酔っ払い拾ったらロックに出会った。   作:西ローランドゴリラ

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53話

 

 喜多ちゃんが学校でロックの話をできなくなって早くも1ヶ月、俺は比較的FOLTに顔を出すようにして、シフトも喜多ちゃんと被らないようにしていた。

 クラスメイトの俺がいない環境で、STARRYなら自由にロックができる環境を楽しんでもらうという方針あっての事。

 1ヶ月もこんな生活をすると、精神的な負担が相当なものだった……俺が。

 

「俺、学校で喜多ちゃんとロックの話するの楽しくて大好きなのに、ロック禁止だからクラスで話すこと減ったし、周りも気を遣ってくれるけど、俺そもそも周りの話題に付いてけなくてぇ……」

 

「よしよし、学校やめちゃうのも手ですよ〜」

 

「湊さん、気持ちわかります!中退目指しましょう!」

 

 半泣きになってSTARRYのカウンターで愚痴をこぼしてると、PAさんに撫でられ、ひとりちゃんに励まされた。

 

「そういえば、湊ってなんで高校行ってんの?行かなくても稼げてるし、活動もしやすくなるのに」

 

「あ、私も気になる!やっぱり将来が不安とか?」

 

 伊地知姉妹もやってきてくれた、ちなみに今日は喜多ちゃんとリョウが休みなのでこれでフルメンだ。

 

「将来の不安は無いわけじゃないけど、俺は音楽……特に演奏メインで食べていかないといけないと思ってる。世代最強が演奏で食っていかないなんて他の人の夢を奪っちゃうし」

 

「痺れちゃう宣言ですね〜、だったら青春が目的とかですか?」

 

 PAさんに抱きしめられて荒んだ心が癒されていく。頭に伝わる胸の感触が心地いい……やばい、この前の事を思い出してしまう……平常心を保たなければ。

 

「おい、仕事中に堂々と抱きつくな、青春が目的なら明らかにお前邪魔だろ、青少年の健全な育成の妨げになる」

 

「なんかもう、最近抑えられてない感じだよね、PAさん」

 

「でも、さっきのがかっこいいの……わかります」

 

「まあね、私たちからしてもそういう人が身近にいると嬉しいし」

 

 世代最強って肩書きも存分に使わせてもらってるんだ。それくらいの恩返しでもしないと、音楽に申し訳ない。

 それはそうと、学校に行く理由を話さないとどんどん脱線していく。

 

「音大、行ってみたいんです……作曲や編曲もしてるんで、ちゃんと理論を学んだって証明を取っときたいのと、俺が今できるのは俺が好きで学んだ範囲の音楽なんです。それとは違う視点で作られたカリキュラムで色んな音楽に触れてみたくて、それで音大に行きたもごご」

 

 最後の締めに入る前にPAさんに強く抱きしめられて言葉が出なくなった。

 

「お前、やっぱり音楽に対しての姿勢がお行儀が良いというか、クラシック出身というか……でも、そのハングリー精神はいいな」

 

「もごごごご」

 

 店長さんが暖かい目をして撫でてくれたのでお礼を言うけど、相変わらず言葉にならない。

 

「おい、流石に緩めてやれ、会話以前に呼吸できてんの?それ」

 

「すみません店長、好きな子の好きなところ見せられて心が乱れてるので、もう少し待ってください」

 

「冷静に自己分析はできるんだ……」

 

 虹夏ちゃんの呟きに皆が内心で同意したけれど、PAさんが落ち着くのを待った。

 息が吸えなくても数分くらい耐えれる肺でよかった。

 

「それにしても進路かー、私も本格的にバンドやるならそっち系にした方がいいのかなー」

 

「曲作りはリョウとひとりちゃんだし、虹夏ちゃんは別にいいんじゃない?」

 

「じゃあ……私は行った方が……中退が目標なのに……」

 

「中退しても生活も好きなことの勉強もできますよ〜

 

 PAさんが言うと説得力が違う。

 生活はもちろん、専門の知識が無いと絶対にできない仕事だし。

 

「進路のことなら1号2号さんに相談してみる?あの二人、美大生だし大学のこととか、その先の進路の事とか教えてくれると思う」

 

「え!?そうなの!?どこ情報!?」

 

「この前チャンネル見られた時に色々あって、映像学科らしいから最近は編集お願いしてて、バイト代出してちゃんとクレジットに名前も入ってます」

 

「いつのまに……」

 

「向こうもポートフォリオになるって良い関係築けてます!」

 

「あばばばば」

 

「ファンが取られてぼっちちゃんがおかしくなってる!」

 

「私だって湊くんの手伝いしたいのに……寝取られました……」

 

「寝てから言えよ」

 

「いや、取ってもないし取られてもないですから」

 

 形が崩れたひとりちゃんをなんとか元に戻して、そろそろ働けという店長の言葉にしたがって皆動き出した。

 

 

 

 その日、バイトが終わり湊が帰った後のSTARRYにて

 

「湊くん、やっぱり落ち込んでましたね。喜多さんもですけど」

 

「一人は自業自得、一人はそれが狙いだしな」

 

「店長は心配じゃないんですか?」

 

「あー、まあ心配しなくてももうすぐ終わる」

 

「何か話聞いてるとかです?」

 

「いや、湊が思ったより無茶苦茶でわがままでバカだから、そろそろ耐えられなくなって暴れるって、廣井が言ってた」

 

「廣井さんが……うぅ……一番の理解者ポジションが……寝取られました……」

 

「だから寝てから言えっての……」

 

 PAさんの態度に星歌はニヤリと笑う。

 

「ちなみに、廣井やFOLTの奴らは湊と寝てるらしいぞ」

 

「まあ、保護者たちですから、一緒に寝ることもあるでしょう」

 

「そこは受け入れてるのかよ」

 

「私は湊くんの中に私のポジションが欲しいんですよ!」

 

「こわっ、急に叫ばないでよ……そういえば廣井からお前への伝言あったわ、忘れてた」

 

「なんですか?」

 

「湊、野生の勘が働くというか、本能で動くというか……とにかく一目惚れして、実は元々お前と繋がりがあったってんなら、必ず気づいてくれるってよ」

 

 その言葉にPAさんは身を震わせ俯く。

 

「理解者ポジション奪われて悔しいのに……嬉しいです……」

 

 廣井きくりは、大事なところは違えない。道に迷った者にとっていつだって進む道を指し示す。

 大事なところ以外はいつだって違えてるけれど。




お礼どぅええええす!

☆10をくださった夜モスガラ様

☆9をくださったHalf様、†陰の傍観者†様、とぅりくん様、デストロイガンダムMrk-2様

☆8をくださったヒナ89様

☆7をくださった二連つくね様

☆5をくださった黒鷹商業組合様

感想をくださったなまこな様、田中読者様

皆様ありがとうございます!
皆様に幸あれ!
私の幸、おすそ分けします!

具体的にはツイッター(現自称X)にて見たんですが『ゆいまる』という方がローソンのネップリでぼざろ出してて、その中にさっつーも出してるみたいっす!

まだラインナップ全部は見てないですけどローソン行くの楽しみです!
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