さっつーが好きって言ってんの
クラスの勇敢なる男たちと結束を深めた翌日。
約束通り喜多ちゃんの悩み相談を受けることになった。原因というかきっかけは俺の言葉なので完全にマッチポンプ。
「それで、私の悩みなんだけど……」
「だいたいわかってるんだ、あの言い方したら悩ませることになるのもわかってた」
「そうよね……それで、昨日悩む湊くんの姿を見て、私思ったの。もっと真剣になって、もっと苦しみたいって!」
「ドMか?」
「だから湊くんが思う一番苦しい方法で私を鍛えて!私を苦しませて!とにかくめちゃくちゃにして!」
「やめてやめてやめて!周りの視線!ここ街中!今から死戦、注目の
教室で喜多ちゃんがとんでもない発言をするもんだから、背後から男子の一人が手刀で俺の背中を突いてくるのを、回避して掴む。
昨日は助けられたが、今日はもう敵だ。脇腹に足を当てて、腕を離して前に蹴り出す。
そいつは結構盛大に転がるけど、このクラスでは日常風景なので誰も気にしない。
「今日も喜多は無意識にミナちゃんを追い詰めてるね〜、むしろ狙ってるっしょ」
そんな俺のを心配して背後を守るように、背中側からさっつーが肩に顎を乗せて立ってくれる。
「ささえも〜ん!ありがとー!」
「あいあい、背中は任せな〜」
頼もしい味方を得て喜多ちゃんへと向き直る。
「多分なんだけどさ、そんなこと言うくらいだから普通に辛いことしても今の喜多ちゃんは『これも努力』って前向きさで乗り越えちゃうんだ」
「そ、そうかもしれないわ……」
「だから、かなり酷いことするけど、それでもいいなら考えはあるよ。努力を美化するなら、努力をさせないでストレスを与えるのが」
今、クラスの人間がほとんど揃ってる。皆にも協力してもらう必要があるから、この状況でよかった。
「やるわ、結束バンドのために」
「その言葉、
「保証しないならそんな厳かな感じ出さないでよ!」
喜多ちゃんの文句はさて置き、このクラス、そして他クラスの喜多ちゃんの友達に伝えてもらう形でルールを敷いた。
俺と喜多ちゃんの間だけじゃなく、周りを巻き込まないといけないルールだ。
他クラスに友達がひとりちゃんしかいない上にクラスでの発言力もそこまで強くない俺が勝手に発信しても意味無かったし、皆の前で喜多ちゃんが宣言してくれてよかった。
作られたルールは抑圧の時代のロックンローラーの気持ちを知ろう。
というわけで喜多ちゃんがロックの話をしても誰もノらずに他のジャンルの音楽を聴けとツッパね、学校でロックの練習も見つければ咎めるというクソ仕様。
ただ、練習に関してはもともと人目につかないというか、ひとりちゃんが隠れるようにしてたから変わらないかもしれない。
恥ずかしがり屋で人前に出れないのに、音楽を貫くとかやっぱひとりちゃんロックすぎじゃね?
というわけで、ロックに対して精神的な抑圧を受け続けてもらう。
現代では音楽のジャンルと受け入れられすぎてしまってる事に対するカウンター、自分が感じた衝撃を愛を貫けば、ロックンローラーとして一皮剥けるはず。
少なくとも、クラシックで評価されてたところから転向して、最初は批判を受けた俺は、貫いた。貫いてよかった。
貫いたからこそ、世にロックンローラーとして認められた。
折れない心、熱い魂がロックンロールなんだから、この特訓の効果は、本当は保証できる。
ただ、こんなクソみたいな抑圧をしてくる俺を疑ってほしい、反抗してほしい。だから喜多ちゃんには『保証しない』なんて余計な事を言った。
期限は本人だけが知らない条件で、喜多ちゃんが抑圧を越えて、皆の前でロックンロールを叫ぶまで。
10月のライブも近づく中、チケットノルマで友達を頼ることもできない地獄。……ひとりちゃんこれも乗り越えてる……
この案を言い終えると皆にドン引きされたし、罵られたけど、強制じゃないから、まず本人の意思をまず聞こうよって言って納得してもらった。
皆、喜多ちゃんのために怒って、喜多ちゃんの意見を尊重して……やっぱり喜多ちゃんの人望はすごい。
それに比べて罵られる俺の人望は酷い。
まあ、敬ってほしくもないしいいんだけども。
気安く話してくれる方が好きだし。
喜多の悩みを聞いたミナちゃんの提案は結構えげつなかった。
別に他の話が禁止された訳じゃないし、本人がどれだけ悩んでいるかも、昨日の話で女子はわかっている。何よりあのステージをしたミナちゃんが言うならって感じで受け入れてた。
でも男子の方は普段から仲が良くてじゃれあってるから、ステージの上のミナちゃんじゃなくて、普段のミナちゃんに接する感じで文句を出す。
そっから、そっからなんだよね〜。
「俺は喜多ちゃんの為に本気で考えてんだよ、本人がやるかどうかだ、他のやつが勝手にこいつの覚悟を測って口出ししてんじゃねーよ」
ミナちゃんて何気に喜多のこと大好きだから、喜多の意見を尊重してるし、可愛い子にそんな酷いことするな的な、喜多をナメた発言が許せなかったっぽい。
相変わらずその背景の炎はどうやって出してるの。
覚悟がガンギマリしてるミナちゃんの前で、男子たちは声が出せなくなって、喜多はやる覚悟を決めたみたいだ。
私は、そんな信頼関係を結べる喜多が羨ましいし、ロックンローラーなミナちゃんもかっこいいけど、ノリが合って話しやすい、いつもの大好きなミナちゃんに戻すために抱きつく。
こうするとミナちゃんが照れて、男子が嫉妬していつもの空気にもどる。
私のおかげで上手くやれてるところ、もっと気づいて感謝しろよな、このロックモンスター。
「なんでほっぺた引っ張るの!?さっつー!」
「なんとなく?こう言う時こそフィーリングで察してよ」
「そんなに提案が気に入らなかった!?」
「私のために争うのはやめて!……一回言ってみたかったのよね、これ」
「大丈夫だよ喜多、これは愛し合う二人のスキンシップ」
「てか!それさっき野郎どもに散々言われてる時に言ってよ!」
「湊くんならどうせなんとかすると思って、茶化す空気でもなかったし。いいじゃない、平気でしょ?何言われても」
「うわぁん!ささえも〜ん!喜多ちゃんが酷いよぉ〜!」
「どっちかって言うと、これからミナちゃんが喜多にする事の方が酷い」
「「「「違いない」」」」
クラスの大多数、なんなら本人も含めて同意した。
お礼です!
⭐︎9をくださったレイン・オルト様、農家の次男坊a様、とぅりくん様ぴーたろー様
⭐︎8をくださったヒナ89様、醍醐様
感想をくださった木野兎刃(元:万屋よっちゃん)様、田中読者様、なまこな様
皆様ありがとうございます!
皆様に幸あれ!
具体的にはぼざろクリアファイルのためにアイス買ったはいいけど、二つ食べてお腹壊した僕みたいにならず、美味しく食べれるみたいな!