酔っ払い拾ったらロックに出会った。   作:西ローランドゴリラ

58 / 95
58話

 

 今日はSTARRYでのバイトが無いのだが、未確認ライオットに向けての目標設定という結束バンドの大事な話し合いに誘われ、余裕で断ってFOLTに来ていた。

 

 SIDEROSのワンマンライブの方が見たいし、なんならゲストとして呼ばれてたし仕方ないね。

 

「今日のライブも激よかったすねぇ〜、客の盛り上がり過去最高でしたね〜〜〜」

 

「自分たちのファンしかいないから盛り上がり凄いよね、ワンマン」

 

「そう言いながらSIDEROSファンを自分もぶち上げてたじゃないっすか湊さん」

 

「俺はヨヨコ先輩と一緒にやってきたし、SIDEROSとの関わりも長いからね。なんならヨヨコ先輩を除けばここで俺が一番古株だし……SIDEROSのメンバーじゃないけど」

 

 ヨヨコ先輩の苦労を思うと胸が痛くなる。

 初めて会った頃は本人の性格による人との行き違いで、その後誤解は溶けていきながらも色んな事情でメンバーが安定しないんだ、不憫すぎる。

 でも、だからこそ、歩みを止めないその姿がかっこいい。

 

「ねぇはーちゃん、湊くん。さっき動画サイト見てたら新着に面白い名前のバンドあがってて、結束バンドって言うんだけど」

 

 俺とあくびちゃんが話してるところにふーちゃんが出したその名前に、秀華高で文化祭ライブをした俺、ヨヨコ先輩、幽々ちゃんが反応する。

 

「バンド名は激サムだけど、意外と曲は嫌いじゃないっすね〜」

 

 あくびちゃんの評価は悪くない、だけど、動画から流れてくる音楽は文化祭でひとりちゃんが魅せた姿に比べればだいぶ劣る。

 撮った時期や、ひとりちゃんの本気が出せていないのが原因だろう。

 

「こんな再生数100回程度の動画、聴く必要ないわよ!」

 

「ヨヨコ先輩、最近機嫌悪いねぇ……」

 

「なんか気に食わない人がいるみたいっすよ」

 

 ヨヨコ先輩の態度がツンツンしてるせいで、あくびちゃんとふーちゃんが少し困りながらヒソヒソ話を始める。

 うーん、やっぱりメンバー安定しないの普通にヨヨコ先輩も悪いや。

 

「機嫌が悪いのは廣井姐さんがSTARRYに入り浸りがちだからだと思うよ、聴く必要が無いっていうのは結束バンドのポテンシャルはこんなものじゃないって分かってくれてるんだ、ヨヨコ先輩は」

 

「それだけじゃないですよ〜、湊さんがSTARRYに行きがちなのと、湊さんがいる環境でまだ音がズレてるのに怒ってるんだと思います〜」

 

 幽々ちゃんの言葉に感動する。ヨヨコ先輩のことをよく分かってくれるメンバーがいるってなんて頼もしいんだ。

 

「おー、皆さん結束バンドお知り合いなんすね!」

 

「STARRYってところで活動してるんだねー」

 

「知り合いってほどじゃないわ、文化祭で湊に勝負を挑んだらしいから叩き潰したのよ。湊の同級生でバイト先も同じなのに、ずいぶんと緩い演奏してたから勝負にもならなかったけど」

 

「え!?湊くんてバイトしてるんだ」

 

「そこも驚きっすけど、湊さんと練習してまだズレが残るのは確かに何か別の問題があるかもっすね」

 

 俺の音が景色として見える力。逆に明確な景色をイメージした音は人に視覚的なイメージを与える。

 音で感情を動かす人が、感情を音に乗せるように、俺は音に視覚情報を見て、視覚情報に訴える音を出せる。体を使って表現すればなおのこと。

 その性質で俺がいると合わせが上手くいく。というわけで新生SIDEROSの練習でも効果を発揮してきたので皆の評価をいただけてるんだけど、皆は誤解している。

 

「ごめん、俺結束バンドと一緒に演奏したこと無いんだよね」

 

「あれ?結束バンドさんとは仲良しなんですよね〜?」

 

 プライベートの話ならヨヨコ先輩よりしてる幽々ちゃんは、学校であったことの話の時に喜多ちゃんの話題を出すから、仲の良さは知ってくれてる。

 別に理由はないけど、結束バンドと演奏したことは無い。

 

 正確にはリョウとだけはやった事があるけど、他はマジでない。

 

「うん、この前も一緒に反省文書いたくらい仲良し。てか俺、動画の企画で他の人と演奏する事もあるけど、普段から一緒にやってるのはSICK HACKとSIDEROSだけだよ?前から」

 

 明確な理由がある訳じゃない、でもこの前の文化祭で壁を越えた感覚からして、たぶん他人との演奏、特に同世代を心のどこかで少し避けてたんだと思う。

 ライブの企画として色んなバンドに混ざったり色々はしてきたけど、ずっと楽しくやってきたのはSICK HACKとヨヨコ先輩のいるSIDEROSだけだった。

 

「なんというか、改めて湊さんて廣井さんとヨヨコ先輩大好きなんすね」

 

「もちろん!めちゃくちゃ好き!」

 

「それじゃあ、バイトは廣井さんと一緒にいるためとか?」

 

「いや、PAさんに一目惚れしたから」

 

 沈黙。後、轟音。

 

「「「「ぇぇええええええええええ!!!」」」」

 

「き、きききききき聞いてないわよ!湊!!」

 

「そういえば言ってなかったなって、さっき気づきました」

 

「サタン様の力で感情の向きをこっちに……」

 

「怖いこと言わないで幽々ちゃん、幽々ちゃんのことも、もともと好きだから」

 

「それはlike的なやつじゃないですか〜?」

 

「ぜんぜん、love」

 

 珍しく幽々ちゃんが赤くなってフリーズした。可愛い。

 

「PAさんってどんな人っすか?写真とかあるっすか?」

 

「私も見たい!」

 

 あくびちゃんとふーちゃんに待ち受けを見せると、おおーと感嘆の声を漏らした。

 

「どことなく幽々ちゃんに似てるね〜」

 

「似てるっすね」

 

「貸しなさい!」

 

 二人の反応を見てヨヨコ先輩が俺のスマホを取り上げて画面を見ると、滝のように汗を流し始めた。

 

「こ、こういうのがタイプなのね、湊。ところで私も最近イメチェンしようかと考えてたんだけど」

 

 イメチェン、イメチェンか……

 

「どんなヨヨコ先輩でも好きですけど、俺は今の先輩が先輩らしくて大好きですよ、イメチェンなんかしなくてもヨヨコ先輩は最高に格好良くて可愛いです」

 

「いい事は言ってるんすけど、状況がアレっすね」

 

「湊くん的に、ヨヨコ先輩はlike?love?」

 

「余裕でloveですよ?」

 

「そ、そうよね、私と湊の仲なら当然そうよね……私も罪な女ね……」

 

「いや、絶対湊さんが罪な男っすよ」

 

「ややこしくなりそうだから変に掘り下げるのやめとこっか、なんの話だっけ?」

 

「結束バンドの話っすけど、なんかもう疲れたんで打ち上げ行きたいっす」

 

 二人が話題を変えてくれたので乗っかることにする。

 俺のことを好きになってくれたヨヨコ先輩と幽々ちゃんに思いを伝えられてスッキリした。この先どうなってくかは俺の行動と皆の気持ち次第だから、嘘をつかないようにだけして流れに任せよう。

 まずは新生SIDEROSの初ワンマンを祝っての打ち上げだ。

 

「打ち上げ、初ワンマンのお祝いに俺が出すから好きなとこ言ってね」

 

「自分も湊さん好きっす!love!」

 

「はーちゃん……それはさすがにどうかと思うな……」

 

 皆、結構しっかり食べるタイプで、一緒に食べる時間はすごく楽しかった。

 言いたいことが言えてスッキリした気分と同じように、財布もスッキリした。





お礼です!
⭐︎9をくださったチホネコ様、AcroMisp様、新宿邪ンヌ様、モーン21様

⭐︎8をくださったきりしぐ様、たーきー様

感想をくださったなまこな様、イミテリス紫音様

皆様ありがとうございます!

皆様に幸あれ!
具体的には夏バテせずに毎日美味しいもの食べれるくらいの幸あれ!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。