酔っ払い拾ったらロックに出会った。   作:西ローランドゴリラ

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6話

 

「伊地知 虹夏です!動画よく見てます、お姉ちゃんと被るのでよければ虹夏って呼んでください」

 

「虹夏さんの方が歳上だし楽にしてくださいよ、よろしくお願いします」

 

 ひとしきり騒いでもらったあと、呼び方に戸惑う俺を見て、ちゃんと自己紹介をしていなかったということで虹夏さんからの提案で自己紹介タイムとなった。

 虹夏さんが世代最強と握手しちゃった!上手くなるかも!と右手を眺めてるけどそんなご利益(りやく)は無いです。

 

「山田リョウ、よろしく」

 

「呼び方はリョウでいいか?親友」

 

「もち」

 

 PAさんを紹介してくれた親友と硬い握手を交わす。なんでもう仲良くなってるの!呼び捨てだし!ずるい!とリョウ相手に虹夏さんがプンプン怒ってる。

 悪いけどこの流れで虹夏さんをすぐに名前呼びはできない、裏切れねえんだ、俺の内から溢れる熱い友情を。

 リョウもこれくらいの怒られ方はいつものことだ、気にするな。とウインクしてくる。こちらもありがとうの意を込めて笑みを浮かべる。

 

 アイコンタクトで伝わりすぎてるわ。

 

「咲良くん、リョウ先輩と通じ合っててズルいわ!私にもコツ教えて!」

 

「友情だよ、それより喜多さんもみんなに挨拶しといたら?」

 

「あ、そうね。喜多です、今まですみませんでした!ギターはまだまだですけど、結束バンドのギターとして恥じないレベルになるので、よろしくお願いします!」

 

 あんなに悩んでいた喜多さんが、前に進もうとしている姿にちょっと感動する。キターンの背景も心なしか熱く燃えてるように見える。

 

「今日のレベルなら初心者でも問題ないだろ」

 

「「うっ……」」

 

 虹夏さんと、灰から灰色の人型に戻ってたピンクの人から埋めき声が聞こえる、リョウも無言でちょっと沈んだ。

 

「わざわざ今そんな事言わなくていいでしょ!お姉ちゃんのバカ!」

 

「へーへー悪かったよ、わかったから叩くな」

 

 ポカポカと叩く虹夏さんをあしらいながらスタッフさんがこっちを向く。

 

「伊地知 星歌だ、ここの店長。こいつらみたいなのならともかく、君レベルならいつでもライブ歓迎だから、よろしく」

 

「あはは……よろしくお願いします、店長さん」

 

 評価してくれるのは嬉しいけど、貶されて虹夏さんのポカポカが強くなってるから素直に喜び辛い。てか店長だったんだ、若いのに凄いな。

 そして、PAさんの方にみんなの視線が集まっていく。念願の、彼女の名前が聞ける。

 

「PAです、よろしくお願いします。名前は……」

 

 スっと俺の方に寄ってきたPAさんが耳元に口を寄せる、近くで見てもやっぱり美人で緊張して動けなくなる。

 

「緊張しちゃってますね〜、もっと私と仲良くなったら教えてあげます」

 

 最後にふーっと耳に息を吹きかけられ、くすぐったさと恥ずかしさでやられて膝をつく。

 

「おい、お前高校生をあんまり揶揄うなよ、しかもさっきファンとか言ってたくせに」

 

「ファンですよ?あの『咲良 湊』のこんな姿を私が見れるのも、私のことたくさん考えてもらえるのも素敵じゃないですか?」

 

「歪んでるわ、高校生の好みまで歪ませるなよ」

 

 ふふふと笑うPAさん。彼女の言う通り、俺は今PAさんのことしか考えられていない。

 

「大人だ……」

(ただ)れてる」

「咲良くんがあんな風になってるの、確かに学校でも見たことないです」

 

 みんながPAさんに感心して少し静かになる。そう、あとは少し離れたところで灰になってたピンクの人をどうするかだ。今はちゃんとピンクの人型に戻ってるけど、なんかうずくまってる頭を抱えてる。

 

「は!し、視線を感じる……」

 

 恐る恐るといった風にこちらを振り向く。ピシャリと固まってからあわあわしだすと。

 

「き、今日はありがとうございました!」

 

 大きな声で挨拶して出て行こうとした。しかし彼女より出口に近いところにいた喜多さんに手を掴まれる。

 

「待って!2組の後藤さんよね?私、あなたにギターを教えてほしいの」

 

「あ、え、えっと……私今日限定のサポートギターだし、ライブでも迷惑かけたド下手なのでおすすめできないです」

 

 今日の失敗がこたえたのか、ずうんと沈んだオーラを出す後藤さん。しかし輝きを取り戻した我がクラスの太陽、喜多さんにかかれば問題ない。

 

「咲良くんが言ってたの、真っ暗なダンボールの中でコードを抑えられるくらい練習してる後藤さんはすごいって、個人技なら咲良くんよりもずっとうまいって、それに私に教えることが後藤さんが他の人に合わせる練習になるはずだって、私は咲良くんを信じる。後藤さんに教えてほしい」

 

 驚いた、という表情で後藤さんがこっちを見る。

 

「私もいいと思う!喜多ちゃんに教えるだけじゃなくて、ぼっちちゃんにこのバンド盛り上げるの手伝ってほしいな!」

 

「虹夏ちゃん……」

 

「ギター増えたら音が賑やかになるしノルマも4分割」

 

「ライブのノルマ……友達……ゔっ……」

 

「素直な言い方しなよ!ぼっちちゃんのやる気ちょっと下がったじゃん!」

 

 みんなが後藤さんの言葉を待つ。ブンブンと頭を振ったり、落ち込んだり、だらしない顔をしたりと一人で百面相をした後、結束バンドの三人の方へ向き直って……ちょっと下を向いて口を開いた。

 

「よ、よろしくお願いします」

 

「やった!これからよろしくね!後藤さん!」

 

 新たに四人組バンドが結成される姿を見て、やっぱり音楽っていいなと感じていると、隣の店長さんも優しい笑みを浮かべていた。

 

「いいですね、ああやってバンドが生まれるのって」

 

「ですねー」

 

「ま、すぐ解散することが多いけどな」

 

 PAさんがこっちに近寄ってヒソヒソ話をする格好で、あえて店長さんに聞こえる大きさで話す。

 

「店長、素直じゃないですね」

 

「さっきすごく優しい笑顔してたのに」

 

「うるせぇイチャつくな、高校生は向こう混ざってこい」

 

 同じようにヒソヒソ話の格好しながら聞こえる声の大きさで話すと怒られた。

 

「じゃあちょっと冷やかしてきますけど、店長さん、今くらいの態度で接してもらう方が好きです。なんか歳上にかしこまられると緊張するんで」

 

「わーったからいけ!」

 

 顔を背けてしっしと手で払われるけど、店長さんの耳が少し赤くなってて、余計なこと言って嫌われたなんて心配もなく、喜ぶ結束バンドに余計なことを言いに行く。

 

「喜多さん、ギターの先生が決まったところで、肝心のギターどうする?」

 

 ピシリ、と喜多さんが固まる。

 

「咲良くん、今日とっても頼りになった咲良くん、なんとかならない?」

 

 なる、案はある。でも珍しく涙目の喜多さんを見て思う、少しいじりたい。さっきのPAさんから俺に対しての思いもこんな感じだったのかも。

 喜多さんの肩に手を置いて、キメ顔をする。喜多さんの顔がちょっと明るくなる。

 

「ならない」

 

 喜多が絶望した。





⭐︎9をつけてくださったマリナード様、ありがとうございます!

評価してくださった方、読んでくださった方に幸あれ

具体的に言うと休憩時間に他の人から邪魔が入らず、好きな事だけできるみたいな
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