酔っ払い拾ったらロックに出会った。   作:西ローランドゴリラ

7 / 95
7話

 

 結局、喜多さんのギターは俺が出る幕もなくリョウが解決してしまった。

 

「よーし新生結束バンド、結成祝い兼反省会するぞ〜!」

 

「ごめん眠い」

 

「あっ……きょっ今日は人と話しすぎて疲れたので帰ります……」

 

「伊地知先輩、私も帰りにリョウ先輩のギターを貸してもらうので……」

 

「結束力全然ない!!」

 

 結局虹夏さんが折れて、結束バンドは明日ライブハウスに集合ということで解散した。

 

 

 

 翌日、喜多さんの調子が戻っていつも通りの日になると思っていた。

 

「おはよう!咲良くん!」

 

 いつも通りの素敵な笑顔に輝くキターン。喜多さんの調子は戻っている、至って普通。しかしクラスの空気はざわついている。

 そりゃそうだろう、俺が入ってきた瞬間、喜多さんはわざわざ女子との会話を止めて、こっちに来て挨拶したんだから。

 

「お、おはよう喜多さん」

 

「え〜なになに喜多〜、ウチの知らん間に男つくるとか、不敬じゃん」

 

 さっそくイジってきたのは確か佐々木さん、ヒップホップをしてるって自己紹介してたはず。

 

「そういうのじゃないわよ、ごめんね咲良くん、同じクラスだから知ってると思うけど紹介するわね、佐々木 次子(つぐこ)、さっつーよ、中学からいっしょなの」

 

「ども〜」

 

「それでこっちは咲良 湊くん、最近私が悩んでたのを解決してくれたの」

 

 佐々木さんはなんかずっと微笑んでていいな、気の抜けた感じで話しやすそう。

 

「喜多が悩んでるの見抜いて解決とかやるじゃん、特別にさっつー呼びを許す」

 

「ありがたやー」

 

 胸を張るさっつーを俺が拝む。

 

「まじでいいじゃん、気に入ったわミナちゃん」

 

「ま?俺もなんかさっつーの空気感好きだわ」

 

「ウチら相性いいんじゃね?」

 

「まじ説ある」

 

「説あるコアトルだわ」

 

 さっつーと肩組んで喜多さんの方を見る。

 

「「いえーい」」

 

「なんで急に私より仲良さそうになってるの!咲良くんの口調もおかしいし!」

 

 喜多さんのツッコミに満足して、パン!とハイタッチしてさっつーと分かれて席に着く。

 

「喜多〜そろそろ」

「朝礼始まるから」

「「席ついた方がいいよ」」

 

「ステレオで話さないで!それにまだ時間あるわよ!」

 

 そんな会話を楽しみつつ授業を耐え切ると放課後になる。今日は新宿のスタジオに顔を出さないといけない。未読スルーしてたヨヨコ先輩のロインが100を超えてたし、さすがに無視できない。

 既読はつけたくないからわざわざ長押しで確認したら、今日借りたスタジオの場所と時間は確認できた。

 なんでもメンバーに練習をぶっちされて腹が立つから、俺とスタジオで全力で演奏したいらしい。

 

「咲良くん!STARRYに行きましょ!」

 

「え、ごめん、俺今日新宿の方に行くんだ」

 

「え、あ、そうよね、集合がかかってるのは結束バンドだけよね」

 

 忘れてた、みたいな表情をしてる喜多さんより先に俺の準備が終わる。

 

「それじゃお先に、また明日、喜多さん」

 

「うん、また明日ね、咲良くん」

 

 教室を出る前にさっつーにも声をかけておく。

 

「さっつー、またなー」

 

「ういー」

 

「やっぱり二人が私より気安い感じなの気に入らないんだけど!」

 

 喜多さんのツッコミに声を出して笑いながらあえて無視して、新宿へ足を向けた。

 

 

 

 ライブスタジオはバンドの練習に使われる空間だけあって、どこかかっこいい雰囲気がいつも漂っている。と勝手に思っている。

 断じて陰気でジメジメした雰囲気を醸す空間ではないはずなのだが、そのスタジオからは明らかに陰鬱なオーラが立ち込めていた。

 

 普段よりキレのない演奏、ところどころテンポや音から集中仕切れていない雰囲気がしている扉を開けると、ヨヨコ先輩が一人で練習している。

 

「ふん、来たのは褒めてあげるけど、返事もよこさずによく顔を出せたわね、湊」

 

 落ち込んでたヨヨコ先輩が俺を見るなりパッと顔を輝かせて、思い出したように怒ってくる。

 未読スルーは確かに悪い、途中から怪我がないか心配してくれてたし、でも数時間で気づいたら100件以上来てる個人ロインなんて怖くて既読つけたくねぇよ。

 それに、ヨヨコ先輩が実はそんなに怒ってないことくらい、一年半も付き合いがあればわかる。

 

「あんなにたくさん来てたら怖くて開けれないですよ」

 

「そ、そうなの?怖がらせてたのね」

 

 強気なヨヨコ先輩が少しシュンと縮む。

 

「でもヨヨコ先輩にはやっぱり会いたかったんで!ちゃんと来ました!」

 

 会いたいと言うと今度は元気になる。このわかりやすさがヨヨコ先輩の魅力だと思う。

 

「フンっ、まああんたの演奏に並べるのは一握り、同世代だと私くらいだし、()りたいわよね」

 

 耳まで赤くして照れ隠しするヨヨコ先輩は相変わらずツンツンしてるけど謙虚さと可愛さが溢れてる。

 

「そうですね、その中でもヨヨコ先輩に会いたかったんですよ」

 

「そそそ、それって、こ、こく……」

 

「バチバチに闘志剥き出しで来てくれるヨヨコ先輩と()るの、大好きなんで」

 

 背に背負ったサックスをおろす。

 さっきまでの照れも、赤みも消えて、その前にあった落ち込んだ姿の面影さえ完全に消えて、俺の大好きな、かっこいいヨヨコ先輩の顔になる。

 

「そう、私も練習をサボるような奴らより湊とヤるほうがよっぽどいいわ、今日はヤりまくるわよ!」

 

「望むところです!」

 

 この後二人して完全にバテるまで演奏して、飲み物がなくなったので涼みがてら外に出た。

 

「ハァ……ハァ……やっぱりあんたとヤるのが一番練習になるわ、音楽に景色がつくの。曲の解釈も世界観も一気に広がる」

 

 俺の共感覚で見える景色を、演奏のレベルが高い人は一緒に見てくれる。そうして出来上がる演奏はいつだって最高に熱くなれる。

 俺はこの時間が、何よりも好きだ。

 

「俺もヨヨコ先輩が一番です、こんなになるまで付き合ってくれる人、他にいませんから」

 

「そりゃそうでしょ、何時間もぶっ通しなんて、ヤりすぎなのよ、加減しなさい」

 

「ヨヨコ先輩だってノリノリだったじゃないですか!」

 

 二人で睨み合って罪をなすりつけ合う。

 

「早い時間から盛ってるなよ、バカップルがよ」

 

 すると通行人になにか勘違いされたみたいだ。自分たちの発言を振り返る。……う〜ん、誤解されるわ。

 無言でヨヨコ先輩の方を見ると、先輩も真っ赤になってこっちを見ていた。

 

「と、とととととにかく!あんたが演奏の練習をする相手は私なんだから!ロイン無視しないように!今日は解散!」

 

「そそそそそうですね!ヨヨコ先輩との演奏は最高ですからね!ま、また明日!」

 

 楽器を取りに二人でスタジオに入る時、周りの視線が妙に痛かった。





今回もお礼です。
⭐︎10をつけてくださった鉄竹様
⭐︎9をつけてくださった宇治川ゐ太様、霧雨 祐介様
⭐︎8をつけてくださった夜市よい様、ゆう様、田中読者様
⭐︎4をつけてくださったyoshi10203040様

ありがとうございます。
まだ話数が少ないにも関わらず、たくさんの方に読んでいただいてマジビビってます。これからも欲望を文字にぶつけて行こうと思います。

今日も皆さんに幸あれ
具体的には自分ではあまり買わないけど美味しいお菓子(例、雪の宿)などをもらうくらいの幸あれ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。