酔っ払い拾ったらロックに出会った。   作:西ローランドゴリラ

45 / 95
45話

 

「ぼっちちゃんの新しいギター、やっぱりかっこいいね!」

 

「あっ、ありがとうございます……」

 

「御茶ノ水のサタンが姉なのもかっこいいと思うよ」

 

「それはダサいから言わないで!」

 

 なんやかんやあり、ひとりちゃんのギターをしっかり買えて、店長さんの昔の呼び名なんかを教わった翌日、今日はギターヒーローの撮影を見にひとりちゃんの家へお邪魔していた。

 

 最初はひとりちゃんが男を連れてきたってことでめちゃくちゃ騒がれたけど、勝手に虹夏ちゃんの友達ってことで納得された。

 ひとりちゃんはどれだけ人と関わらない人生だったのかと、また涙が出そうになる。

 

「宅録一度見てみたかったから、今日はたのしみだな〜。他の二人にはギターヒーローの事、伝えてないんだっけ?」

 

「あっ、なんか言うタイミング逃しちゃってるというか……まだここだけの秘密で……」

 

「漫画だとこういう秘密から解散とかに繋がるよね」

 

「まあ、リョウと喜多ちゃんなら大丈夫でしょ。むしろリョウは稼ぎに繋がるって喜びそう」

 

「それもそうだよね、なんせギターヒーローがバンドメンバーなんだし……あっぼっちさん、お茶でもどうですか?」

 

「えっどっ、どうしたんですか!?」

 

「たぶんギターヒーローって意識して緊張してる。どうしよう、喜多ちゃんがこんな風になったら……俺学校生活が一気に楽しくなくなる……」

 

「わ、私も喜多ちゃんがよそよそしくなったら……あばばばばば!」

 

「俺たちの学生生活は喜多ちゃんが守ってくれてるんだ、そのまま友達でいてくれ……」

 

「オーチューバー二人に依存されてる喜多ちゃん……すご……」

 

 俺たちの情けない姿を見て虹夏ちゃんの緊張もほぐれて、撮影が始まった。

 そして間近で見るひとりちゃんの演奏は、やっぱりかなり上手い。このままプロでも通用するレベルだ。

 それを見て思い詰めた表情をする虹夏ちゃんの肩に手を置く。

 

「技術はそのうち追いつける、でも心は違う。ひとりちゃんには結束バンドが必要だから、重く捉えるより前向きに上を目指そう」

 

「……そうだね!結束バンドは仲良しがウリだからね!」

 

 持ち直した虹夏ちゃんがトゥイッターやイソスタをやらないのかとひとりちゃんに質問する。

 my new gear…は反応がたくさんもらえるし、リョウがよくやってるやつだ。

 

「新しい楽器や機材買ったら、皆こうして写真あげるんだよ。高価な楽器はいいねがたくさんつくね〜」

 

「えっ、写真あげるだけでこんな簡単に……!演奏動画あげるのもうやめよう……コスパ悪すぎる……」

 

「ところがどっこい、演奏動画は何度も再生されるから収益を考えるなら絶対にやったほうがいい、いいねなんて飾りだよ」

 

「たしかに湊くんて全然マイニューギアしないよね」

 

「ロック文化がよくわからない頃にマウスピースでやってバカにされたし……買わなくてもハードオプの案件来るでしょとか言われるし、あと単純に、なぜかFOLTの人たちと出かけた話の方が伸びるし……」

 

「マウスピースじゃね……湊くん情報でしか接種できない大槻さんのお姉ちゃんぽさとか、色んな人の意外な一面があるから、そこは本当に需要あるよ」

 

「虹夏ちゃんから見てもそう?マイニューギアはやっぱリョウがすごいよな」

 

「湊くんの動画に出てフォロワーも3万人超えたよね……高い楽器速攻で売り買いしてて身内としては引くわ……」

 

「でもいいねつくし、やっぱセンスいいよなぁ」

 

「それはそうかも……」

 

 俺たちが話してる横で、急にひとりちゃんがブリッジを始める。

 

「えぇ……なになにこわぁ……」

 

「あっ、虹夏ちゃん手遅れになる前に私をこれで……」

 

「そのハンマーどこから取り出したんだよ」

 

 何やら葛藤のせいで奇行を起こしたらしく、虹夏ちゃんの勧めでギターヒーローのアカウントを作ることに。

 リア充感を出すために小細工をしたが、作ったばかりのアカウントで投稿が伸びるはずもない。

 

「地道にフォロワー増やさなきゃね」

 

「あっ炎上……」

 

「ちょっと!うちでバイトテロはやめてね!」

 

「荒らしがたくさん来るぞ!?相当な覚悟がないならやめた方がいい!」

 

 その後、全ての機材を投稿してもいいねが足りないと感じたひとりちゃんが飛び出していき、虹夏ちゃんと二人で取り残されて暇になったので帰らせてもらった。家、遠いしね。

 

 

翌日

 

 無駄にエフェクター買いまくって20万を失った上に、ギターヒーローのファンがアカウントに気づいてくれるも、エフェクターがそんなにあってどうするのか、練習しろ、演奏動画あげろ、などの言葉を受けて、ひとりちゃんが落ち込んでいた。……哀れ。

 

「ちょっと!大変な事になってますよ!この前の文化祭ライブ、ダイブの所だけネットに流出してます!」

 

 喜多ちゃんのスマホを見ると、俺が集めた野郎どもによってダイブを受け止められ、そっと地面に立たされるシュールな姿がトゥイッターにまで転載されていた。なんで誰も持ち上げてやらなかったんだよ。

 

「まっ、まぁこんな話題すぐ忘れられるよ!大丈夫!落ち込まないで!」

 

「いいね数負けた……」

 

「落ち込む理由そこかよ」

 

「変なところでメンタル強い」

 

 俺とリョウの言葉も耳に届かず、ぼかしがあるとはいえネットに恥ずかしい動画があがったことより、ひとりちゃんはmy new gear…を頑張ったのにいいねで負けたという数字だけを気にしていた。

 いや、数字だけを追い求めるってそれはそれですごい才能じゃないか?

 さすがはギターヒーローだ。





お礼です!

⭐︎9をくださった青眼の亜白龍様

陸上選手がブルーアイズを見せたので特殊召喚されたっぽいですね、ありがとうございます!

感想くれたなまこな様もありがとうございます!

皆様に幸あれ!
具体的にはレトルトカレー食べるくらいの幸あれ!

レトルトカレーって妙に美味くて食べたくなりますよね
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。