酔っ払い拾ったらロックに出会った。   作:西ローランドゴリラ

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64話

 

「「「「メリークリスマス!」」」」

 

 お祝いの言葉と共に皆で乾杯する。

「今日はSTARRYクリスマスパーティーに集まって頂き、ありがとうございます!」

 

「司会進行は伊地知と喜多が務めさせていただきます!短い間ですが、皆さん楽しんでくださーい!」

 

「そして兼クリスマスライブの打ち上げでーす!」

 

「「「ありがとーございまーす!!」」」

 

 ライブはいつも通り廣井姐さんが盛り上げて、暴れてめちゃくちゃにして終わり、STARRYにてクリスマスパーティー兼ライブの打ち上げが開かれた。

 普段はいないSIDEROSと結束バンドが集まって賑やかな雰囲気だ。

 

「その割にはメインの人がいないのは……?」

 

「円滑に会を進行する為、お呼びしておりません」

 

「「「ありがとーございまーす!!」」」

 

 ……え、呼んでない?廣井姐さんを!?

 

「騙したな虹夏ちゃん!後から来るって話だったじゃん!なんで姐さんにそんな仕打ちを!」

 

「さらにお姉ちゃんの誕生日会を兼ねてるからです!」

 

 店長さんの誕生日か……もし廣井姐さんが暴れてぶち壊したら……

 

「ごめん虹夏ちゃん、おれが間違ってた。店長さんおめでとうございます!」

 

「「「店長おめでとー!」」」

 

「いや兼ねすぎだろ……」

 

「わかってくれたね、湊くん。皆もお祝いありがとう!お姉ちゃんは今日で30歳です!」

 

「それ以上誕生日会の事は掘り下げなくていい」

 

 辛そうな店長さんを横目に口元に運ばれてきたポテトを食べる。まだ口に入ってるうちからどんどん運ばれて、口に入れて、少ししたら飲み込んで、また食べる。

 ペースが早すぎるので、流石に食べるのやめないと。

 

「ヨヨコ先輩、みんなの分が無くなっちゃうから」

 

「わ、わかってるわよ」

 

「だいじょーぶ!まだまだいっぱいあるよ!食べ物はお姉ちゃんがたくさん用意してくれたから!」

 

 リョウとひとりちゃんも食べる方だし、話さないで食べてばかりの俺たちの席へ虹夏ちゃんが食べ物を追加してくれる。

 

「ありがとうございまーす!」

 

「そ、そう……」

 

 そして、結束バンドのメンバーが増えたところでヨヨコ先輩はさらに気まずそうな雰囲気で俺に近寄ってくる。

 ピッタリくっつく距離だけど、結束バンドではあまり盛り上げられなかったフォローをしろってことだと思う。大丈夫って言った手前、気まずいんだ。

 ただ、本人たちが気にしてないし、フォローはせずに、気にしないでいいと思うという意味でポテトをヨヨコ先輩の口元へ運んだ。

 

「湊がよく食うからな、それなりに用意してある……のはいいんだけど、お前ら付き合ってんの?」

 

 ポテトの食べさせ合いになった俺たちを見て店長さんに聞かれた。周りの女性陣に食べさせられるのが当たり前になってたし、お返しも普通になってたけど、そう見えるのか。

 

「違うんです店長さん、湊くんてよく食べるじゃないですか」

 

「私たちは体型を気にして食べれない時もあるんす」

 

「代わりに美味しそうに食べる姿で気を紛らわせてるんです!」

 

「そういう事っす!」

 

 ふーちゃんとあくびちゃんが力説する。特にお菓子作りが趣味のふーちゃんはその傾向が強くて、よく食べさせてくれる。

 美味しいものは作りたいけど、使ってる砂糖の量を見て食べ過ぎは怖くなるらしい。

 

「あー、わかるわ……私もアイツがガツガツ食うとこ、なんか好きだし」

 

「そうですよね!店長さんスタイル良いし、絶対気を遣ってますよね!」

 

「スタイル維持の秘訣とか教えて欲しいっす!」

 

 ふーちゃんとあくびちゃんがキラキラした目で店長さんを見つめて、店長さんもぶっきらぼうながら、嬉しそうに返事をしてる。

 店長さん優しいし、素直な二人と相性がいいんだろう、普段はリョウに注意してるからひとりちゃんに怖がられてるけど、ああいう姿が多いとイメージが払拭されるかもしれない。

 

「わ、私あんな風に店長さんと楽しく話せたことがない……」

 

 あ、ダメだ。むしろコミュ力の差に心をやられてる。

 

「大丈夫、ぼっち。店長の厳しい態度も愛情の裏返し」

 

「店長さん、別にひとりちゃんには厳しくねぇよ」

 

「それはつまり……私が特別愛されてたということか」

 

「違う……こともないかも、付き合い長いし、リョウの態度でも置いてくれてるんなら愛されてるんじゃね、店長さん優しいし」

 

「ふっ……私が魅力的なせいで……」

 

「下手な照れ隠しだな」

 

 自信家なりに照れる感情は残ってたようで、それを隠すのに頬に手を当ててポッなんてわざとらしくしてチャラけてるけどバレバレだ。

 

「後藤ひとりはともかく、普通なのね。喋らないから落ち込んでるのかと思ってた」

 

「だから大丈夫って意味でポテト渡したじゃないですか」

 

「そうだけど、あのライブの後だし心配だったのよ」

 

「ポテトだけで会話を!?陽キャはそんな事が……私には美味しいしかわからない……」

 

 俺たちのやりとりを見てひとりちゃんがポテトを食べて、当然ながらポテトの味しかわからずに落ち込んだ。

 俺もヨヨコ先輩も陽キャじゃないし、ポテトどころかアイコンタクトでも意思疎通できるから、もはや手段はなんでもいいんだけど、なんでだろうね。セッションたくさんしてるからかな。

 

「そういえばライブどうだったの?」

 

 ヨヨコ先輩の反応を見て思い出した様に店長さんが聞いた。待ってましたとばかりに虹夏ちゃんはニッコニコだ。

 

「ライブはね〜、皆大盛り上がりでモッシュにダイブにサークルまで出来て!ライブ終了後には10分間のスタンディングオベーション……なんて事もなくふつーにアウェイでした」

 

 最後、ふっと顔の力が抜けて話すもんだから落差に笑ってしまう。

 

「まぁ初めての箱じゃそれが普通だよ」

 

「そっ、そう!!演奏の出来と客の盛り上がりは関係ないから!…………」

 

 ヨヨコ先輩が早口でライブの空気について捲し立ててく。結束バンドが心に傷を残さないように気を遣って。

 でも、彼女たちはそんなに心が弱くない。

 

「でも、本当に感謝しかないから。今の結束バンドが絶対出られないような場所でさせてもらったし、大人数の前でのライブの経験も積めたし、あとは曲数増やして練習を重ねるだけだね!」

 

「はい!それにノッてくれてる人もちらほらいましたから!」

 

 虹夏ちゃんはもちろん喜多ちゃんも前向きだ。特に勝つという意識が強い喜多ちゃんは、アウェイな空気だけじゃなくて、自分たちの音が届いた人をしっかりと見ていた。

 

「何かあるんすか?」

 

「未確認ライオットってフェスに出ようと思ってて……」

 

 その言葉に空気が少しヒリつく。

 

「それ、私たちも出るから。優勝は私たちだけど、あなた達のこともライバルだと思ってる」

 

 ヨヨコ先輩の強い意思と言葉。

 真剣な雰囲気になった空気、それが一瞬にして破られた。

 

「やっとついら〜〜〜!みんな一声かけてよ〜〜〜!」

 

 やっぱり可哀想で連絡した廣井姐さんが到着したのだ。

 

「ちっ、SICK HACKと飲まないのか?」

 

「イライザはどうじんし?の締切があるんだって。志麻は……私に怒ってひたすらドラム叩いてる。毎回ライブの後はこうなるから手がつけられないんだよ、でもわらしがいたお陰であんなにドラムがうまくなったんだな〜」

 

「ポジティブに捉えますね」

 

 虹夏ちゃんは呆れたけど、すぐに気を取り直して店長さんへのプレゼントタイムにした。

 たぶん廣井姐さんに場を荒らされる前にってことだと思う。

 

 喜多ちゃんはハーバリウムとお花のリップという可愛らしいもの。リョウは即席で作った雪だるま、可愛いエピソードつきで捨てにくいから逆に店長さんを困らせて、廣井姐さんは……期限切れのポイントシール。

 さすがにゴミはダメだよ、姐さん……。

 

「じゃあ次はぼっちちゃん!なんとぼっちちゃんは2ヶ月前から用意してたんだよ〜!」

 

「へ〜、じゃあオーダーメイドだったり?」

 

「ぼっちあの時お金あったし、ブランド品とか?」

 

 結束バンドメンバーからのハードルが上がっていく、一方でひとりちゃんはどう見ても焦ってる。

 

「あっ、私は歌をプレゼントします!」

 

 まじ!?歌!すげー!今のは緊張か!

 

「歌だって!先輩!」

 

「なんであんた嬉しそうなのよ……」

 

「歌、めっちゃ嬉しいじゃないですか!俺ヨヨコ先輩がくれた歌……」

 

「その話は禁止!禁止だから!」

 

 ヨヨコ先輩に口を塞がれてる間にひとりちゃんがステージに上がって、これから始まるという時。

 

「あっ、弦切れた……」

 

「はい次いきまーす、湊くんよろしく」

 

 呼ばれたので隠してあったプレゼントを物陰から取り出す。

 

「デカいな」

 

「持ち帰りにくくて申し訳ないんですけど、可愛いもの好きって聞いたので……開けてみてください」

 

「おう……おお!……いい、触り心地だな」

 

 中にあるのはユルい顔したピンクのツチノコぬいぐるみ。どことなくひとりちゃんに似てるやつ。

 

「なんかぼっちちゃんに似てるね」

 

「前にこんな姿になってませんでした?」

 

「アー写の時」

 

「やっぱ皆もそう思う?なんか似てるよね、これ」

 

 皆で見つめると、どことなくぬいぐるみが困ってる気がした。

 

 

 姐さんも暴れ回ることなく、楽しくお開きを迎えた。……のだが、酔っ払って姐さんが歩けなくなったので、家まで運ぶことに。

 

 廣井姐さんの家は幽霊屋敷なので運ぶメンツは限定され、俺が姐さんを、荷物は幽々ちゃんが運ぶことになった。

 

 途中、廣井姐さんが俺の背中に吐いてしまって、幽々ちゃんが服を買ってきてくれたり、吐いて姐さんも少し回復したので、皆で銭湯に行ったりすると、気づけばだいぶ遅い時間になっていた。

 

 ……というか、終電逃した。





お礼です

⭐︎9をくださったでゅらんだる様、かがや様、クラゲ大好き侍様、てんぷら/2000様

感想をくださったなまこな様

皆様ありがとうございます!

皆様に幸あれ
具体的には家にレトルトカレーがあるという心の安心を得るくらいの幸あれ
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