酔っ払い拾ったらロックに出会った。   作:西ローランドゴリラ

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 喜多ちゃんが最初期登場ifに近い形の話になってるので、原作セリフを多めにしてます。


4話

 

 喜多さんの代わりに俺が演奏する。そうと決まれば急がないと間に合わないと、喜多さんのギターを取りに家へ寄ってから、下北沢のSTARRYというライブハウスへと駆け込んだ。

「こんにちはー!結束バンドのギター、喜多さんの代奏で来ました。よろしくお願いしまーす!」

 

 開店前の静かな店内、明らかにスタッフですよーって雰囲気で頬杖をついてる金髪の女性に挨拶する。すると結構驚いたように目を見開いた。

 

「ああ、消えたってギターの……」

 

「ふぐぅっ!」

 

「はい、消えようとしてたギターの代役です」

 

「ぐぅっ!!」

 

 後ろで罪悪感にやられた喜多さんの呻き声が聞こえる。いつもキターン!て感じの明るい子だったからかなり新鮮で面白い。

 

「で、後ろのもう一人は?」

 

「消えようとしたギターです」

 

「……まあいい、ついてこい」

 

 一瞬眉を顰めたスタッフさんは、喜多さんの所属する『結束バンド』の二人のもとへ案内してくれた。

 

「ちょちょちょちょ、ちょっと!咲良くん!怖い人にあんな紹介の仕方しなくてもいいでしょ!逃げてバンドに迷惑かけるような奴は蝋人形にしてやる!とか言われたらどうするの!?」

 

「わかりやすいかなって、それに目つきはちょっと鋭いけど、めんどくさがらずにすぐ動いてくれたからいい人だよ、たぶん」

 

「咲良くんて意外と度胸あるわよね……」

 

「ロックだからね」

 

 歩きながら、涙目で背中に隠れる喜多さんと話してると、奥から演奏が聞こえる。ベースとドラムとギター(・・・)の音。

 

「あれ、喜多さんが抜けたら二人なんじゃ……」

 

 そのままスタジオへ入るとこちらへ視線が向き、音が止まる。金髪、青髪、ピンク髪の三人がいた。前二人は事前に喜多さんに聞いていた伊地知さんと山田さんで間違いない。そしてピンク髪は間違いなく、今朝見たやべー人だ。

 

「あ」

 

 声出しちゃった、何か続けないのも変だし、やべー人にフィルターをかける。

 

「朝見たロックな人」

 

 ピンクの人も俺の制服に気付いたのか、だんだんと表情を柔らかく……いや、柔らかくなりすぎて顔面溶けかけてる。

 

「あっ、えっと……ロックの申し子です。見られてたんですね……へへっ……」

 

 微妙な空気が場に流れる。

 

「あ、あの、君お姉ちゃんにつれてこられてたけど、どうしたの?」

 

 凍りついた空気を動かすように伊地知さんが話しかけてくれる。

 

「喜多さんに頼まれて代奏に来ました」

 

「ぴょぉおお!」

 

 謎の奇声と共にピンクの人がムンクの叫びみたいなポーズを取ってる、怖っ。

 

「ひとりちゃん怖いよ!」

 

 伊地知さんの叫びも虚しくピンクの人はさっきと同じ人とは思えない姿形を続けている。

 

「時間がないからひとりちゃんは置いといて、喜多ちゃんの代奏って、喜多ちゃんは無事なの?怪我?病気?」

 

 どうやら喜多さんが逃げたことを怒るよりも、この人は心配してくれていたらしい。そんな人の前でいつまでも俺の背に隠れさせるわけにもいかないと、一歩横に避けようとして気づいた。

 喜多さん、すげーしがみついてる。しかも器用に俺の体にしっかりと体が隠れるようにしている。重さも感触も今まで感じなかったのにこの子どうやったの?怖っ。

 

 連続で恐怖を感じながらも喜多さんをペリッと剥がして床におろす。

 

 最初は俯いていたけど、顔をあげた喜多さんはしっかり覚悟を決めた顔をしていた。

 

「私、本当は全くギター弾けないんです!リョウ先輩に憧れて、一緒にいたくて、弾けるって嘘ついてました!何でもしますから無礼を許してください!」

 

 喜多さんは誠心誠意謝る。変な言い訳をしないから、やっぱりいい人だと思う。そんな彼女が音楽を嫌いにならないように、微力ながら助け舟を出そう、そう思った時。

 

「どうぞ私を滅茶苦茶にしてください!」

 

「誤解を生みそうな発言やめて!」

 

 喜多さんの土下座に伊地知さんが叫んだ声が、俺の共感覚には怒ってるようには聞こえなかったので、無粋な発言は辞めることにした。

 

 一方ピンクの人は私は用済み……いらない子……とか不穏なワードを呟き、山田さんがダンボールを被せてなんか落ち着けてる。実際落ち着いてきているようだ。喜んでるけどあだ名がぼっちってどうかと思うよ、ピンクの人。

 

「あの……怒らないんですか?」

 

「気づかなかったあたし達にも問題あるし、ひとりちゃんと喜多ちゃんの連れてきてくれたギター、二人もいれば今日はなんとかなるからね!」

 

「結束バンドさん、そろそろ出番ですけど〜」

 

 伊地知さんが喜多さんを許したタイミングでスタッフさんから声がかかる。結束バンドの出番が迫ってるらしい。

 

「やっば、喜多さんギター貸して、チューニングだけしたい」

 

「あ、うん、ちょっと待ってね」

 

 喜多さんが背負ってたケースを開けると、中から出てきたのはベースだった。

 

「それベースだ……」

 

「ベースって弦が4本のやつでしょ?」

 

「弦が6本のとかもあって、それ多弦ベース」

 

 俺がそう言うとふら……とよろめきながら喜多さんがヤケクソの泣き笑いをした。

 

「ローンあと30回残ってるのに……あひゅう……」

 

「喜多さああああん!!」

 

 駆け寄って抱き止めた喜多さんは今にも崩れそうにプルプル震えてる、てか端っこはパラパラしてる気がする、怖い。

 

「あはははは!大丈夫だよ喜多ちゃん!まだひとりちゃんいるから!隣の子と一緒に演奏見ててよ」

 

 笑顔でそう言う伊地知さんはかっこよくて、俺と喜多さんはフロアに移動した。今日見た演奏は俺と喜多さんにとって、きっと忘れられないものになった。

 

 合わないリズム、なぜかピンクの人はダンボールに入ったままで演奏、滑ったMC。

 

 この流れでこんな酷い演奏あるかよ。




評価つけていただきありがとうございます。
⭐︎9ふくふくふくふくふふふ様、あーくらい様
⭐︎8ハイパー扇風機様

前回誤字報告や評価をくれた方も含め、幸あれ

具体的にコンビニのドリンク買えば無料引換券貰えるやつに、好きなドリンクがピックされるくらいの幸あれ
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