酔っ払い拾ったらロックに出会った。   作:西ローランドゴリラ

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51話

 

 その日、1年5組に緊張が走った。

 険しい顔で席に座る咲良湊、いつもなら彼は喜多やさっつーと話すはず、しかし、それをしない。

 そして、彼の異変からようやく喜多の不調に誰もが気づき始める。

 

 何度席替えをしても謎に隣の席で、楽しそうにしていた二人だが、ここのところ会話が少なく、喜多の態度自体、最近はテンションがおかしかった。

 

 これは……喧嘩でもしたのか?

 

 バンドマンが音楽性の違いで喧嘩、というのは音楽に詳しくなくても聞く。しかし喜多は初心者で素直な人柄、ぶつかることがあるのだろうか。

 気になったクラスメイトたちは即座に連絡を回し、男子は湊に、女子は喜多に、それぞれ事情を聞くことにした。

 

 

 

SIDE男子

 

 昼休み、湊は朝にコンビニで買ってきたパンを食べようとしたところを男子生徒の波にさらわれ、空き教室に来ていた。

 

「単刀直入に聞こう、喜多ちゃんと何があった?」

 

 湊はいいクラスメイトだと笑みをこぼした。先ほどまでと違って女子がいない空間は彼にとって居心地が良く、喜多を思う彼らの気持ちもまた、好ましいものだった。

 

「俺の言葉に悩んでるんだと思う。喜多ちゃんは前に『ある程度なんでもできるからこそ、熱中したことがない』って言ってたんだ。でも、ロックンロールは性質上、怒りや苦しみも経験してるからこそ魂から叫べる。ボーカルだからそのあたりの感覚がわからなくて歌えないのを苦しんでるんだと思う」

 

 それはクラスメイトにとって、納得できる話だった。誰もが文化祭での湊の姿に魅了された。

 彼の中学での来歴を知った。そして、感情の乗った歌の素晴らしさを知っている。故の納得。しかし疑問が残る。

 

「喧嘩じゃないのか、だったらお前の今日の態度はなに?」

 

 その質問に湊は憂いを帯びた表情で微笑み、天を仰ぐ。同世代、同性のクラスメイトでさえ感じる色気、何があったのかと身構える。

 

「性欲が……発散できてないんだ……今すぐ帰ってソロプレイがしたい……今、全ての女子がエロく見える……まともに女子と会話ができる状態じゃない……」

 

「み……湊……お前、今何日目だ?」

 

 何日ソロプレイをしていないのか、その問いに湊は五本の指を立てた美しい手のひらで返した。

 日数だけではない、彼は朝、ものすごい刺激を受けたため、限界だ。

 滂沱(ぼうだ)。男たちは湊のために涙を流した。

 

「俺、三日間の合宿でさ、限界に達して帰ってすぐした経験があるんだ……湊、辛かったよなぁ!」

 

「誰にだって経験はあるさ!皆!今日は湊を早く返してやろう!それまでは……女子から守るんだ!」

 

「「「おお!」」」

 

 ここに、男子が団結した。

 

 

 

SIDE女子

 

 男子たちが去った1年5組、女子代表としてさっつーが喜多に質問をする。

 

「喜多〜、ミナちゃんと何かあった?」

 

「心配させちゃったのね……何かされたとか、喧嘩とかじゃないんだけど……」

 

 語られたのは、自身がそれなりに上手く人生を歩んで来たからこそ、不平不満を魂から叫べてないこと、ボーカルなのにロックンロールの魂が不足しているという悩み。

 喜多にとって、後藤ひとりの歌詞は暗くて彼女らしい、いい曲だとしか思っていなかった。

 曲に対する理解、彼女から見る世界、彼女が世界に何を訴えたいのか。

 

 それが掴みきれない現状に悩み苦しんでいたのだ。

 

 視線は、再度さっつーに向く。なぜなら彼女もまたヒップホップの人間だから。

 

「いい悩みじゃん、喜多……ようやく真剣になれるもの見つかったんだね」

 

「そうだけど!どうしたらいいかわからないの!」

 

「それそれ〜、その悩みを叫ぶのも正解の一つっしょ!後は……ミナちゃんに相談しよ」

 

 文化祭で誰もが魅了された湊の姿。

 同級生へ向ける恋ではなく、アイドルへ向ける愛のように、クラスの女子も何人も惚れさせられた、ステージ上の湊。

 

 彼ならば、ステージ上のことに悩みを抱える喜多の力になってくれる。今だって、喜多のレベルを上げるために悩む言葉を与えてるに過ぎないと、誰もが信じた。

 

 その中でさっつーだけは、それはそうとミナちゃんが変だったのは、男子たちが解決してくれてんのかな……と湊を特別視せず、ただの大好きな男の子として心配していた。

 

 

 

 そして、それぞれの思惑の中、男子が湊を守りながら教室に着く。

 

「ねぇ、湊くん……」

 

 話しかけようとした喜多は、佐藤(バカ)に止められる。

 

「悪い喜多ちゃん、今日だけはそっとしてやっといてくれないか?湊、男の子の日なんだ……」

 

「なんなのそれ!?……えーと、体調不良なら保健室に連れてくわよ?」

 

「ダメだ、今保健室の江口先生に会わせる訳にはいかない」

 

 美人で胸の大きな養護教諭、普段ならそれだけで痛みが吹っ飛ぶ特効薬だが、今の湊には毒になる。

 

 佐藤の湊への心遣いは素晴らしかった、しかし、男子たちは皆バカで、何も作戦を考えていなかった上に、女子が湊に相談するという流れになったことを知らなかった。

 

「適当なこと言って!どうせまた湊くんがモテるから嫉妬でしょ!醜いわよ佐藤!」

 

「グハァ!」

 

 一人目の犠牲者が出る。

 佐藤の死を無駄にしてはいけないと、田中(バカ)も、彼女がいるにも関わらず立ち上がる。

 

「わかってくれ!今日、湊は男の子の日なんだ!男にだって毎月あるんだ!」

 

 無理がある、あまりにも無理がある。

 なぜバカの話にバカみたいに乗っかったのか、答えはバカだから。

 

「意味わかんない!田中くんのバカ!」

 

「グハァ!」

 

「田中!ただの事実だ!傷つくな!」

 

「彼女に言われるってのは……キツいもんさ……」

 

「田中ー!!!!」

 

 かなちゃんという彼女がいるにも関わらず、友情のために立ち上がった田中というバカに、男子たちは敬礼をした。

 

 男子たちのガードと女子のアタックが苛烈になる前に、さっつーが湊に直接聞く。

 

「てかミナちゃん、明日ならいいんだよね?」

 

 湊は、ただサムズアップで返す。

 さっつーの言葉にすら、声を返してくれない事に寂しさを覚え、悩んでやや追い込まれ気味だった喜多は、泣きそうな声で謝る。

 

「ごめんね、大変そうなのに話しかけて……うざかったわよね……」

 

 喜多のおかげで高校生活が楽しくなったのに、こんな思いをさせてはいけないと、このままではいけないと、昨日の記憶と共に性欲を押さえ込もうとした時に、彼は気づいた。

 

「愛してるぜ、ただ、昨日浮かんできた曲のことで悩んでて、今は他のことを考えられないんだ」

 

 異様な熱量の込められた瞳に、女子は怖気立つ。

 実際は性欲を抑えきれないカスの目線なのだが、それすらもカリスマに変えるのが普段の行い。

 そして喜多にとっても、湊でさえここまで異常が出るほど追い込まれるのが音楽だということが救いになる。

 

 こうして、男子達は悩んでるのを知られたくない湊のプライドを守ろうとしたと再評価され、湊も、その恥ずかしさよりもクラスの和を取ったと評価され、事は収まった。

 

 家に帰ってスッキリした湊は賢者となり、改めて周りの人と出会いと世界へ感謝し、自らの愚かさを恥じた。




お礼申し上げ!

⭐︎10をくださった赤 紫様
⭐︎9をくださったリチウム様、ssを読む程度の能力様
⭐︎8をくださったかんぴょう様

感想をくださった木野兎刃(元:万屋よっちゃん)様、どぅな様、なまこな様

皆様ありがとうございます!

評価が下がった方もいるのは悔しいですが、前話の性質上仕方ないかなと反省……

反省あまりできずに今回も下品な話です!俺バカだからやりたいようにやっちゃう!

でもキャラ愛は大事だから、読者様からの評価が下がるような行動するのは湊くんに任せたいですね

今日も皆様に幸あれ
具体的にはセブンイレブンコラボの色々ゲットできるくらいの幸あれ

私は虹夏ちゃんうちわとクリアファイル、リョウうちわをゲットしました。
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