酔っ払い拾ったらロックに出会った。   作:西ローランドゴリラ

49 / 95
49話

 

 ヨヨコ先輩の文化祭に乗り込んでのライブは三曲全てがSIDEROSの曲で、最高にヨヨコ先輩が輝くステージにできた。

 今日の打ち上げはどうしようか、なんて話しながら帰る俺たちを校門で待つ小さな人影。

 

「あの、咲良湊さん、この前はすみませんでした!今日の記事は最高のものにします!」

 

「やみちゃ……やみさん、やみさんが自分の好きを貫いてくれたらそれでいいよ」

 

 謝罪されたのも、許すのも『ゴミ記事』のくだりだけ。

 ギターヒーローの引き抜きに関しては、彼女が本気でぶつかって、真剣に良かれと思っての提案。

 結束バンドがそれを呑むはずが無いだけで、提案そのものは否定されるものではない。

 

 それくらい、この前好きなバンドについて話したんだからわかってる。俺にそれが伝わってると思ってるのか、潔く怒られる気なのか、自分の信念から出た言葉を曲げたくないのか、いずれにしてもやみさんの態度は好感が持てる。

 

「それはそうと、年齢聞いてびっくりしました」

 

「いやー!その話はしないでー!敬語もやめてー!」

 

「湊が敬語ってことは歳上なのよね?見えないけど」

 

「うん、自称14歳の成人済み」

 

「プフッ、だいぶサバ読みましたね〜」

 

「ぎゃー!現役女子高生の哀れみの目!今日はもう帰りますー!」

 

「またねー、やみちゃん!言われるまで気づかなかったよー!」

 

 走り去るやみちゃんに、ちゃんと敬語をやめて挨拶する。

 

「ありがとー!湊きゅん!ヨヨコお姉ちゃんとお幸せにー!」

 

 うん、それを大声で叫べるんだからやっぱり23歳は似合わないよ、14歳の方が似合ってる。

 

「湊さんのお姉ちゃんてことは私のお姉ちゃんですよね〜、今日はご馳走様です〜」

 

「奢らないわよ!いつ結婚したのよ」

 

「俺の結婚相手に奢る気あるくらいにはお姉ちゃんなんだ」

 

「湊さんが結婚して、弟離れできますか〜?」

 

「ヨヨコ先輩と離れるのはやだな、俺、ヨヨコ先輩とやる音楽が好きだから」

 

「なぁっ……そ、そうね、ずっと音楽するわ、あんたの隣で」

 

「あ、全然正面でバトってくれてもいいですよ」

 

「そこは空気読んで闘争心抑えなさいよ」

 

「幽々も〜、ヨヨコ先輩とバンドしてくんで一緒ですよ〜」

 

「幽々……」

 

 珍しく人前なのにヨヨコ先輩の方から俺たちを抱きしめてくる。

 いつもは恥ずかしがり屋の先輩だけど、ライブの興奮はそんなもの簡単に超えてくる。この気持ちよさを知ると辞められないんだ。

 

「あ、あの!ライブめっちゃ良かったっす!」

 

「それで、もしよければ一緒にやらせてください!」

 

 そんな俺たちに二人組が声をかけてきた。

 緊張と同じくらいに真剣さが伝わる。余計な言葉がない真っ向勝負。ヨヨコ先輩が大好きなやつ。

 

「担当は?」

 

「自分がドラムっす」

 

「私はギターです」

 

 ドラムの加入はかなりでかい。音の厚みや、場合によってはヨヨコ先輩が歌に集中するというところで、ギターの追加も嬉しいところだ。

 

「ま、まずは実力を見せてもらってからね!さっきの演奏聴いてもらったらわかるけど、半端なのが来ても困るから」

 

「ヨヨコ先輩、せっかく来てくれたのにその言い方はないですよ」

 

「抱きついてるの見られて恥ずかしいにしても〜、言い方に気をつけてください〜」

 

「う、うるさいわよ!」

 

 幽々ちゃんに図星を突かれて照れ隠しに怒る先輩は置いといて、二人には俺が謝りにいく。

 

「ごめんね二人とも、ヨヨコ先輩は素直じゃないだけで優しいんだけど、素直じゃなさすぎてちょっとアレなんだ」

 

「大丈夫っす!自分動画見てるんで!それより咲良湊さん、握手お願いしていいっすか!?」

 

「まじ?見てくれてるの、ありがとー!これからもよろしく!」

 

 俺が右手を差し出すと銀髪の子が両手で包んでぶんぶんと勢いよく上下に振る。

 

「はい!よろしくっす!自分は長谷川あくびっす!自分もオーチューブやってるんで今度コラボとかもお願いできるっすか!?」

 

「まじ?よろしくあくびちゃん!SIDEROSのメンバーになれば一緒の時間も増えるし、コラボもやろやろ!」

 

「うおおおお!燃えてきたっす!絶対ヨヨコ先輩に認めてもらいます!」

 

「はーちゃん、そんなに手を振ったら迷惑だよー」

 

「あ、ごめんっす」

 

 やる気に燃えるあくびちゃんが俺の手を持ったまま、上下にブンブンと振り回すのをもう一人の子が止めてくれる。

 穏やかな雰囲気の子だ。

 

「私は本城楓子(ふうこ)って言います。楓子ちゃんだと長いのでふーちゃんて呼んでください」

 

 今度は差し出された手に握手をすると、またも手を包まれた。

 

「これが世代最強の手、なんだか御利益がありそ〜」

 

 おお、彼女は彼女でなんだかマイペースで流れを持ってかれてしまう。手を握られたままにこにこされてるから、どうにも放しづらくて、何も言葉を交わさないまま手を握るだけの時間になる。

 

「あ、ロイン交換してもらってもいい?またヨヨコ先輩に演奏見てもらう日の連絡とかするから」

 

 そのままにしてても進展が無いので話を進めたところでヨヨコ先輩が来た。

 

「明日、見るわ」

 

「明日は路上ライブの予定ですよ〜」

 

「目的はメンバー補充よ、二人が合格したらやる意味はない。それに、ステージの私たちを見て一緒にやりたいって言ってくれた二人よりも良い人材、そう簡単にいるとは思わないわ」

 

 あー、かっけぇ。先輩かっけぇよ。

 目的のために何が大事かブレない姿勢、信念。この突き進む姿が先輩のロックンロール。

 

「二人の予定も聞いてないのにいいんですか〜?」

 

「よ、よろしくっす!」

 

「よろしくお願いします!」

 

 幽々ちゃんだってからかってるけど、その目に確かに先輩への敬意がある。あくびちゃんとふーちゃんにも。

 やっぱり楽しい、この熱い世界は。

 

 この二人が正式にSIDEROSに入ったなら、言おう。未確認ライオットに出てほしいと。

 

 そして、これはまだ言えないけれど、結束バンドやSIDEROSが最後まで登ってきてくれたなら、特別ゲストとして参加するのがもっと楽しくなる。





お礼しもす!

⭐︎10をくださったイタリアン田中様

⭐︎9をくださった
ADveru様、トランプ様

皆様ありがとうございます!

皆様に幸あれ
具体的には美味いホルモン食えるくらいの幸あれ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。