酔っ払い拾ったらロックに出会った。   作:西ローランドゴリラ

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50話

 

 文化祭、SIDEROS結成などのイベントを終えて10月に入った。

 オーチューブの活動、FOLTでのライブ、STARRYのバイトと何気に忙しい毎日を送っているのだが、毎週欠かさないルーティーンがある。

 それが週に一回の、イライザさん家にお泊まりだ。

 

 大きなイベントの前には原稿も手伝うし、一緒にコスプレしてイベントに出るくらいには普段から仲良しの自負があるし、お願いもできるだけ叶えたいのだが、今日はそのできるだけから外れる願いをされていた。

 

「ケモミミ園児パロのための資料のためデス!」

 

「だからなんでケモミミ園児パロなんですか!?」

 

 『ススメ!きらら学園生徒会!』は普通の学園もの4コマ漫画だ。どこからケモミミが生えてきて、なぜ園児に戻り、なぜ俺が園児の格好をさせられるのか、全てになぜと言いたい。

 

「だから、アイデアがふってきたからだヨー」

 

「だからって俺に着せようとするのやめません?」

 

「ご褒美にハグするヨ!」

 

「日常だよ!」

 

 ジリジリと壁際に追い込まれていき、逃げ場が無くなる。

 力技で逃げようと思えば逃げれるのだが、万が一にもイライザさんを怪我させたくないし、力の差で怖がらせたくもない。

 というわけでイライザさんが本気でお願いしてきた時点で、実は俺の選択肢なんてない。

 覚悟する時間が必要だっただけなんだ。

 

「観念シロー!」

 

 勝ちを確信したイライザさんに捕まり、脱がされ、着替えさせられる。

 

「可愛いヨ!湊〜!」

 

 ケモミミ園児服とかいう、どう考えても男子高校生が着たら辛いものを着せられ、無慈悲にも写真を撮られていく。

 これが世に出回ったら俺はたぶん死ぬ、社会的に。

 

 あ、自分の運命が自分とは関係ないところで握られてて、争うことすらできない。そんな絶望の景色を音にしたくなった。

 

 頭の中で描いた光景を音にして、楽譜に起こしていく。

 

「お絵描きの参考資料として最高だヨー!」

 

 その後も机を取り上げられて、床で書いてる姿を玩具で遊んでる姿であったり、曲のイメージの固まりきってない部分のフレーズに悩んでるところを泣いているとされたり。

 息抜きのためのリラックスとして、イライザさんに抱きしめられてる姿など、とにかくたくさんの写真を撮られた中で流出したらやばいという絶望も強くなり、一曲の叩き台が出来上がった。

 

 あとは演奏しながらブラッシュアップするだけだ。

 

「湊のおかげで描きたい構図がどんどん出てきたヨ!ネームはかけたから見テ〜」

 

「拝見します」

 

 奇しくも同じく叩き台まで作業が進んでたイライザさんのネームを見せてもらう。

 イギリスから来たイライザさんにとって日本語の読み書きはまだ苦手の残るところで、その翻訳を手伝うのは最初は志麻さんの仕事だったみたいだが、今は俺の仕事だ。

 

「ここは『ふにゃ〜、みんな可愛いよぉ♡』の方が副会長っぽくないですか?」

 

「確かに!その方が副会長っぽいネ!」

 

 歳下に意見されてるのに、嫌な顔どころか嬉しそうなイライザさんに癒される。まず笑顔が可愛い。それでいて作品を良いものにできるのが嬉しいし楽しいというのが伝わってくる。このひたむきさが大好きだ。

 母国語で話せる人が周りにいなくてストレスを溜めて泣いていた時期も知っている。

 それでも好きを貫いて今笑っているなら、それはロックなんだと思う。そんなイライザさんが大好きだ。

 

 大好きなんだけど、園児服のまま寝かされるのはかなり辛いものがあった。イライザさんが俺のことを普段より可愛がってくるから悪い気はしないけど、羞恥心で死にそう。早く脱ぎたい。そうだ、イライザさんに着せよう。

 

「じゃあネーム完成のご褒美でたくさん褒めるんで、まずは着替えてくださいね〜」

 

「わ〜い!褒めテ褒めテ〜」

 

「イライザ〜、お風呂貸して〜」

 

 園児服を脱いで半裸で女性に近寄る変態、俺だ。

 そして躊躇なく服を脱いで、半裸で男子高校生から園児服を受け取る変態、イライザさんだ。

 どこからどう見てもそういうプレイにしか見えない現場に、廣井姐さんが現れた。

 

「あー、えっと……毎週泊まってるのは知ってたけど、二人ってそこまで進んでたんだ……普通のプレイに飽きた的な?お邪魔しました……」

 

 出て行こうとする廣井姐さんの手を掴んで引き止める。

 

「誤解です、これは一時の気の迷いというか、イライザさんが昂った結果というか……」

 

「誤解じゃないじゃんそれ〜!」

 

「きくりも着てミテ〜」

 

「なんでさ〜!?」

 

 珍しく廣井姐さんがテンパってしまってる。そりゃこんな状況で誘われたら誰だってそうなる。

 

「漫画!漫画のためなんです!」

 

「半裸で園児服持ってるのが?」

 

「そうダヨ〜」

 

「信じられないことにそうなんです」

 

「本当に信じられないけどそうなんだね」

 

 イライザさんの無邪気さと俺の必死さでなんとか引き留め、ネームを見てもらってギリギリ理解を得た。

 

「納得……うん、一応納得。ところで、お風呂貸してもらえますか?」

 

 廣井姐さんにお風呂の許可が下りたので、香りからして三日目の服はイライザさんの指示で洗濯機へ。

 着替えには先ほどの園児服を置いておき、イライザさんとハイタッチ。

 

「あの……他の服は……」

 

「ないです」

「ないヨ」

 

 お酒があまり入ってない廣井姐さんはこれで諦めた。

 甘える姿や泣き顔を作画資料としてしっかりイライザさんに撮られた後、お酒を与えられた。

 

「咲良ちゃん、こうやってデジタルタトゥーってできていくんだね……辛いね……」

 

「俺も廣井姐さんも、元々割と晒してますし元気……出ないっすね、今回のは辛いっすね……」

 

 二人で抱き合って慰め合うも傷は癒えず、廣井姐さんの酒が進む。相当強い酒みたいで、この状態でひっついてると俺も鼻からアルコールを取り込むのかふわふわしてくる……まあいいか!後は寝るだけだし!気持ちいいし!

 酒盛りは進む。この前のBBQの時に父さんが廣井姐さんにあげたお酒も、量が多いからと志麻さんとイライザさんに一部保管をお願いしていたらしく、姐さん曰く質もいいらしい。

 

「これいい酒なんだよね〜、香りがいいから熱燗が最高なんだよ〜」

 

 姐さんが嗅がせてくれて、ダイレクトに衝撃が来るようにふわふわが押し寄せる。

 

「最高っすね〜!早く飲めるようになりたいっす!」

 

「お酒の失敗は怖いからね〜、初めてはお姉さんたちと飲もうね〜」

 

「湊と飲むの楽しみダヨ!」

 

「俺も楽しみっすよ〜」

 

 脱力した体で二人を抱きしめる。いつもより気持ちよくて離れ難い。

 酒盛りは進む。

 

「イライザの写真も寄越せ〜!」

 

「いいぞいいぞー!はははは!」

 

 廣井姐さんが園児服を脱ぎ捨てて、上半身裸でイライザさんに飛びかかる。

 

「着るヨ〜!」

 

 イライザさんはイライザさんで、園児服に着替えると見事に様になったセクシーなポーズを取る。

 

「そんな園児いやだー!ははははは!」

 

「むしろアリっしょ!写真撮ろうぜ咲良ちゃん!」

 

 

 翌朝、目が覚めたら俺と廣井姐さんは上裸、イライザさんは下着姿だった。

 毎週イライザさんと抱き合って寝てるおかげで、俺にもずいぶん耐性がついていたようで、真っ先に抱いた感想は下心ではなかった。

 嘘、8割くらいは下心。

 

残りの2割は……酒の失敗、怖え〜。

 




お礼です!


⭐︎9をくださったレジギガス様、キンキンキノコ様、twols様

感想くださったなまこな様

ありがとうございます!

皆様に幸あれ!
具体的には居酒屋でめっちゃ上手い焼売食うくらいの幸あれ!
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