酔っ払い拾ったらロックに出会った。   作:西ローランドゴリラ

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54話

 

 10月の頭から始まった学校でロックの話ができない、練習も見つかれば咎められる生活は、続けば続くほどに自分の本当の居場所がロックにあるような気がして、前よりも自分で調べて聴くようになって、ロックを前より楽しめている気がする。

 

 ただ、いつも皆に嘘をついてるような気がしたり、皆と一緒にいるよりロックに打ち込んでる方が楽しいなんて考えてしまってたり、何より隣の席の湊くんと上手く話せなくて、それが申し訳なくて、寂しい。

 

 そんな事を考えるのは先月、個人で見れば達成できなかったチケットノルマが11月に入ったことでまた降りかかって来て、これが売れなければまた私の好きなロックが受け入れてもらえない現実を見せられるように感じる。あとお金もなくなる。嫌になってきた。

 

 前なら人目を気にしてクラスで出さなかったため息が、自然と出てくる。

 

 そんな私の隣で、ガタ!と勢いよく立ち上がる音が聞こえる。

 

「喜多ちゃん、チケット買わせて」

 

「え?」

 

 声をかけて来たのは湊くん。

 私にロック禁止令を出した張本人。訳がわからなくて混乱する。

 

「な、なんで?」

 

「喜多ちゃんの歌が聴きたいから!」

 

「おい!咲良!お前ロックの話は禁止だろ!」

 

 ただのクラスメイトの山本くんが、チケットを買いたい湊くんを止めにかかる。

 ルールを決めた張本人だとしても、私と一緒にずっと我慢してくれてた。私のために一緒に苦しんでくれてたんだ、湊くんは。

 

 違う、もっと深く、もっと深くだ。

 私の歌を聴きたい人が、周りに非難されている。

 だったら私はその前に立って叫ばないといけない。

 私が愛するロックを愛してる人のために。

 

「禁止がなに!そんなの関係ないわよ!私たちは、私たちの好きなものを!好きと叫んでやる!」

 

 人差し指を天に向けて叫ぶ。

 

「ロックンロールッ!!」

 

「ロックンロールッ!!!!」

 

 湊くんが叫び返してくれる。それで、それだけでいい。

 

「ロックンロールッ!!!」

 

「「「「「ロックンロールッ!!!!!!!!」」」」」

 

 今度はクラス全員が返してくれた。

 ああ、そういうことか。もう、ロックは解き放たれたんだ。私が叫んだから、私がロックンローラーになったから。

 

「ロックンロールッ!!!!!」

 

「「「「「ロックンロールッ!!!!!」」」」」

 

「yeah!!!」

 

「「「「「yeah!!!!」」」」」

 

「yeah!!!!」

 

「「「「「yeah!!!!!!」」」」」

 

 あまりにも私たちが大声で叫ぶものだから、急遽やってきた先生に怒られてしまったけど、勢いに乗ってたものだからそれでも止められず、声が枯れて最後の叫びをして全員で満足した後に、全員で反省文を書くことになった。

 なんなら他のクラスの人たちも混ざってたみたいで書かされることになってた。

 

 ダメなことのはずなのに、なんだかとっても楽しくて、喉の痛みすら気持ち良くて、スッキリした。

 

 

 

 放課後、クラスの皆と反省文を書いたけれど、湊くんは慣れてるからと言ってすぐに書き終えてしまった。

 

 FOLTに行くから、とすぐに帰ろうとする湊くんを、思わず呼び止めてしまう。

 

「湊くん!あの……えっと……」

 

 呼び止めたのに何も言葉が出なくて、自分がなんで呼び止めたのかもわからない。

 

「また明日、いろんな話ができるの楽しみにしてるぜ、ロックンローラー!」

 

 そんな私を彼は待ってくれない。

 世代最強、同世代の誰よりも前に立っている人。

 今も鮮明に思い出せるくらい衝撃を受けた演奏をした、まだ遠くて、それでも今回のように近くでアドバイスをくれるロックンローラー(愛を叫ぶ人)

 そんな彼に、考えるより先に体が動いて、抱きついていた。

 

「待ってて、いつか私が、結束バンド(私たち)が、あなたに並んで……あなたを越えて前に立つわ」

 

 最大限の愛と敬意を持っての、宣戦布告。

 

「先に上で待ってるぜ、ライバル」

 

 気持ちいい、心の底から真っ直ぐにぶつかれる。

 いつか私が人生を振り返ったなら、この時の事を何よりも鮮明に覚えてると思う。

 

 なんでもそれなりにこなして来ただけの私が、夢中になれて、大好きな仲間がいて、同じくらい大好きなライバルがいて。

 きっと、私がロックを辞められなくなった今日を、忘れられるはずなんてないから。

 

「おいコラ咲良ァ!またテメェだけいい思いしてんじゃねぇぞ!」

 

「うるせぇ!ロックンローラーにはロックンローラーの絆があるんだよ!今まで学校で話すことなくてめちゃくちゃ寂しかったんだからいいだろ!」

 

「あ、それは俺らが喜多ちゃんを可哀想な目にあわせてる奴だし、可哀想な目にあわせてやろうと思って意図的に避けてた」

 

「はぁ〜ん!?いくら喜多ちゃんが可愛い女の子だからって、俺に対してやっていいことと悪いことがあんだろ?…………ちなみに、今回のはいいことだ!喜多ちゃんみたいな可愛い子を悲しませたやつが!何のお咎めも無しでいいはずがない!」

 

「「「お?おお?」」」

 

 悪い予感がする、ここまでで思い出は区切った方がいいような予感。

 

「なぜなら!俺は可愛い喜多ちゃんを苦しめた男で!喜多ちゃんは可愛い女の子だから!」

 

「「「おお!!」」」

 

「喜多ちゃん!可愛い!」

 

「「「喜多ちゃん!可愛い!」」」

 

「喜多ちゃん!可愛もがごごご」

 

「「「喜多ちゃん!可愛い!!」」」

 

 湊くんの口を塞いだのに、男子たちのコールが止まらない。

 本当に厄介ね、この人を惹きつける力!

 

 男子たちのコールが止まらなくて流石に恥ずかしくなってくる。

 

「顔赤くしてるのも可愛いよ!」

「好きだ!」

「結婚してくれ!」

「それだけ可愛くなるには眠れない夜もあったろ!」

「よ!人間国宝!」

 

 

「イジメか!」

 

 さっつーが止めてくれたけど、やっぱり今日のこと、忘れたい……




お礼でっす!
☆10をくださった❀チョコミント❀様、sarki様

☆9をくださったnana@@@様、ワム〜様、でち様

☆8をくださった春都様

感想をくださったなまこな様

皆様ありがとうございます!

皆様に幸あれ!
具体的にはラーメンに好きなだけトッピングできるくらいの幸あれ!
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