酔っ払い拾ったらロックに出会った。   作:西ローランドゴリラ

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35話

 

「はぁ〜酒うめ〜〜」

 

 STARRY清掃をしてると、今日もやってきてた廣井姐さんがお酒を飲んで店長さんと虹夏さんに冷たい目を向けられている。姐さん今日ライブなのにここにいていいのかな?

 

「私みたいなダメ人間がいる事で、こんな大人にならないようにしようって皆の反面教師になってやってんの!これで咲良ちゃんは良い子に育った実績があります!」

 

「廣井姐さーん!廣井姐さんはダメなんかじゃないです!俺が音楽続けられてるのは姐さんのおかげなんです!」

 

 良い子だなんて褒められたのが嬉しくて廣井姐さんに抱きつく。俺が音楽を続けられてるのは、あの日廣井姐さんに出会えたおかげなんだ。廣井姐さんがダメなはずない。ライブの日になぜかここにいるけどダメなはずがないんだ。

 

「ほんとに湊は良い子に育ってるな、お前と違って」

 

「でしょ、自慢の子!私がここにいれば最近うじうじしてるぼっちちゃんも立ち直るはず!」

 

 俺と姐さんの横で後藤さんがゴミ箱に入ってやどかりみたいになってる。やどかりって美味しいんだよな、食べたいな。

 

「ぼっちちゃんは可愛いからそのままでいいんだよ」

 

 店長さん優しい、でもそのままは流石によくないと思う。

 

「ぼっちちゃんどしたの?心配事でもあんの?」

 

「えっ……あ、文化祭ライブがあって……いっ、いつもの箱のライブより多い人の前でライブするの怖くて……そっ、想像もできないし……」

 

「ぼっちちゃんこれあげる」

 

 後藤さんまだ悩んでたんだ。でも俺は何もしなくていい、今日は姐さんがいる。こんな時に姐さんは手を差し伸べてくれるんだ。暖かくてかっこいい人なんだ。

 廣井姐さんが差し出したのはライブのチケット。

 

「えっ、これ……」

 

「私のライブチケット、よかったら見に来なよ。この前のおかえし!」

 

 見る人が安心するような笑顔を浮かべた廣井姐さんは、そのまま結束バンドのみんなにもチケットを配る。虹夏さんと喜多さんはチケット代気にしてる、一方でありがたく受け取ってるリョウはさすがだ。

 廣井姐さんレベルの人にチケット代なんて気にするのは逆に失礼な話だからな。

 

「ちょっと君ら、私の事学生から金巻き上げる貧乏バンドマンだとか思ってんの?」

 

「違うんですか……?」

 

「咲良ちゃーん!!」

 

 今度は姐さんの方が抱きついてきたので頭を撫でて二人を威嚇する。

 

「ガルルルルル!」

 

「ああ!違うの湊くん!SICK HACKが人気なのは知ってるけど、いつも安酒飲んでるし、最近シャワーもうちで借りてくから!」

 

「そうだぞ、家賃払え。てかいつも高校生の湊にたかってるだろ」

 

 虹夏さんと店長さんの話に反論するため、廣井姐さんが俺の腕から離れる。

 

「こっこれには深い理由が!!……泥酔状態でライブするから毎回機材ブッ壊して全部その弁償に消えてんの……風呂なしアパートに住んでんの……」

 

「自業自得じゃねぇか」

 

 あ、帰ってきた。泣いてる。

 

「廣井姐さん、うちはいつでも歓迎しますから来てくださいね、なんなら住んでくださいね」

 

「それすると満たされすぎて曲が作れなくなるからぁ……」

 

 プロ意識!生活から音楽に捧げてるのはさすが廣井姐さんだ!

 

「湊、山田にもだけどお前はベーシストに貢ぎすぎだ、あんまりベーシストに近づくな」

 

「そういえばこの前知り合ってた幽々ちゃんて子もベーシストよね?」

 

「喜多さん、このタイミングでそれバラすのはやめようよ」

 

「ベーシスト二人と湊、座れ」

 

 店長さんから三人でしっかり叱られた。リョウも姐さんも動画で助けられてること、幽々ちゃんは家庭の事情もあるし手料理を食べさせてもらってることで情状酌量を得たけど、お怒りな店長さんが怖くて三人で身を寄せ合いながら泣いちゃった。

 

「ていうかお前禁酒しろよ、ライブ活動する前は全然飲んでなかったろ、体壊すぞ」

 

 店長さんの言うことはもっともだ、SICK HACKは稼げるバンドなのに廣井姐さんにお金がないのはひとえに酒癖のせい。

 演出としては毎回楽しいけど、体を思うなら飲みすぎないでほしい。

 

「俺も、体は大事にしてほしいです」

 

「あー……まあそんな事はどうでもいいじゃ〜ん!よ〜し皆新宿にレッツゴー〜⭐︎」

 

 勢いで誤魔化して姐さんが出発の号令をかける……壁に向かって。

 

 

 

 新宿駅についてすぐ、人の多さに後藤さんが帰ろうとしたり変形したりしたけど俺と姐さんホーム、新宿FOLTについた。

 

「ここが私たちの活動してる箱、新宿FOLTで〜す!」

 

 STARRYよりもダークな雰囲気に結束バンドが呑まれる中、ヨヨコ先輩たちSIDEROSのメンバーがこちらを見ていた。

 

「あ、生ヨヨコ先輩。睨んでるように見えるけど動画見る限りいい人なんだよね」

 

 さすが虹夏さん、よく分かってくれてる。今は俺と姐さんと一緒に来た結束バンドが気になるけど、初対面だから話しかけられずに説明を求めて俺をしっかり睨んでる。チワワってて可愛い。

 

店長(銀ちゃん)おはよ〜」

 

「あぁ?」

 

 廣井姐さんが挨拶すると、姐さんに厳しい銀ちゃんがドスの効いた声で返事した。喜多さんと後藤さんは完全にやられてる。

 

「生銀ちゃんだ〜、今日のメイクも素敵ですね!」

 

「あら〜!咲良ちゃんのお友達ね♡吉田銀次郎37歳で〜す!好きなジャンルはパンクロックよ〜」

 

 喜多さんと後藤さんが完全に置いてかれてるけど、俺の動画視聴者の虹夏さん、もともとライブに来てるリョウは馴染んでる。

 

「銀ちゃんは心が乙女なおっさんだよ」

 

「おい」

 

 後藤さんたちに向けて廣井姐さんがかなり失礼な紹介をしてると、こちらに来た志麻さんがお怒りでいらっしゃる。

 

「廣井、遅刻するなっていつも言ってるよな」

 

「もうリハ終わっちゃったヨ!」

 

 あ、やっぱり姐さんSTARRYでのんびりしてちゃダメだったんだ。SICK HACKのメンバーに会って虹夏さんのテンションが上がってるのもあって、自己紹介を軽く済ませてSICK HACKは準備のため奥へと消えた。

 

 少しして始まるのはSICK HACKの最高のライブ。とりわけ後藤さんは目を奪われていた。

 多くを語らずとも、廣井姐さんはその演奏で、歌声で、後藤さんの心を上向かせた。圧倒的カリスマ、かっこよすぎる……!

 

 

 

 ライブ終わり、SICK HACKのお二人が咲良さんを連れて出て行ったけど、トイレで遅れて戻ってくるお姉さんを結束バンドのみんなと待っていた。

 

「ぼっちちゃーん、私のライブどーだった〜?」

 

「あっよかったです……あっ、あの……お姉さん凄く……キラキラしてました。私なんかとても……」

 

「……私って実はさ」

 

 お姉さんが教えてくれたのは学生時代の話。とても信じられないけど、お姉さんも陰キャだったこと。そんな自分の将来に絶望してロックを始めたこと。ベースを買うのも、ライブハウスも最初は怖かったこと。緊張を誤魔化すためにお酒を飲み始めたこと。

 

「初めて何かをするってのは誰だって怖いよ。でもぼっちちゃんは路上も、箱でのライブもできたじゃん!酒に頼らずに!自分にもっと自信持って!無理なら酒でドーピングしろ!」

 

「みっ未成年です……」

 

 めちゃくちゃなところだらけだけど、それでもお姉さんの言葉は勇気をくれた。どの道私が応募してしまったんだ、やれるだけやってやろう。ダメなら退学したっていい!

 

「あっ……文化祭ライブ……よかったら……来てください……」

 

「うん、行く……あと、君たちにお願いなんだけどさ、咲良ちゃんも文化祭ライブ出るように言ってあげてよ。あの子には学校をもっと楽しんでほしいんだ」

 

 お姉さんが教えてくれたのは、中学の頃に定期演奏会に対して、一人で行った演奏で動員数で勝利した逸話の裏で、咲良さんは実力差に打ちのめされて辞めた人たちに負い目を感じてること。

 そんな彼が今は学校を楽しんでいるなら、もっといい思い出を作ってほしい。そんな優しい願いごと。

 文化祭ライブに出る私からすればそんな声かけ朝飯前だ。お姉さんに勇気をもらった今の私ならそこらの男子にだって声をかけて出演させられるはずだ。

 

「任せてください、この世界の後藤に」

 

「ああっ!あれはダメな時の後藤さんよ!後藤さん、咲良くんのことならリョウ先輩と私に任せて!ね?」

 

「みんな頼もしいね!いえーーい!その意気だよぉお〜〜!!」

 

 テンションの上がったお姉さんが壁を壊してしっかりと怒られてた。




お礼

⭐︎10をくださった白麗様、ぐりーんまん様

⭐︎9をくださったisaです様、痺れもしないし、憧れもしない!様、風宮若菜様、カフェ様

感想をくださったLoyal_Mist様

皆様ありがとうございます!

PAさんのコラボメガネ代引きで届くらしくてめちゃハッピー!


皆さんにも幸あれ!
具体的には寝起きがめっちゃいいくらいの幸あれ!
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