酔っ払い拾ったらロックに出会った。   作:西ローランドゴリラ

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32話

 

 咲良さんが出て行った後、文化祭ライブが気になってオーチューブを開いた。

 

『お前ら、盛り上がる準備できてるか〜〜〜!?』

 

『『『『イエ〜〜〜〜ィ!!』』』』

 

 流行りの青春ソング、イケメン陽キャ男子、女子の黄色い歓声、謎のペンライト。

 私はただライブ映像が見たかっただけなのに、何でホラー映像が流れてるんだろう……。

 

 自分がライブに出る姿を想像してみても、喜多さんはもちろん、他校の虹夏ちゃんやリョウさんにも声援で負けてるところが容易に思い浮かぶ。

 陰キャにはハードルが高すぎるイベントだったんだ……。でも、咲良くんの言葉が胸に刺さってまだ諦めさせてくれない。

 

「そんな後藤さんを信じてくれてるバンドメンバーは出たいって言ってたよ……応えなくていいのか、ロックンローラー。応えたくないのか、後藤ひとり!応えられるだろ、ギターヒーロー!!」

 

 咲良さんは元気で真っ直ぐで明るい人、だけどいじめられてたって私よりも暗い生活も経験した人でもあって、オーチューブも私より登録者が多くて……すごい人。

 そんな人が私をロックだと言ってくれたから、それに応えたいと思わされてしまってる。

 バイトへの道すがら、一人で考えていてもずっと消えない咲良くんの言葉が私の中から消えることはなかった。

 

「あっ店長さんおはようございます」

 

 STARRYにつくとダメな私はゴミ箱(定位置)につく。

 

「えっ仕事してよ……なに……?なんかあったの?」

 

 話聞いてくれる店長さん優しい……。

 

 

「ふーん、迷ってるくらいなら出たほうがいいと思うけど、一生に一度の青春の舞台だし」

 

 青春の舞台……そうだ、文化祭ライブは学生の間しかできないことなんだ。うっ動画がフラッシュバックする……。

 

「まぁ私は高校ろくに行ってないから、いま適当に言ってるけどね」

 

「私は高校中退でーす」

 

 店長さんもPAさんも私みたいな陰キャじゃないし参考にならなかった。相談するんじゃなかった……。

 

「おや珍しくお姉ちゃんとぼっちちゃんが話してる!何話してんの?」

 

「後藤さんが文化祭の事を憂いてるんです」

 

「文化祭ライブ出ようか迷ってんだって」

 

 店長さんがライブのことをバラしてしまう、こんなの明るい虹夏ちゃんに聞かれたら……

 

「あっうっ!」

 

 もうダメだ、緊張して変な声がでた。きもいって思われてるんだ、死のう。

 

「え!いいじゃん出ようよ」

 

 こう……なってしまうんだ……。

 私みたいな陰キャの気持ちなんて誰にもわからないんだ、虹夏ちゃんもリョウさんも文化祭ライブ経験者だし……リョウさんなんて「マイナーな曲弾いて会場お通夜にしてやった」って誇らしげだし……。

 

「あたしもリョウとは文化祭ライブしたことないし出たいな〜」

 

「私もオリジナル曲をハコ以外でライブしたい」

 

「こういうバンドがあるんだって知ってもらう良い機会だよ!」

 

 二人とも乗り気だ、でも、でも。

 

「でも高校の文化祭って青春ロックで盛り上げないと退学なんじゃ」

 

「そんな校則ないでしょ!」

 

 虹夏ちゃんが言うならほんとに大丈夫なんだ!

 

「とはいえ、ぼっちの迷ってる気持ちもわかる。下手したらハコより多い人の前で演奏するわけだし、というか絶対多い。だからそんな焦って決めることでもないよ、来年もあるんだし無理しない範囲でできることからするべき」

 

 リョウさん!陰キャの気持ちなんてわからないって捻くれてすみません。私の気持ちとてもわかってくれてました!

 

「正直お通夜になったライブたまに夢に見る……」

 

「強がりだったのかよ」

 

「まさかあんなにしらけるとは……」

 

 リョウさーん!むしろ私の不安の先を行ってた!

 ああ……でも、それでも出たいって言ってくれたんだ。みんな出たいと思ってるんだ、かっこいいな。

 私の目指すロックンローラーなら、こんな時にみんなを引っ張っていけるはず。それに咲良くんの目指すロックンローラーは……さっきの質問の答えは……

 

「咲良さんの目指すロックンローラーは、どんな人ですか?」

 

「社会とか周りがどうかよりも目の前の誰かや仲間を大事にできる、そんなめちゃくちゃかっこいい人」

 

 文化祭でみんなとライブ……やりたい。

 

「前向きに考えてみます」

 

「「うんうん」」

 

 こんなに優しくしてくれる人たちの出たいって思いに、私だって応えたい!

 

 

 

次の日

 やっぱりダメだー!!皆すみません……!昨日はいけそうな気がしたけど無理です!大失敗したら卒業までの学校生活耐えられる気しないし!

 

「あ!おはよう後藤さん、やっぱり出ることにきめたのね!」

 

 喜多さん!?学校で急に挨拶されると注目が!あっ、紙から手を離しちゃった、あ……個人ステージの応募用の箱に紙がー!

 あっあっあああああ!!!!

 

 

 

 学校に着くと廊下になんか人だかりができてるから見に行くと、棺桶に入った後藤さんと喜多さんがいた。

 

「喜多さん、何があったの?」

 

「わ、私が声をかけたら後藤さんが深い眠りに!どうしよう咲良くん、私このままじゃ人殺しになっちゃう!」

 

 後藤さんの奇行だからならないと思うけど面白そうだし乗っかることにした。

 

「大丈夫、リョウを連れて面会には行くから……元気でね、喜多さん」

 

「いや!いやよ!リョウ先輩と離れ離れなんて!私はリョウ先輩の娘になるの!」

 

 え、なに喜多さんのその願望、初めて聞いた。

 

「娘にはなれないでしょ」

 

 後藤さんの棺桶も含めてヒソヒソ声で喜多さんがバンド始めてからおかしくなったって囁かれてた。皆、喜多さんはもともと割とおかしくて面白いよ。





お礼!

⭐︎9をくださったlkust様、ライジングフリーダム様

ありがとうございます!

映画見てきました。新曲もよかった……FTもよかったしアンソロ3巻もよかった。

原作最高という思いがありつつ、こちらでは主人公の影響でちょっと前向きになったぼっちちゃんがギリギリまで悩んで、最終的に自分で、自分で?文化祭ステージに出ることになりました。

今後ともよろしくお願いします。


皆さんに幸あれ!
具体的には映画特典の色紙で皆さんの推しがもらえるくらいの幸あれ!
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