酔っ払い拾ったらロックに出会った。   作:西ローランドゴリラ

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69話

 

 リョウがスランプを乗り越えてできた曲が、ひとりちゃんの歌詞もついて完成した。

 

「じゃあ曲も完成した事だし、MVを撮りたいと思いまーす!」

 

「やっとですね〜!」

 

 ネット投票に向けてMV、音楽配信サイトへの申請。

 ヨヨコ先輩のアドバイスを受けて前向きに動く結束バンドの会議が開かれている。

 

「本当はMVにお金かけたかったんだけどノルマ代とかで貯めれてないので、自分たちで撮ります」

 

「詳しくないのに私たちだけで撮れますかね?」

 

「ふっふっふっ、そんな事もあろうかと、超強力ゲストを呼んでるよ、結束バンドファンのお二人です!」

 

 通販番組かってくらい綺麗な流れを作った虹夏ちゃんにより紹介され、1号さんと2号さんが皆の前に出ていく、簀巻きにした俺を引きずりながら。

 

「どもー1号です」

 

「2号です〜」

 

「私たち、美大の映像学科生で、湊くんの動画では撮影から編集までやってるんで、任せてください!」

 

「それは心強いです〜!……ところで湊くんはなんでそんな事に?」

 

 俺を引きずってるのに何事も無いように話す二人に、結束バンドを代表して喜多ちゃんが質問してくれる。

 そのまま助けてマイフレンド。

 

「撮影の役に立つかと思って連れてきたんだ」

 

「合図があるまで隠れてようとしてたのに、湊くんが普通に会議に混ざろうとしてたから、つい」

 

 常日頃から演出のために割と無茶振りされる事がある、なんならドッキリを仕掛けられたりもする俺だけが、結束バンドの危機に気付ける。

 

「逃げるんだ皆!この二人はめちゃくちゃ有能だけど、演出のためなら人を犠牲にする!」

 

「やだなぁ〜、そんなの湊くん相手の時だけだよ〜」

 

 しゃがんで、簀巻きになった俺の頬を撫でながら1号さんが全く嬉しくない特別扱いを宣言する。

 

「愛だね〜、湊くんてスタントマンかってくらいの身体能力してるから、撮りたいもの全部撮れるって、いつも1号が喜んでるよ」

 

「歪んだ愛!普通に愛して労わって!」

 

「ほら、湊くんも音楽を愛してるでしょ?私も作品を愛してるの」

 

「ぐっ……くぅぅ……」

 

 自身の好きなもののための行動、それを俺は止められない。

 その熱を愛しているし、実際に彼女たちが作る映像は自分で撮るよりもいいし、撮る事に対しての熱意を感じられる。

 

「いや、それで納得しちゃダメでしょ」

 

「ジカちゃん、湊くんはいつもこれで納得しちゃうんだ……」

 

「ドッキリ仕掛けてもだいたいこれで許されます」

 

「まあ、なんだかんだで俺も楽しいし、熱意のある人と一緒にいるのはいい刺激になるから」

 

「簀巻きにされてる本人がいいならいいや。湊くんと違ってお礼はご飯とかしか奢れないけど……」

 

「好きなバンドにこうやって関われるだけで嬉しいから気にしないで〜」

 

 どうしてその優しさを俺にはむけてくれないのか、好きなバンドじゃないからだね、仕方ないね。

 

「カメラとか機材は、いつもライブハウスで使ってるやつ借りたからけっこーいいやつだよ」

 

「えっ、店長よくそんなの貸してくれましたね!」

 

 喜多ちゃんがナチュラルに店長さんに失礼な発言をする。

 店長さんめちゃくちゃ優しいのに。

 

「好きなだけ使っていいぞ、他にも困ったことあったら言えよ……」

 

「えっ、ありがとうございます」

 

 リョウと二人で珍しいものでも見たみたいな顔してる……

 

「店長さん、ちなみに誰も解いてくれなくて困ってるんですけど縄を解いてもらえたりします?」

 

「いいけど……」

 

 結局、店長さんの手を煩わせるわけにはいかないと1号さんが解いてくれた。

 

 その後、真面目にMVの話を始めたのだが、伸びるために犬を使うとか子どもを使うとか、俺に宣伝させるとか、タイトルを【神回】楽器屋さんで100万円使い切ります【プレゼント有】にするとか、正々堂々勝負する気ゼロの意見ばかりが出てきた。

 子どもの動画の話の時に、昔のコンクール動画を上げてる俺をイジっておいて、よく宣伝させるなんて言えたなリョウのやつ。

 

「ロケ地はどこにする?よく浜辺とかネオン街見るよね、駆け出しバンドだと」

 

「おしゃれだし映像映えしそうでいいですね!」

 

「海なら前行った江ノ島とかよさそうだよね」

 

「あっ私いいMV思いつきましたよ!高校生カップルが浜辺デートで喧嘩してるんですけど、私たちのバンド演奏を観てなんやかんやで仲直りして、それで曲の終わりにキス!それを祝福する結束バンド!みたいなのよくないですか!?」

 

「高校生カップルなら湊くんとヨヨコお姉ちゃんでいけるね」

 

「あっいいと思いまっおぇっぼろろろろろろ」

 

 喜多ちゃんと虹夏ちゃんの盛り上がりに対して、あまりに陽キャな提案に対してひとりちゃんが吐いた。

 

「というか、結束バンドに世代最強とSIDEROSが出るのは色々とおかしい」

 

「恋の歌でもないので……」

 

 珍しくリョウとひとりちゃんがまともな事を言って止めてくれたけど、会議としては何も進んでいない。

 そろそろ1号さんが我慢の限界って感じだ。

 

「全員楽器持って外出てください!あと衣装と制服!私が全部決めて撮るんで言う通りにしてください」

 

「えっ1号さん?」

 

「バンドマンは大人しく楽器だけいじっとけばいいんですよ」

 

「あっはい……」

 

 1号さんの放つ圧に結束バンドが屈した。

 こういう我の強さと映像へのこだわりがあって、作る作品もいいから1号さんはいいんだよな〜と頷いて、分かってる業界人ごっこをしてたら俺も急かされてしまった。

 

 

 

「皆カメラは気にせず適当に自然体で遊んでてください、回してるんで」

 

 1号さんに案内されたのは公園で、指示もざっくりとだけ。

 

「回してるんなら俺いない方が良くないですか?結束バンドのMVだし」

 

「湊くん、カメラを気にするなって言われて皆が急にできると思う?」

 

「絶賛そこで小顔効果狙ってる赤いのと、影に隠れてるピンクのはダメそうですね」

 

「そこで君、普段通りはっちゃけて皆の意識をカメラから逸らしちゃってよ」

 

「任されましたぜ、監督」

 

 皆の、特にひとりちゃんの緊張を和らげるために奔走して、1号さんが満足したところで今日のところは終わり、編集されたMVを待つだけとなった。




礼どす
⭐︎10をくださったナイツ0712様

⭐︎9をくださった火稀様、猫猫猫猫ネコ様、新宿邪ンヌ様、ライジングフリーダム様

皆様ありがとうございます!

皆様に幸あれ!具体的にはマックで久々に飲んだくーがめっちゃ美味しいくらいの幸あれ!
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