酔っ払い拾ったらロックに出会った。   作:西ローランドゴリラ

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46話

 

 ライターの道は甘くない。

 琴線に触れる技巧派の新しいバンドは見当たらないし、毎日毎日アクセス稼ぎのためのクソ記事ばかりを書いて、なんのために音楽ライターをやってるのかもわからなくなってきた。

 

「ま〜真面目に記事書いても誰も読んでくれないし、高校の文化祭で女子高生ダイブ……これで適当にネタ記事でも書くか」

 

 やる事が決まればあとはいつも通りオーチューブで好きな音楽を楽しむだけだ。

 

「いいな〜湊きゅんは今日も楽しそうで……イソスタでSIDEROSと文化祭ライブしたって書いてたし、推しカプすぎる……湊きゅんとヨヨコお姉ちゃんで一生イチャイチャしてて……お!ギターヒーローさん久しぶりに動画あげてる!ほんっとすっごい上手〜」

 

 学生でも凄テクの人がいるってだけで心が救われる。

 有名バンドは人気のライターに取られるけど、まだ無名のバンドでも私が本当に書きたいような記事を書かせてくれる、そんな人たちがいるはずだと。

 

 

翌日

 

「中国人留学生の呉ナントカさん……いや知らないです」

 

 例のダイブ少女の学校までは特定できたけど、知ってる生徒がいね〜〜……こんな存在感のない軽音部員とか存在する?名前だけはなんとか分かったけど、まさか外国人だったとは……

 こうなったら校内侵入して全クラスに聞き込みすっか〜……

 

「だめだよ!勝手に高校に入ったら!中学生?なんで昼間からこんな所にいるの!」

 

 敷地に踏み込んだところで教員に止められた。

 そんな私を、天は見離さなかった。登校してきた一人の男子が庇ってくれたのだ。

 

「待ってください先生、その人、後藤さんを探してる人です。ロックンローラーを探してる少女なんです!」

 

「だからなんだ、教室へ行きなさい」

 

「こんな小さい子がロックンローラーを探すんです。悩みがあるんでしょう……俺はそれを放っておけない」

 

「それはこの子を通す理由にはならない」

 

「だったら、今は俺がここを出させてもらいます」

 

 なにこの子?なんでアツい話みたいになってるの?アツい子みたいなのは確かだけど。

 

「それは許可できない」

 

「許可の有無?それはロックンロールを止める理由にはならない」

 

「内申に響くぞ?」

 

「だからなんだ、教室へ行きなさい」

 

 教師の言葉を遡るような意趣返し。彼の全てを圧倒するような圧がその場の空気を呑み込んで、空間全てを支配されてるような錯覚に陥る。

 

「そこまで言うならいい、ただ、関わるんならその子の全ての夜と全ての朝にタンバリンを鳴らしてやるんだな……できるか?」

 

「できっこないをやらなくちゃ」

 

 目の前で男二人がアツいハイタッチをして、教員が教室へと帰っていく。私は何を見せられたの?今のなに?てか、まだ登校してきてる生徒いるのにあの教員は帰っていいの?

 

「じゃ、とりあえずダイブした子……ひとりちゃんの話の前に場所移そうか」

 

 とりあえずチャンスだ、下の名前呼びってことはかなり親しいんだろう。ロック語ってたしバンドメンバーかもしれない……てか日本人なんかい!

 

 補導対策で学校指定のセーターを脱いで、少年はカバンの中のSICK HACKのパーカーに着替えた。なんかサボるの慣れてるしバンド好きそ〜!期待できる〜!

 

「それ!SICK HACK!私ファンです!凄テクバンド大好きです!」

 

「まじ!?めっちゃ話わかるじゃん!お兄さん奢るからスタバでもいく?」

 

 奢り!?ラッキー!!中学生って言われたしあたしもまだまだいけるな!今度から14歳って名乗ろう……

 てかさっきの教員と話してた時と、空気感の切り替えすご、湊きゅんかよ。

 

 

 やみちゃんとバンドの話で打ち解けたところで、わざわざひとりちゃんを訪ねる理由を聞いてみることにした。

 歳の近い学生のロックンローラーに直接聞きたい事があったのかもしれない。

 中学生の頃は俺も人間関係に悩んで、たまたま関わってくれるロックンローラー……廣井姐さんが身近にできて救われた。

 彼女もそんな救いをひとりちゃんに求めたのかもしれない。

 

「それで本題だけど、どうしてひとりちゃんを探してたの?」

 

「それ……は……」

 

 

 『フリーライターぽいずん❤︎やみ』こと佐藤愛子23歳は言葉に詰まる。

 目の前の少年はいい子で、自分と同じようにバンドが好きで、どことなく咲良湊に雰囲気が似ている。

 そんな人間の友達であろう少女をネタ記事にしようとしてるのだ。しかし、自分の生活がそれに支えられているのも確かだ。

 

 自分が自信を持って書いた記事は埋もれ、ネタ記事やディスりの記事は面白がって、もしくは炎上のように読まれる。そうして生活の支えとしながら、いつかいい記事を書くと夢見ながら燻ってる自分を直視して、言葉が出なくなる。

 

 苦しみの中、絞り出した言葉は……

 

「自分でもわからなくて……ただ、あなたにとってロックンロールはなんですか?」

 

 

 

 正体すらわからない闇の中でやみちゃんはロックに救いを求めた。

 俺にとって理想のロックンローラーは廣井きくり。ならばロックンロールとは何か?それは彼女の奏でる音楽であり、心。

 

「俺にとってのロックンロールは『鳴り止まぬ愛』だよ」

 

 何か、ハッとしたような顔をして、やみちゃんが俺の手を取った。

 

「あなたのバンド、取材させてください!」

 

 真っ直ぐに目を向けられたのに申し訳ないけど、俺特定のバンドで活動してないんだよね……

 

「俺、バンドやってなくてさ……今日.ひとりちゃんが所属してるバンドのライブがあるんだ、一緒に行こうよ」

 

「行く!行くけどその語り方でバンドやってないは詐欺でしょ!」

 

「HAHAHA!俺もそう思う!」





お礼です

⭐︎9をくださったsaix008様

感想をくださったなまこな様、じなん様

皆様ありがとうございます!
幸あれ!具体的には昼飯でお肉たくさん食べれるくらいの幸あれ!
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