酔っ払い拾ったらロックに出会った。   作:西ローランドゴリラ

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28話

 

 やあみんな、俺は咲良(さくら) (みなと)!世代最強って言われてるサックスとピアノメインの演奏者だよ!ちなみに今みんなに話しかけてるのは現実逃避さ!

 なんて心の中で自己紹介してみて遊ぶ。漫画の主人公になったみたいでちょっと楽しいかもしれない。

 

「咲良くーん、ちゃんと考えてるのかしら〜?」

 

 喜多さんが頬を引っ張って、ややお怒りでいらっしゃる。

 

「ごめんなさい、ちょっと現実逃避してました。すごくわかりやすく教えてもらってるのに、自分で解くとなるとさっきまで分かってた解き方がどこかへ消えていくんです……」

 

 数学、難しすぎる。物理、計算するために覚えることが多すぎる。その他、色々ダメ。

 

 成績優秀な喜多えもんに教わってるのに、大変情けないことになっていた。

 

「まあまあ喜多、許してやりなよ、結構長い間勉強してるし休憩しよう」

 

「さっつー!」

 

 ああ、さっつーから後光が差して見える。

 ありがたやー、ありがたやーと手を合わせて祈っておく。

 

「休憩がてらミナちゃんに聞きたいこともあるんだよね、昨日の女の子のこととか」

 

「昨日の女の子ってなにかしら?咲良くん!」

 

 恋愛ジャンキーの喜多さんが爛々と目を輝かせる。

 

「ミナちゃん、この子タイプっぽいし、面白い話聞けそうだから楽しみにしてたんだよね」

 

 さっつーの手には昨日の配信に映ってた幽々ちゃんとのツーショット。

 

「さっつー!?」

 

 喜多さんは忙しいから俺の動画を見ていないらしいし、クラスでも俺のことが話題になってない上に、昨日のはアーカイブにも残ってない。

 そして今日は何事もなかったかのように宿題を終わらせる会が始まったから完全に油断していた。

 

 まあ、勉強で疲れて騒ぐ気力もないし、それほど隠すこともないから大人しく話すか……

 

「ちなみにこの時間を選んだのは、勉強で弱ったミナちゃんが諦めて話すと思ったから」

 

 獲物を見つめるような目でペロリと舌なめずりするさっつー、俺への理解が深すぎる。

 そんな俺を追い詰める形で発揮しないでほしかった。

 

「さっつー……」

 

「咲良くん、さっつーが鳴き声みたいになってるわ……」

 

「さつさつー」

 

「「ぷっふふ」」

 

 高い声で鳴き声みたいにしたらウケた、やったね。

 

 

 

「というわけでね、あの配信じゃ伝わらないけど幽々ちゃんは家の家事をよく手伝ってるめちゃくちゃいい子で、趣味の服も自分で作ってるんだって!」

 

「うぅ……苦労してるのね……」

 

「ミナちゃんも喜多も涙もろすぎでしょ……」

 

「だって!それを当たり前のようにサラッと話すんだよ、幽々ちゃんは!それが余計に涙腺にくるというか……いい子なんだよ!」

 

「わかるわ……わかるわよ咲良くん……」

 

「感受性……」

 

「それだけじゃないよ、この話で泣くのは同情するみたいで失礼って取られてもおかしくないのに幽々ちゃんは……そんなに私のことを想ってくれて嬉しいって……優しいんだよぉ!」

 

「うええええん!」

 

「確かにちょっと泣けてきたかも」

 

 俺が幽々ちゃんがいかに人ができた子なのか伝えると喜多さんはついに言葉なく涙を流し、さっつーの目にも涙が流れた。

 

「それで俺にできること聞いたら下の子のためにも食材買ってほしいって言われて、昨日はそれを一緒に家まで持っていって解散したんだ」

 

「ねえミナちゃん、多少打ち解けたって聞いてたんだけど……それで多少なの?」

 

「え?うん、まだセッションもしてないし、遊んでもないから」

 

「うぅん……頭の中が音楽と子どもの価値観に支配されてる……ま、ミナちゃんはそれでいいか」

 

 なんだかさっつーが優しい表情になって頭を撫でてくる。反応に困って喜多さんに助けを求めるけど、喜多さんはまだ言葉にならない嗚咽を漏らして泣いている。

 

「私から話振っといてなんだけど、ここから勉強する空気に持ってくの、むずくね?」

 

 さっつーから気分転換の提案があって近くのコンビニへスイーツを買いに行ってから、さっつーの家へと戻った。

 宿題に苦しめられてはさっつーのトイプーに癒されて、なんとか夏休みの宿題を終えられた。

 

 

 

 一方、PAさんのいるSTARRYでは……

 

「おはようございます……」

 

「PAさん、今日も弱ってるね」

 

「夜型なだけだろ」

 

「いやいや、おねーちゃんわかってないね、昨日の湊くんの配信に出た子、姫カットのロングで湊くんをからかってたから、キャラ被りに悩んでるんだよ」

 

「ゔっ……」

 

「トドメ刺すなよ、めんどくさいだろ……」

 

 虹夏がPAさんに見せた画面には自称スパイの喜多から送られてきた幽々と湊の関係。

 喜多が泣くほど感動したのもあってただただ良い話として伝えられていた。

 

「ほら!湊くんはそもそもPAさんが好きなんだし大丈夫だよ!元気だして!」

 

 しかし、PAさんは小刻みに震え、目尻からは涙を流している。

 

「あれ?どうしたのPAさん?」

 

「お前、これから仕事なのに泣かせるなよ……」

 

 呆れながら少し怒る星歌から虹夏を守るため、PAさんは頭を振る。

 

「違うんです店長、これは悲しいんじゃなくて……尊いんです……わかります?湊くんの魅力は演奏はもちろんゲームやアニメへの楽曲提供や編曲での世界観の解釈や引き立て、それについて語る時の大人びた表情や演奏中の色っぽさはもちろんなんですけど、何よりも純粋で優しくて、子供っぽく笑う時が一番素敵なんです。誰かのために泣ける湊くんを思うとこう私の胸がすごくキュンと締め付けられるというか……好きぃ……」

 

「長い長い長い、怖いよPAさん!」

 

「お前、これから仕事なのに虹夏を怖がらせるなよ……」

 

 PAさんが推しに狂っており、明日、湊が出勤することに星歌は不安を覚えた。




お礼でござーい!

⭐︎9をくださった最後のサイコロ様
何度も⭐︎9を付け直してくださるかんぴょうさんは頑張れって感じのかんぴょうさんで、点数には反映されない喜びがあります。

⭐︎2をくださったubume様

感想をくださった田中読者様、なまこな様

皆様ありがとうございます!

皆様に幸あれ!具体的には推しの供給が増えるくらいの幸あれ!
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