酔っ払い拾ったらロックに出会った。   作:西ローランドゴリラ

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48話

 

 気絶したやみちゃんをよそに、1号さんと2号さんはやみちゃんのスマホを見て、ひとりちゃんの凄さに驚いている。

 リョウがスマホを見せると今度は俺と画面を何往復かして、俺の数字にも驚いてくれた。

 

「ハッ!誰か湊きゅんの話をしてる!?え!目の前に湊きゅんの顔が!何これ夢!?ふわぁぁあああ」

 

 せっかく復活したのに奇声を発して、また意識を飛ばそうとするやみちゃんを揺らして引き止める。

 

「やみちゃん、起きて〜」

 

「目覚ましボイス!?録音しないと!」

 

 気合で持ち直してくれたけど録音はしないでほしい、アイドルじゃないし俺。

 

「湊きゅ……咲良湊さん、今更だけど、どうしてバイトなんかしてるの?」

 

「急だね、色んなバンドの曲が聴けるし、一緒にいたい人がいるからかな」

 

「もしかして大槻ヨヨコさんもこちらで!?」

 

「いや?ヨヨコ先輩は関係ないけど?」

 

「それじゃあFOLTの他の誰かが?」

 

「いないよ?」

 

 俺に質問した後、少しの間やみちゃんが考え込んだ。解釈違いとか呟いてるけど、そのワードは俺からすると厄介で怖いやつだ。

 

「もしかして!ギターヒーローさんと組んでるとか!?さっきのライブは酷い演奏でしたし、普段はお二人で?二人ならウチの編集長にかけあって業界の人にも紹介しますよ!?」

 

「俺はレーベル関係なく好きなようにやるよ、演奏のことは本人の口から聞いて」

 

「え?わっ、私人見知りで……、だからバンドだと上手く合わせられなくて、動画は家で一人で弾いてるから……」

 

「わー!二人とも孤高って感じなんですね!」

 

「そこ、まとめられるほど一致してます?」

 

「ぼっちちゃんにめちゃくちゃ甘いな……」

 

「二人とも、孤高要素はあんまりない」

 

 喜多ちゃん、虹夏ちゃんとリョウのツッコミもどこ吹く風という風にやみちゃんは聞き流す。

 

「でも、ギターヒーローさんに合わせられるバンドがあればいいんですよね?私、紹介しますよ!」

 

 その言葉に場がヒリつく。

 ギターヒーローの全力が発揮できないのは、それについて来れる技量のあるメンバーじゃないからだと言われてるのだ、そりゃあムカつくはずだ。

 

「結束バンドではダメなんですか?」

 

「こんなに皆頑張ってるのに」

 

 1号さん2号さん、結束バンドのファンな二人はやみちゃんの言葉に納得がいかないようだけど、相手は14歳というにはあまりにもしっかりしてるやみちゃんだ。

 バンドへの愛も真剣さも並ではなかったのは今日話してわかっている、だから真剣に結束バンドではない方がいいと彼女は突きつける。

 

「結束バンドは高校生にしたらレベルはまぁ高いと思うけどぉ、でもよく居る下北のバンドって感じだし……っていうか、ガチじゃないですよね」

 

「えっ……」

 

 やみちゃんの空気に結束バンドが呑まれた。

 具体的な反論が出来上がる前に畳み掛けられる。

 

「だって客も常連だけだし、宣伝もそんなにやってないみたいだし、本気でプロを目指してるバンドに見えないんだもん。ギターヒーローさんはもうプロとして通用するので、ちゃんとしたバンドに入った方がいいですよ!いい話ないか色々探しておきますね!」

 

 彼女の言うことは概ね正しい。

 だがそれは社会に適応できる人間的な正しさで、結束バンドの、後藤ひとりの気持ちを、ロックンローラーの魂を無視している。

 

 そんな正しさに価値を見出せるのなら、後藤さんはここまで来れてなかった。

 

「あっあの……私は……」

 

「いや〜、ゴミ記事取材のつもりが大当たりですっ!咲良湊さんもギターヒーローさんも今度単独記事書かせてくださいっ!今の邦ロック業界にドカーンっと衝撃与えちゃ……」

 

「最初からゴミ記事なんてものを作ろうとする姿勢の子に協力することはないよ。それは相手はもちろん、君自身にも失礼なはずだ」

 

「こひゅっ……」

 

 14歳の子相手に怒りを出してしまった。申し訳なさが勝って怒りが治る。

 それに彼女の悩みをまだ解決できてないのに、ここで拒絶して終わりなんてダメだ。

 

「怖がらせてごめんね。取材はダメだけど悩んでるなら今日みたいに息抜きには付き合うからさ……あと、今週末ヨヨコ先輩と文化祭ライブやるんだけど、ライブ見て書いてくれる分には止めないよ」

 

「え、湊きゅんとヨヨコお姉ちゃんのライブ!?ありがとうございます!絶対観に行きます!!!」

 

 すぐに持ち直したやみちゃんにライブの日時を伝えるとしっかりとメモを取っていたし、その目は真剣そのものだった。

 やっぱり、悪い子ではないんだと思う。

 

「もう店閉めるから帰ってもらっていい?」

 

 見かねたのか、顔にマスクをして重装備の店長さんも止めに来てくれた。

 ヒートアップしてきてたから、止めてくれるのは非常に助かる。

 やみちゃんの方は納得いかないみたいだけど、店長さんとPAさんが調べて出てきた個人情報をチラつかせると焦って帰って行った。

 

「ギターヒーローさん、それでは〜〜!今日の事は頭の隅にでもいれといてくださぁ〜い!……こんなところでうだうだやってると、あなたの才能腐っちゃいますよ」

 

 ひとりちゃんに一言残して……

 

 さて、やみちゃん何ていい仕事をしてくれたんだろう。

 体制然とした考えの押し付けなんて、最高の火種じゃないか。それに反抗するのがロックンロールだろう。

 

「なあ皆、言われっぱなしってムカつくよな?」

 

「だね」

「そうだね」

「そうね……」

「はっ……はい!」

 

「世間の言う正しい選択を選ぶのがロックか?世間に居場所がないから、不満があるからロックやってるんだよな!俺は、私はこうだって叫ぶためのロックンロールだよな!」

 

 そうだ、今度は俺が焚き付ける番なんだ。

 

「結果で黙らせてやれよ、結束バンド」

 

 10代アーティスト限定のロックフェス、未確認ライオットのwebページをグループラインでみんなに送る。

 

 返事を聞くまでもなく、彼女たちは意思の強いロックンローラーの目をしていた。

 

 ただ、喜多ちゃんだけはその瞳に少しの不安を残しているようだった。

 




お礼です。

⭐︎10をくださったライジングフリーダム様、HAL1177様

⭐︎9をくださったsefe様、ランマ様、ABcD overjoy様、stss様

⭐︎7をくださったそふび様

感想をくださった田中読者様、なまこな様

皆様ありがとうございます!
皆様に幸あれ!具体的にはめっちゃいい曲に新たに出会うくらいの幸あれ!
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