酔っ払い拾ったらロックに出会った。   作:西ローランドゴリラ

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27話

 

 リョウとの撮影の翌日、昼間のうちに編集を終えて後日のアップロードへ向けてストックしておく。

 

 夏休みももうすぐ終わり、毎日投稿という苦行を乗り越えた自分を褒めてあげたい。俺はそう思っているのだが、視聴者がまだ俺が夏の締めに入ることを許してくれない。

 日に日に増えるコメントに従って仕方なく、今夜は心霊スポット探索へ向かうことになった。

 

「えー、今日の配信は気ノリしませんが心霊スポット探索です。こういうのは遊び半分でやっちゃいけないって志麻さんに言われてるので、ガチでやばいってみんなが言ってるところは避けて、最近地元の学生の間で話題になってるところを二箇所、見ていきたいと思います。編集が面倒なのでライブ配信にするけど、雑談になればいいと思ってまーす」

 

 ライブ配信で企画を説明するとコメント欄は挨拶と『やっとか』『おせーよ、待ってた』なんかの気安いものが流れていく。

 

「と言うわけで一箇所目、場所は伏すんですけど公園です。ここを通学路に使ってる学校の人が帰りが遅くなった時に幽霊を見たって言ってたらしいです」

 

 なんの変哲もないちょっと暗めの公園だけど、夜中に一人だと確かに怖いと感じる人もいそうな雰囲気。

 コメントを拾いながら歩いていると、夜とはいえ夏なのに黒い服を厚着にした少女が、虚空に向かって話していた。

 

『急に止まるな』

『ポカンとしてるけど何?本当に出た?』

『演技まで身につけたのか、アホの子なのにすごいな』

『なに?』

『なんで止まったの?』

 

 コメントが急速に流れていく。

 カメラを勝手に向けたら失礼だろうから映せないが、状況を説明する。

 

「結構先の方、暗いところに黒い……ゴスロリ系の服を着てる人がいて、何もないところに向けて話しかけてる。声的には歳の近い女の子っぽい」

 

『やば』

『ガチ?』

『声かけてきて』

『仕込みだろ』

『危ないからバレないうちに帰りなよ』

『仕込みできる知能はないだろ』

『仕込みでも女の子をこの時間に一人で行動させる子に育てられてない、ヨヨコ先輩を信じろ』

 

 コメント欄のだいたいはやば、やガチ?を占めて加速していく。知能がないって言ったやつはしばく。

 勝手に映すわけにもいかないけど、ここで何もせずに帰っても盛り上がらずに終わるので、話しかけても大丈夫そうか確認のためにゆっくりと近づいていく。そこでとんでもないことに気づいた。

 

「やばいことに気づいた」

 

 俺の真剣な雰囲気にコメント欄にも緊張が走っていく。心して聞いてほしい。

 

「めっちゃ可愛い」

 

 ゴスロリを完全に着こなした女の子の横顔は美しく、濃い紫の髪は艶やかで美しい。虚空に話しかける怪しげな雰囲気までを一つのファッションとして成立させているような少女が、薄暗い公園に立っていた。

 

「さっきから私のこと見てる方〜、気づいてますよ〜?」

 

「すみません!見惚れてましたー!」

 

 配信のことは置いといて、お詫びのために近づいていく。

 

「最近ここに幽霊が出るって聞いて来て、何もないところに話しかけてるのが見えたので近づいてみたら、綺麗な人だったんで見惚れてました。失礼なことしてすみません」

 

 改めてお詫びをして頭を下げる。

 

「そういうことでしたら許しますよ〜」

 

「ありがとうございます」

 

「ただ、私は一人じゃなくてお友達と話してました〜」

 

 そう言って彼女は手を少し上に上げる。

 服で大部分が隠れていてさっきは気づかなかったが、彼女の手には二つの西洋人形が握られている。

 

「ああ、ごめんね気づかなくて。ルシファーさん、ベルフェゴールちゃん」

 

「「…………えっ??」」

 

 俺と目の前の彼女の驚く声が重なる。俺は今なんでこの人形たちの名前がわかった?確かに声が聞こえた気がしたけど、明らかにそんな時間もないし、彼女の声でもなかった。まさか……本物?

 

「ふ……ふふ……この子たちの名前がわかるってことは本物さんですか〜、驚かそうと思ってましたけど、驚かされちゃいましたね〜」

 

 俺の霊感は廣井姐さんの部屋のポルターガイストの音色から意思を感じ取り、志麻さんによって幽霊の存在を教えられて目覚めた正真正銘の本物。

 それを理解した向こうも当然本物。

 

「あなた気に入りました、写真撮ってあげますよ〜」

 

「あ、待って今配信ちゅ……」

 

 志麻さん以外に初めて霊感のある人に出会って呆気に取られていたから彼女の接近を許してしまう。

 映さないようにと配慮していたスマホが、ロック画面からカメラに移行しようとしたであろう彼女の手によって俺たち二人を映し出す。

 ツーショットを撮ろうとしてくれたのか距離の近い美少女、フリーズする俺、加速するコメント欄。

 

幽々(ゆゆ)のこと褒めてくれたんでご褒美にって思ったんですけど〜、困ってます〜?」

 

「今引っ付かれてさらに困ってます〜!てか配信切ろう?幽々さんの顔も流れちゃうよ?」

 

「ん〜、こっちの方が楽しくなるってサタン様が言ってる気がするんで〜」

 

 自分のことを幽々と名乗った彼女がなぜかさらに引っ付いてくる。

 顔が可愛い、口もとのほくろがセクシー、いい匂いする、柔らかい、助けて」

 

「ふふふ、口に出てますよ〜?」

 

「思ったことが口に出るタイプでよく叱られます!ところでスマホ返してくれます?配信切りましょう!?」

 

「ん〜、確かにこれ以上は良くないことが起こりそうなのでいいですよ〜」

 

 あっさりと返してくれた、助かる。

 受け取ってすぐに画面に向かって話しかける。こんな事になるなら編集をめんどくさがらずに動画にすればよかった。

 

「とりあえず今日の配信終わりね!?終わり!もう心霊スポットどころじゃないし!幽々さん配信にのったの謝るから!おやすみなさい!」

 

 コメント欄はかなり加速してたけど、特に見ずにすぐに配信を閉じた。アーカイブも見れないように設定しておく。

 

「ごめんね幽々さん、もう見れないようにしたけど配信に顔のっちゃった」

 

「いえいえ、私からやったことですから〜」

 

「そう?もし困った事があったら言ってね?連絡先は教えとくから」

 

「困ったことが無くても連絡します〜」

 

 

 

 最初の印象以上に不思議な雰囲気を持つ内田幽々さんと連絡先を交換して、別れるころには多少打ち解けた。

 友達が増えたと思えばいい時間だったけど、トゥイッターのリプライが凄いことになってたし、その中に音戯アルトの文字列、アルちゃんからのものもあった。

 

 アルちゃんの配信にこの前顔を出さなかったのに今日女の子と仲良くなった事にご立腹らしい。嬉しすぎてふひひって気持ち悪い笑いがでた。





お礼!

⭐︎10をくださった山田蒼様
⭐︎9をくださったしーろ様、かつのしん様
⭐︎1をくださったMeLt8795様

ありがとうございました!

⭐︎1がついても平均評価が思った以上に下がらず、高評価をつけてくださる方の多さに感謝の限りです。

特に供給の少ない子たちの自給自足してるので解釈違いにビビリちらしてます。

毎度のことながらですが低評価の方もぼざろ好きな仲間ってことでいいことあるといいね



皆さんに幸あれ
具体的には昼飯奢ってもらうくらいの幸あれ
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