酔っ払い拾ったらロックに出会った。   作:西ローランドゴリラ

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67話

 

 イライザさんと同人イベントに出てるうちに大晦日になり、ヨヨコ先輩と夜から初詣に行くので、今は先輩の部屋でくつろいでいた。

 

「あんた、明日も幽々たちと初詣に行くんだって?元気よね」

 

「ヨヨコ先輩こそ、本当に皆と行かなくて良いんですか?」

 

「いいのよ、初詣の二回目はもう初詣じゃないじゃない」

 

「それはそうなんですけど、皆と年始から会えるのが大事なんじゃないですかー」

 

「いいのよ、バンドメンバーはどうせすぐに顔合わせるし、あんたに会えてれば」

 

 俺を背もたれにしたまま先輩が頭をグリグリしてくる。

 

「嬉しいんですけど、なんかヨヨコ先輩を独り占めしてるみたいで皆に悪い気がしますね」

 

「私だって湊を独り占めしてるけど優越感に浸ってるわ、あんたも誇りなさい」

 

 そう言って先輩が俺の腕を自分のお腹の前で抱えるから、そのまま力を添えて抱きしめる。

 先輩曰く、背中側から抱きしめられるのが安心感があり、自分の部屋でそれをされるのが一番のリラックスになるらしい。

 二人きりの時だけ見せてくれる、気の抜けた姿。

 

 皆の前で見栄を張って強い自分をみせようという努力。

 空回りすることもあるけれど、その在り方がかっこよくて、やっぱり先輩が好きだ。

 

「先輩、今年も良い一年でしたね」

 

「そうね、SIDEROSの結成もできたし、湊もスタッフが増えたみたいだし」

 

 結束バンドのファン1号2号さんだが、最近では俺のスタッフ1号2号として撮影もしてくれるのだが、画角から編集までクオリティが上がって、かなり助けられている。

 それはそれとしてドッキリ企画を仕掛けられるようになった。

 

「そうですね、二人には本当に……ほんっとーに助けられてるんですけど、時々助けてほしいって思ってます」

 

「ああ……激辛の……」

 

「他にも、まだ動画出てないんですけど、目隠しでスタジオに連れてかれてドッキリされると思ったら何もされないとか……1号さんがめちゃくちゃ楽しんでるんですよね……」

 

「遊ばれてるわね」

 

 ただ、おかげで動画のネタも一人でやってる時より増えてるし、数字も取れてるから視聴者的にも満足らしいのでなんとも言えない。

 

「というか、一般への認知がさらに広がって登録者数伸びてるんですよね」

 

「まあ湊を揶揄うのは楽しいし、仕方ないわね」

 

「先輩までそんな事言うんですかー!」

 

 手が使えないので、先輩の頭に顎を乗せてカクカクさせた。

 

「いたいいたいいたい!悪かったからやめなさい!私のリラックスタイムが!」

 

「フッフッフ、先輩の生殺与奪の権利は俺が握ってます」

 

「そこまで深刻なものは握らせてないわよ、せいぜい精神の安定くらいよ」

 

「それも相当深刻でしょう」

 

 試しに立ち上がって背もたれになるのをやめると、さっきまで先輩とひっついてポカポカしてた部分が一気に寒くなった。

 

「うわ、さむっ……」

 

「ほら、あんたのためでもあるのよ、続けなさいよ」

 

「ちょっと俺に拒否られて弱った先輩見てみたいです」

 

「態度で拒否ったところであんたが私のこと大好きなの分かってるから変わらないわよ!ほら、さっさと戻りなさい!」

 

「俺の内心なんて、そんなのわからないじゃないですか!」

 

「わかるわよ!あんた私のこと嫌いなの!?」

 

「大好きです!」

 

「素直すぎるのよ、おバカ!嘘とかつけないの!?」

 

「嘘でも言いたくないことがあるだけですー」

 

「ほらもう私のこと大好きじゃない!」

 

 再び俺を座らせようと先輩が俺の体を押し込んできて、膝裏がベッドに引っかかって、勢い余って押し倒された。

 

「湊くん大丈夫?喧嘩かしら?うちの子がまた失礼なことでも言った?」

 

 騒いでたせいで先輩のお母さんがやってきた。

 ベッドに押し倒されてる俺、襲いかかってる先輩、騒ぎを聞きつけてやってきた先輩のお母さん。

 三者の間に沈黙が流れた。

 

「おばさん、違うんですよ」

 

「違わないわ、湊くん。男なら流れに身を任せなさい」

 

「なんで乗り気なんですか」

 

「ヨヨコ、湊くんを逃しちゃダメよ、あなたの性格で湊くんより良い人が見つかるはずないから」

 

「何よ急に、娘をもっと信じてよ」

 

「信じてるのよ、良くも悪くも!あなた、その性格で人を遠ざけるし、そのくせチョロ……純粋だから悪い男に引っかかるのがオチよ」

 

 自分の母親にボロクソ言われて先輩が半泣きになってる。

 

「その点、湊くんなら動画で人となりがわかるし……こんな小さい頃から頑張ってきたのを見てきたもの」

 

「湊、私の親が実の娘よりあんたのことを自分の子どもみたいに可愛がってるんだけど、何とか言いなさいよ」

 

 涙目のヨヨコ先輩がこっちに来たのでとりあえず頭を撫でて宥める。

 

「ネタ切れで小さい頃のコンクールの映像とか投稿し始めたんですけど、初対面の人からも大きくなったねぇって言われる事が多くなって、動画の力ってすごいっすね」

 

「そういうことじゃなく!なんて言えばいいかわかんないわ!」

 

 胸が叩かれてドムンと音が鳴る。

 

「理不尽!」

 

「いいわよ!その調子でガッとやってグッと既成事実を」

 

「もういいから頭お花畑は出てって!」

 

 

 

 その後はヨヨコ先輩のリラックスに付き合って、年越し蕎麦を一緒に食べさせてもらい、日付が変わる頃に神社に着くように先輩の家を出た。

 

「ったく、あんたの経歴のせいで親が歓迎ムードなのがムカつくわ。もっとロックンローラーって親に敬遠されるものでしょ」

 

「でも、おかげで先輩のリラックスタイムが作れてますよ?」

 

「それとこれとは別よ、もっとロックらしさってあるでしょ」

 

「らしさにこだわるなんてロックじゃないっすね」

 

「言ったわね」

 

「言いましたよ?」

 

 互いに口角をあげながら睨み合う。そして、吹き出す。

 

「年の瀬までつまらない事で喧嘩して……最高ね」

 

「ええ、最高ですね」

 

「湊は今年も去年と同じ願い事にするの?」

 

「もちろん、俺には廣井姐さんもヨヨコ先輩も、他の皆もいますから」

 

「そうね、私にも姐さんと湊がいるものね」

 

 それだけじゃない、SIDEROSの皆やFOLTの人たち、いろんな人が俺たちの周りにはいる。

 これ以上は望みすぎなぐらいだ。

 

 だから二人で神様に祈る。

 願いは同じ。

 

 神様、どうか力を貸さないでください。

 音楽で得る苦しみも悲しみも、楽しみも苦しみも、全て自分のものにしたいです。持っていかないでください。

 

 音楽についてはそうお願いした。

 

 勉強の方は進級させてくださいって普通に頼む、高校の勉強難しすぎてマジでついていけない。終わってる。





お礼です

⭐︎9をくださったおわさ様、カッパ5様

感想をくださったなまこな様

皆様ありがとうございます!
皆様に幸あれ!具体的にはたまたま良いなと思った洋楽の歌詞聞き取れて、検索したら一発で出てきたくらいの幸あれ!

今、なんかスマホの機能で流れてる音楽を教えてくれるらしいっすね、アナログ人間なので知りませんでしたけど。
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