酔っ払い拾ったらロックに出会った。   作:西ローランドゴリラ

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39話

 

秀華高校文化祭 1日目

 

 早く演奏したいけど、それはそれとして今日はヨヨコ先輩と幽々ちゃんの二人と文化祭を周る約束をしてる。

 ヨヨコ先輩はギリギリまで練習したいって言ってたけど、練習は十分したから、根を詰めすぎずにコンディションの調整に専念する方がいいという実利と、二人と周りたいって俺の気持ちを汲んでもらった形だ。

 というか二人と周りたいって駄々こねた。

 

「盛り上がってますね〜」

 

「私たちの高校はこんな空気にならないわよ」

 

「秀華は自由な校風が売りなんで、こういうイベントの盛り上がりが魅力ですね」

 

 さっそく屋台で買ったたこ焼きを食べながら二人と並んで歩く。

 

「湊さん、一つください」

 

「はーい、あーん」

 

 隣で口を開ける幽々ちゃんの口にたこ焼きを一つ入れる。今日も着ているゴスロリと本人のハイライトが無い目から出る雰囲気と違って、幽々ちゃんはB級グルメも結構食べるから一緒に食べ歩きすると楽しい。

 横ではふはふと冷ましながら食べる姿も最近は少し見慣れたものだ。

 

「湊、私も一つ」

 

「はーい、先輩もあーん」

 

「はふはふ、熱い……なんで二人とも平気そうなのよ」

 

 先輩もいつもかっこいいけど、熱くて涙目になるところなんかは普通の女の子だ。

 二人の可愛いプライベートの姿を見れるのはSIDEROSの古参ファンとして自慢できる。

 

「二人とも今日もめちゃくちゃ可愛いですね」

 

「幽々はいつも湊さんに可愛いと思ってもらいたいからです〜」

 

「どこ見て言ってんのよ」

 

 片や微笑んでくれ、片や猫舌をからかってるのかと怒りながら足をゲシゲシと蹴ってくる。うーん、天国と地獄。

 

 天国と地獄を味わってると、見慣れた信号機カラーの三人を見かけた。

 

「へい、結束バンド。おすすめの食べ物は?」

 

「私のおすすめは、たこ焼き、と、チョコバナナ、です」

 

 ちゃんと機械音声っぽく返してくれるあたりさすがだ。リョウの手にはたこ焼きしか残ってないあたり、チョコバナナは食べ切ったんだろう。隣の虹夏さんは両手にりんご飴とチョコバナナを持ってるから、かなり早いペースで食べたっぽい。

 

「りんご飴はつい買っちゃうけど食べ辛いから残っちゃうんだよねー」

 

「でもりんご飴って可愛いですよね」

 

「だよね!さすが湊くん!リョウと違って風情がわかるね!ご褒美に可愛い私と写真を撮らせてあげよう」

 

「ははー!ありがたやー!」

 

 虹夏さんの隣に移ってツーショットを撮らせてもらう。祭り感満載の可愛い虹夏さんを店長さんに送っておいた。

 SIDEROSの二人のところへ戻るとヨヨコ先輩の蹴りが強くなって、幽々ちゃんからも軽くつままれて地獄と地獄へ早変わり。

 

「ねえ咲良くん、楽しそうに蹴られてるところ申し訳ないんだけど、後藤さん見なかった?クラスの出し物がメイド喫茶で、メイド服着せたら逃げたらしいの」

 

「後藤ひとり……姐さんを取ろうとしてる不届者……」

 

 ヨヨコ先輩が不穏なつぶやきをしてる。廣井姐さんがいつものカリスマ発揮しただけで後藤さんは取ろうと思ってないはずだよ、そんなタイプじゃないよあの子。

 

「ごめん、今大通り通ってきたからなめくじが隠れそうな所見てなくてさ」

 

「喜多ちゃんと同じこと言ってる……共通認識なんだ……」

 

「なめくじ?なんでなめくじの話になるのよ」

 

 虹夏さんの反応見る限り喜多さんも同じ反応したらしい、喜多さんと目が合うとウインクされた。戸惑うなかれヨヨコ先輩、後藤さんはそういう生き物なんだ。

 

「さすがね咲良くん。楽しんでるみたいだし探さなくてもいいけど、なめくじゾーンの近くを通ることがあれば確認して、いたら連行してくれるかしら?」

 

「了解、喜多さん、ご武運を」

 

「ええ、覚悟は決めたわ」

 

 喜多さんとグータッチして結束バンドと別れた。というか結束バンドが後藤さん探しにやや速足で離れていった。

 

「人探しの割に深刻な空気でしたね〜」

 

「ああ、それはああなるからなんだ……」

 

 俺が指差す方にゴミ箱やタンクの中を探して徐々に汚れていく喜多さんの姿があった。

 

「「ああ……」」

 

 喜多さんのその姿に敬意が溢れ、敬礼が自然と出た。身嗜みに気を使ってる二人からして、あの喜多さんの姿に思うところがあったのだろう。気づけば二人も隣で敬礼をしていた。

 

 

 少しして、動き出そうという空気になる。

 

「じゃあ幽々たちはお化け屋敷へいきましょう」

 

「お化け屋敷!?もっと楽しそうなチョイスしなさいよ」

 

「先輩、お化け屋敷は定番の楽しそうなチョイスです」

 

「そ、そそそそれは遊園地とかの話でしょ!?文化祭のお化け屋敷なんて私にはチープに映るわ!」

 

「そのチープさも楽しみの一つですよ〜、それに一つだけ凝った仕掛けがあると思ったら実は……みたいなのもあるかもですし〜」

 

 怖い話の定番だよね、お化け屋敷に本当のお化けがいたってやつ。

 幽々ちゃんが楽しそうにヨヨコ先輩をイジってる。二人が仲良くなってくれて嬉しいので、俺も幽々ちゃんに加勢する。

 

「遊べる系、そんなに多くないんで行きましょうよー、ヨヨコ先輩」

 

「行きたいです〜」

 

「わかったわ!わかったから二人で揺らさないの!」

 

 二人して怒られてチョップされた。

 頭を抑えて下を向いたところで、幽々ちゃんの方を見ると目が合う。俺が笑うと同時に幽々ちゃんも悪い顔して笑ってる。

 

 やってやろうぜ幽々ちゃん、俺たちでヨヨコ先輩をビビらせてやろう。

 

 その後、お化け屋敷のトラップを食らっても俺と幽々ちゃんは反応せずにヨヨコ先輩にぶつけて怖がらせ、最後の一本道で追いかけてくる幽霊からヨヨコ先輩が涙目で逃げる中、自分たちはのんびり歩いて幽霊に前を追えと合図する。俺たちの合図を受けた幽霊役も全力でヨヨコ先輩だけを追いかけてくれ、ノリのいいお化け屋敷で楽しかった。

 

「結構凝ってて楽しかったー!」

 

「最後の一本道で何もなかったのが残念です〜」

 

「ヨヨコ先輩が急に走り出したのが一番びっくりしました」

 

「えっ?えっえっ……」

 

 一本道で幽霊に追われたはずの先輩が焦る。俺と幽々ちゃんがのんびり歩いていたことを思い出して、さっきのあれが本当に幽霊だったのだと思い込んでるのか、どんどん顔が青ざめていく。

 

「み、湊、本当は怖かったでしょ?手を繋いであげるわ。幽々もまだ怖いなら繋いであげてもいいわよ?」

 

「いえ、俺は平気です」

 

「幽々も平気です〜、それに今ヨヨコ先輩に近づく方が……」

 

 幽々ちゃんの追い討ちが決まってプルプル震え出したヨヨコ先輩が俺に抱きついてくる。

 

「こ、こうなれば湊だけでも道連れにするわ!あんたは死んでも私と一緒にいるのよ!」

 

 完全にハイライトの消えた目でヨヨコ先輩が俺を見てる。幽々ちゃんと違ってヨヨコ先輩はいつもキラキラした意志の強い目をしてるから、ハイライトが消えるとめっちゃ怖い。

 

「先輩すみません!ふざけすぎました!怖いっす!目に光が無いの怖いっすよ!」

 

「何が嘘なの?もうどうでもいいから一緒に地獄へ行くわよ?ふふふふふふ」

 

「幽々ちゃん助けて!お化け屋敷より怖い!」

 

「ヨヨコ先輩だけずるいです〜」

 

 目に光のない女の子二人に抱きつかれて身動きが取れないでいると「修羅場?」と遠巻きに呟かれるくらいに注目を集め、人混みの中に見慣れたクラスメイトの姿もいくつかあった。

 

 ハンドサインと口の動きで声が聞こえないのに何を言ってるかがよくわかる。『お前を殺す』のハンドサイン、なんで統一されてんだよ……。こんな事になるなんて、お化け屋敷……恐ろしい場所だ。





お礼!
⭐︎9をくださった金のタマ様!

感想をくださったなまこな様!

ありがとうございます!


前話でメタルバンドのメタルだから鉄を意味するSIDEROSに、ヨヨコ先輩のかっこよさ盛れる感じに上手いこと言葉遊びできたと思ったら反応なくて悔しかったので、もっともっとおもろい言葉遊び探してみせまぁす!なんか機会があれば!

皆さんに幸あれ!
具体的には朝から胃腸の調子が良くてたくさん食べれるくらいの幸あれ!

でも私は食欲ありすぎて弁当におかず残せなかったので、これは本当に幸なのだろうか。
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