酔っ払い拾ったらロックに出会った。   作:西ローランドゴリラ

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31話

 

 田中と俺が地獄を見た始業式から数日、今日は晩御飯がいらないと母さんに伝えてある。

 なぜならば……この前結束バンドがバイト抜けた日に頑張ったご褒美、店長さん、PAさんとご飯を食べに行く日だから!

 

 楽しみすぎて授業なんて何も頭に入らない。HRで文化祭の出しものとか決めてたけど、5組のみんなは部活で忙しいから、家に帰って各自で作業を進められる展示に決定。

 テーマは『ルーツ』自身の部活やその他活動を始めたり、のめり込むきっかけになったものの紹介。

 

 俺は当然ロックだし、SICK HACKの紹介なんていくらでもできるわ。音楽の魅力だけじゃなくて廣井姐さんの凄さまで紹介し尽くしてやるわ。

 ってことで息巻いてると、後藤さんが倒れたという報告を受けたので、喜多さんと様子を見に保健室へ来た。

 

「後藤さん大丈夫?倒れたって聞いたけど……」

 

「あっ……全然大丈夫です」

 

 まあ後藤さんてよくわからない生態してるし大丈夫だろうな、と思ったところで喜多さんが後藤さんの横に置いてある紙を持ち上げた。

 

「ところで後藤さん、個人ステージ出たいの?」

 

「普段は学校の外で活動してるし、学内でやるのも楽しそうだよね」

 

「そうよね!」

 

 喜多さんはこの前の台風で自分の友達の前でライブできなかったから、この機会にやりたい気持ちも強いのか、すごくキタキタしてる。

 

「あっいや、それはっ……」

 

「私も出たいと思ってたのよ!」

 

「あっ……でも虹夏ちゃんとリョウさんは他校だし……」

 

「きっと二人ともOKくれるわよ!」

 

「うぐっ!!」

 

 後藤さんが返事をする前に喜多さんが話を進めてる、まあ後藤さんも用紙を書いてるし嫌なはず無いし……虹夏さんとリョウの都合を聞かずに話を進めるのもよくないからまだ提出してないんだろう。

 

「あっいや……すみません。猶予を……どうか考える時間を……後生ですから……」

 

「後藤さんがこれ書いたのよね!?」

 

 違った、結構嫌がってた。

 その後も適当な言い訳をして保健室のベッドにこもった後藤さんを置いて、喜多さんは保健室を出た。

 喜多さんのその顔が寂しそうだったから、後藤さんがやりたい事を何かで縛りつけて諦めるのはもったいないと思ったから、余計なお世話を焼くことに決めた。

 

「で、後藤さんは何を心配してるの?」

 

「え?……あ、えっと……まだいたんですか?咲良さん……授業始まりますよ?」

 

「まあね、俺は授業に出なくても人生なんとかなるし、それより後藤さんのことが気になったから」

 

 後藤さんが慌てたように何やら暴れ出す。本気を発揮できればどこでだって輝けるのに、この人見知りはもったいない。

 

「なにか不快な思いをさせましたでしょうか?すみません、すみません」

 

「頭打ったんだから土下座なんてしないで大人しく寝てなよ……後藤さん、文化祭のステージに出るの、何が不安なの?」

 

 しばらくの沈黙、何度も何か言おうとして言葉にできなくて口をパクパクさせるだけの時間の後、後藤さんは声を発した。

 

「文化祭ライブなんてステージ、私みたいな陰キャに似合わないし、青春ロックで盛り上げるなんてできないから退学になるのがオチなんです……」

 

「それで退学ってどんな校則だよ、ならないよ」

 

「あ……うぅ……」

 

「それに陰キャの何がダメなんだよ、いいじゃん。お陰で後藤さんは作詞ができてる!もしナメられてるとして……周りからの評価なんて音でぶっ壊すのがロックじゃない?」

 

「でも……私バンドでの演奏はまだまだで……」

 

「そんな後藤さんを信じてくれてるバンドメンバーは出たいって言ってたよ……応えなくていいのか、ロックンローラー。応えたくないのか、後藤ひとり!応えられるだろ、ギターヒーロー!!」

 

「……っ!」

 

「後藤さんがすごい人なのも、ロックなのも知ってるから楽しみにしてるよ。この前来たクラスの男にも後藤さんのファンになったやついたし……増やそうぜ、ファンを」

 

 そう、ギターヒーローを焚き付けられるのは今この瞬間は俺だけだ。喜多さんは後藤さんがすごいと自慢してよく聞かせてくれる。

 みんなにもそれが知られてほしいと言っていた。

 それに文化祭で成功すれば、後藤さんに友達ができたり、アガり症がマシになったりするかもしれない。

 

「ま、とはいえ他の二人の都合もあるし、考えたいこともあるだろうから他の人にも相談してみなよ。きっと後藤さんのライブを応援してくれる人は多いよ」

 

「はい……」

 

 あとは店長さんあたりに相談すればうまくいくだろう。前に店長さんは後藤さんの成長を見守ってあげたいって言ってたし。

 言いたいことは言ったから、もう出て行くことにしよう。授業サボって女の子といたなんて知られたら、クラスの奴らにどんな目に合わされるかわかったもんじゃない。

 

「勝手に熱くなってごめんね、俺もそろそろ行くよ」

 

「あ……あの!……咲良さん、ありがとうございました。あと……一つ質問いいですか?」

 

「礼を言われるほどじゃないよ、質問は答えられることなら答えるけど?」

 

「咲良さんの目指すロックンローラーは、どんな人ですか?」

 

 俺の憧れた廣井きくり(ロック)は……。

 

「社会とか周りがどうかよりも目の前の誰かや仲間を大事にできる、そんなめちゃくちゃかっこいい人」

 

「……ありがとうございます、ちょっと前向きになれました」

 

「お、じゃあ文化祭ライブ出る?」

 

「あ、それはもう少し考えさせてください」

 

 ここで断る心の強さをどうして他に活かせないのか。





礼!

⭐︎10をくださった神と髪様、ふるさび様

⭐︎9をくださったぱすた◯様、rains2様

感想をくださったなまこな様、田中読者様、ひつまぶし様

皆様ありがとうございます!

皆様に幸あれ!
具体的にはぼざろの映画観に行くくらいの!

まじで早く仕事上がって観に行きたい!!
新曲聴きたい!
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