酔っ払い拾ったらロックに出会った。   作:西ローランドゴリラ

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43話

 

 文化祭ステージの打ち上げを結束バンドと合同でするにあたり、騒いでもいい宴会席を取ってあったので、廣井姐さんの参加を店長さんにも許してもらえた。

 

 そしてその騒いでもいいという利点を存分に活かし、乾杯の音頭を取る俺は幽々ちゃんとヨヨコ先輩にも隣へ立ってもらい、簡単な挨拶の締めに入る。

 

「じゃ、俺たちは勝利の美酒で!結束バンドは敗北の辛酸で!かんぱーい!!」

 

「「「「かんぱーい!!」」」」

 

「「BOOOOO!!!」」

 

 俺の挨拶に苦笑いしながらも乗ってくれる虹夏さんと後藤さん。対して不満をぶちまけてくる喜多さんとリョウ。

 優しいね、虹夏さん、後藤さん。でも俺が求めてたのは喜多さんとリョウの反応なんだ。

 

「おやおや〜?何か不満ですかな?喜多郁代に山田リョウ、んっん〜?」

 

「不満よ!私たちのライブも成功したんだから、もっとちゃんと祝ってほしいわ!」

 

「単純に不愉快」

 

「HAHAHA、敗者が何か言ってるけど戯れ事は聞き取れないねぇ!」

 

「演奏中はかっこよかったのに……肝心な時だけかっこいい男!いざという時にしかやれない男!」

 

「廣井姐さんと同じだから全く傷つかないねえ!」

 

「わっ急に流れ弾が!先輩、わたし普段はダメダメって咲良ちゃんにまで言われたんだけどどーしよ」

 

「悔い改めろ」

 

「むしろ湊はもっとダメになるべき。私たちに演奏で勝ったなら、その分プライベートでは負けてもらってないと困る」

 

「そうなるともうリョウに飯奢れないかもな」

 

「そのままの湊でいてほしい」

 

 喜多さんの言葉もリョウの言葉も俺には全くのノーダメージ。廣井姐さんはちょっとダメージ受けてたけど。

 幽々ちゃんは後藤さんの上を眺めて楽しそうにしてるし、ヨヨコ先輩は虹夏さんと比較的普通に話せてる。俺も目をこらすと後藤さん確かにすごいのいるね。

 バンドのリーダーとしての持論なんかも語っててちょっと得意げだし、虹夏さんも興味深そうに聞いてる。

 虹夏さんは俺の動画をよく見てくれてるから、ヨヨコ先輩が本当はすごく優しいのを知ってくれててよかった。

 

「おーい湊!こいつの右耳見てやれよ!」

 

 騒いでると大人組の方から店長さんに呼ばれた。

 さっきから微妙に避けられてたPAさんの右耳が、店長さんによって髪がよけられて見えると、そこには俺の左耳にあるのと同じ、夜桜のピアス。

 

「つけてくれたんですね!」

 

「はい……」

 

 恥ずかしそうに顔を伏せるPAさん……可愛い。

 

「なに見惚れてるのよ、おバカ」

 

「そうですよ〜、今日は打ち上げなんでもっと幽々に構ってください〜」

 

「うはははは!咲良ちゃんモテてるね〜!それでこそバンドマン!よ、目指せ七股!一週間でローテ!三股以上はいいけど二股だけはダメだからね、死ぬから」

 

「ああ、二股は良くないな。かけるなら三股以上だ」

 

 ヨヨコ先輩と幽々ちゃんに引っ張られる俺を見て廣井姐さんと店長さんの意見が珍しく一致してた。

 まあ、廣井姐さんが言うなら間違いない。

 

「わかりました!俺七股目指します!廣井姐さんに自慢できるように!」

 

「湊が七股のクズ男になればプライベートは私の方が良いと言えるはず、応援してる」

 

「リョウも応援してくれるか……いいぜ、期待に応えるのがバンドマンだ」

 

「変なところでアツくならないの!背中に炎を背負うな!」

 

「幽々とルシファーとベルフェゴールちゃんで金土日はもらいます〜」

 

「「「バンドマンの倫理観!」」」

 

 一通り何股かの話をしたら、虹夏さんを筆頭にヨヨコ先輩、後藤さんが声をあげた。常識的だね。

 

 でも、俺はロックンローラーなんだ。

 

 PAさんに惚れた、俺を好きになってくれたヨヨコ先輩と幽々ちゃんの気持ちに気づかずにいるほど鈍感でもなかった。

 イライザさんだって他の誰かに渡すくらいなら俺が欲しい。

 できれば全員を選びたい、欲に正直でいたい。まあ、みんなの了承があるかにかかってるし、PAさんの名前を当ててもないから皆には黙っているけど。

 

 

 

 で、問題発言でちょっとお仕置きを受けた後、喜多さんがぶっ込んできた。

 

「それで、勝負に負けたから罰ゲームを受けるわけだけど、咲良くん、何してほしい?」

 

「え、先にボロボロにしてから聞かれるの?それ」

 

「早く終わらせたいし、何でもいいわよ?」

 

 何でもいいの発言を聞いた瞬間ヨヨコ先輩から嫌な雰囲気を感じたけど、マジで何も思いつかない。

 ヨヨコ先輩からの圧がどんどん強くなってる気がする。

 

「湊なら……いいよ……」

 

「はだけるな、ぶっとばすぞ」

 

「優しくして……」

 

 キレそう……リョウのやつ完全にからかってやがる。

 ヨヨコ先輩から物理的に圧を感じる。肩を強く掴まれてる。

 

「リョウと喜多ちゃんのせいだけど、私たちもバンドメンバーだから仕方ないか!やるよ、ぼっちちゃん!」

 

「は、はい!誠心誠意頑張ります!」

 

 肩取れちゃう、助けてほしい。

 なんか罰ゲーム、罰ゲーム……。俺を焚きつけてくれた恩まで感じてるのに罰ゲームを……皆に……皆?皆で出かけるのとかしたいな。

 

「この前の江ノ島みたいな、皆と出かけるの俺もしたい。結束バンドの皆とももっと仲良くなりたい。俺を焚きつけてくれてありがとう」

 

「そんなの罰ゲームじゃないわ!初ライブの時から咲良くんには感謝してるの!私だって仲良くなりたい!」

 

 感極まると抱きつくタイプの喜多さんが、ヨヨコ先輩に体を止められながらも言葉は止まらなかった。

 喜多さんはずっと対等なクラスメイトでいてくれたんだ、もっと仲良くなりたい。

 

「私はもう仲がいい」

 

 その通りだ、その自信満々な感じ好きだぜ、リョウ。

 

「もちろん私も仲良くなりたい!」

 

 虹夏さんは俺の評価高いけど、視聴者としての接し方というか、距離があったもんな。普通に仲良くなりたい。

 

「わ、私も友達がほしい……です。むしろなってください、いないので……」

 

 後藤さんの返事だけなんか泣けてくるな。あ、この涙勘違いされるやつだな。

 ヨヨコ先輩がすごく優しく抱きしめて撫でてくれた。たぶん俺に同世代の音楽仲間が増えたことを喜んでくれてる。

 違うんだ、この涙は後藤さんのことを思っての涙なんだ。

 

 すごく優しい空気が流れて、結束バンドの皆ともようやく名前で呼び合うことになった。

 それだけじゃ罰ゲームにならないってことで、後藤さんのギターを買いに出かける時に皆からご飯を奢ってもらえるらしい。

 

 リョウだけは本気で辛そうな顔してたのも含めて、心が満たされた。




お礼です!

⭐︎10をくださったSuSoLa様

⭐︎9をくださったナギンヌ様、かんぴょう様、怠惰な兎様、世繋様、クロクマ429様、金平優様

⭐︎8をくださったso_rei_zero様

⭐︎6をくださったそこの人様

感想をくださった金平優様、霧雨 祐介様、なまこな様

皆様ありがとうございます!


頑張ったというか、書きたかった回なので感想、評価が多くいただけてまーじでめっちゃ嬉しかったです!

皆さんにも幸あれ!
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