるけどいいのか?」
「今日みたいにトークで挽回すればいい」
「ちょっとできそうなのがムカつくな」
雑談の時のリョウ、マジでちょうどいい塩梅だったのを思い出す。ひょっとこ面で動画を面白くしてくれてノリのいい言動もしてたのに、雑談で垣間見える音楽への真剣さと愛がかっこよかった。
いつか結束バンドのためになるように、というのが真剣であるのが伝わる。
世界のYAMADAが結束バンドの山田リョウであるとわかっても、結束バンドの世界観に傷がつかないような配慮がされていた。
さすがいろんな音楽シーンを追ってるだけあるよな。
「むー、今話してる二人見て思ったけど、やっぱり私ももっと仲良くなりたいな……湊くんてリョウと喜多ちゃんには砕けてるっていうか、遠慮がない感じがするんだよね」
「リョウは親友だし、喜多さんは打てば響くというか、叩けばいい音が鳴るというか、そんな感じですね」
「私も湊くんやリョウみたいにノリと勢いだけで生きるか、喜多ちゃんみたいにリアクションできるようにならないといけないのか……」
「さらっとディスられてるね、俺ら」
「虹夏もいい反応する。やっぱり虹夏側が遠慮してるのがいけない、郁代は湊の凄さを未だにわかってないから遠慮がない」
「わかってて遠慮がないリョウはなんなのさ」
「私は湊の面白さの引き出し方もわかってる」
ドヤッと胸を張るリョウに虹夏さんもなるほどと頷いてる。少し考え込んだ後に「よし!」と気合を入れて虹夏さんが目つきを悪くしてこっちを見る。
「湊、今から言うやつ注文入れてよ」
少し冷たい口調だけど隠しきれてない優しさ、目つき、店長さんによく似た虹夏さんになった。
「店長さんのモノマネですか?」
「違うよ!名前呼び捨てにして砕けた話し方したの!」
完全に店長さんだった……それはそうと、虹夏さんが頑張ってくれてるなら要望には応えてフランクに話すことにする。
「ごめんて、少しからかっただけだよ、虹夏」
「やっぱりやめよう、リョウと違って私が呼び捨てだとPAさんが泣く気がする」
「どういうこと!?」
「今のは湊が悪い」
さっきまで砕けた話し方がいいと言ってた虹夏さんに梯子を外され、リョウにまで裏切られたけど、まあPAさんが泣かなくて済むならそれでいいと思うことにした。
お礼だー!
⭐︎10をくださった内村憲一様
⭐︎9をくださったむらやん様ssを読む程度の能力様
感想くださった田中読者様、なまこな様
皆様ありがとうございます!
皆さんに幸あれ
具体的には……今2:30で眠いし何も思いつかないや、でも皆さんに幸あれ